第335話 つまりそういう事的なお話

「お待たせ。」

「わわわわ、わた、私達も、い、今来たときょろよ。」

「…………………。」

「緊張しすぎ。ほら、深呼吸して。吸って〜「「すー。」」吐いて〜「「はー。」」吸って〜「「すー。」」吸って〜「「すー。」」吸って〜「「すー……。」」吸って〜「「す……ぷはっ!」」吸って〜「吸わせすぎよ!」あはは。少しは落ち着いた?」

「……少しはね。」

「……うん。」

「じゃ、行こうか。」


今日はシアとルナとのデートだ。

セフィアに服のコーディネートをしてもらい、ルリエには変なところがないか確認してもらい、リリンからは朝帰り必須というお言葉をいただいた。

………………必須て。


そんで今日のデートだが、完全にノープランです。

だってまだこっち来てちょっとしか経ってないからどこに何があるかなんて分かるはずがない。

だから今回は適当にブラブラしつつ色んなところを見て回ろうと思う。

で、夕食は何処か雰囲気のいい店で……………あるかな?

だってここ迷宮都市だし。

冒険者ばっかの街だし。

ま、なるようになるか。

というわけで早速、レッツラゴー。


まず最初に入ったのは武器屋。

いや、シアが矢の補充がしたいって言ったから。

男女で出かけて楽しむのがデートなんです。

行き先なんてただの飾りです。

シアは沢山の矢を買っていたがその中に前にも見た風銀という金属を使った物もあった。

あの風銀は風属性の性質を持っているからシアとは相性がいいし、その風銀の特性のおかげで射程が伸びるらしい。

そういえば、今なら俺でも矢が作れるんじゃね?

鍛冶技術ならちょっと自信がある。

なんせ工芸品としても、武器としても優れている日本刀の技術を習得しているからな。

それに爪楊枝作りの関係で木の削り出しは得意になった。

うん。

今度試してみよう。


次は的当て。

なんか路上でやっていたからちょっと遊んでこうって事になった。


「えい!」

「やあ!」

「とお!」


うん。

ルナがかわいい。

投げてるのはナイフなんだけど女の子投げですごくかわいい。

全然届いてないのがよりかわいさを引き立ててる。

シアは意外ってほどじゃないけど、5本中3本と好成績を残してる。

そして俺は……5本中0本でした。

牽制の為の投擲用ダガーを昔買ったけど、全然使ってないんだよね〜。

ちゃんと使ってればこんな結果にはならなかったんだろうなぁ〜。

……………はぁ。


お昼は適当に露店を回りながら楽しむ。

魔物肉の店が多いが、魔物産の野菜なんかもあったりして、流石は迷宮都市って感じだ。


午後からもぶらぶらと適当に巡りながら楽しむ。


「あ、ここいい雰囲気ね。ねぇ、エルナ。今度ここで描いてみたら?」

「うん。そうする。」

「描くって?」

「え、あの、その……」

「エルナは風景画が趣味なの。これまでも時々描いてたりするの。例えば……こんなのとか。」

「ちょっ、待って。見せるの、恥ずかしいよ。」

「なんで? いい絵じゃないの。」

「どれどれ………お、確かにいい感じだな。なんていうか、見ていて心が落ち着く感じがしてエルナらしいいい絵だな。」

「でしょ。」

「…………本当に?」

「ほんと、ほんと。」

「よかったぁ。」


かわいいなぁ〜。


さらにぶらぶら。

雑貨屋に、魔道具屋、アクセサリーを扱う露店なんかを冷やかす。

そうこうしていると、大きくて立派な建物を見かける。


「あれなんだろう?」

「あれは図書館よ。」

「図書館なんてあるのか? というか、なんでこんな所に? 本って結構高いしこんな所にあって大丈夫なのか?」

「逆よ。こんな所だからこそあるの。ここなら冒険者が一杯いるからいざという時の防衛戦力を確保しやすいから。ここ以外だと領都や王都なんかの大きい街なんかね。それ以外だと魔道ギルドや冒険者ギルド、商業ギルドなんかがそれぞれの分野に関する本を貸し出したりしてるわね。」

「へ〜。詳しいんだな。」

「まあね。本を読むのは結構好きだし。」

「そうなのか。今度何かオススメを教えてくれよ。」

「そ、そう。分かった。考えとく。」

「ありがとう。と、結構暗くなってきたな。何処か良い店はないかな。」

「そ、それなんだけど、ね。オススメのお店が、あるの。」

「そうなのか。じゃあ、そこにしようか。」

「うん!」


めっちゃ良い笑顔です。

そんなにオススメなのか。

これは楽しみだ。



「あの、結構……というか、かなり高そうなんだけど。」

「まあ、それなりにはするけど、でも、料理もすごく美味しくて雰囲気も良いって凄く評判のお店なのよ。」

「そうか。じゃあ、入るか。」


そうして入った店だが、確かにシアの言う通り雰囲気も良いし、料理もコース制で凄く美味しくデートに使うには持ってこいのお店だった。


「良い店だったな。今度はみんなと一緒に来たいな。」

「そ、そうね。それで、ね、ここ、宿もやってるの。」

「っ!?」


それってつまりそういう事、だよな。

こういうのは、やっぱり男から誘うべき、だよな。


「えと、泊まる、か?」

「…………うん。」

「ルナもいいか?」

「…………………うん。」


そして俺達はリリンの言う通り朝帰りをしたのだった。

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