第303話 どちらも150万的なお話

「すみませ〜ん。」

「ふぁっ!? い、いりゃっちゃいまちぇ! あ、じゃなくて、いらっしゃいましぇ…………ませ。」


すごい噛んだよ、この人。

しかも最初にすごい驚いていたし、やっぱりこの店人気ないんだな。

掘り出し物がありそうだな。


「ほ、ほほ、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「いや、魔道具を見に来たんですけど……ここ、魔道具屋ですよね? それ以外ないと思うんですけど。」

「え、あ、そうでした。ここの所借金取しか来てなかったものですから。」


さっきの驚きはそっちか。

というか、ここ予想よりもやばい状況だったよ。


「そ、そうですか。あの、見せてもらっても?」

「は、はい。大丈夫です。問題ないです。ゆっくり見てってください。」


うーん。

なんとかしてあげたい気もするけど、他人が出しゃばるべきじゃないし、精々ここで何かを買ってあげるくらいか。

足しになるかは分からないが。


へー。

結構あるんだな。

ここはあれだな。

鍛治修行で会得したアイテム鑑定の出番だ。


ー照明の魔道具ー

明るくなる。


ー水筒の魔道具ー

水がたくさん入る。


ー時告げの魔道具ー

目覚ましが鳴る。



あれーー?

なんか、すごくショボいんだけど。

前に使った時はちゃんと攻撃力とか分かったんだけど?

あ、でも、文字数的にはそんなに変わってないや。

つまりまだレベルが低くて大した事はわからないって事か。

でも、鑑定は育ててれば使えるようになるはず。

もっと鑑定してやる。


ー涼風の魔道具ー

涼しい風が出る。


ー防音結界の魔道具ー

外の音を遮る。


ー消音結界の魔道具ー

内部の音を消す。


ーアイテムバッグー

いっぱい入る。


ー対塵結界の魔道具ー

砂塵を防ぐ。


ー対刃結界の魔道具ー

斬撃を防ぐ。


ー対魔結界の魔道具ー

魔法を防ぐ。


ー対衝結界の魔道具ー

衝撃を防ぐ。


エトセトラ、エトセトラ……


アイテム鑑定のレベルが低すぎてどの程度の物かは分からないけど、結構高性能なんじゃね?

対魔とか対衝とかかなり使えると思うんだけど。

対魔の方は夜営とかに使えるし。

そんな中でも特に目を引くのがこれ。


ー人避けの結界柱ー

人が近づいてこない。


アリシアさんから貰ったやつは防風、消音、認識阻害の効果があってかなり高性能だけど、確実じゃない。

でも、ここで更に人避けのを使えば安全度合いが更に増す。

効果が上書きされなければだけど、もしも可能ならかなり凄いことになる。

それにこんなのもあるし。


ー魔除けの結界柱ー

魔物が近づいてこない。


二つ組み合わせるだけでもかなり凄い。

ただ、お値段もかなりのものになる。

人避け、魔除け、どちらも150万もする。

2つで300万だ。

しかも効果がどの程度かも分からない。

そりゃ、客足も遠のくよ。


「すみません。この2つってどの程度の効果があるんですか?」

「ひゃいっ! そ、その2つはですね、どちらもCランク位の実力の持ち主までなら効果があります。た、たまに例外もありますけど、で、でも、効果ならワーグナーの魔道具屋には負けてません!」

「おぉう。急にどうしたんですか?」

「あ、すみません。そ、その、2年前にあの店が出来てから客足が遠のいてしまってて、それに値段も向こうの方が安いですから必然的に借金苦に………」

「え、あ、うん。そうなんだ。」


向こうより効果が上だって言うならそりゃ向こうよりも高くなる。

でも、仮に向こうの人避け、魔除けのがD位までにしか効かなくても、街道近くなら強いのは出ないしDまでで事足りる。

となると必然的に安い方に客は流れる。

もちろん安全第一の人もいるかもだけど、別にここ以外でも買う事はできる。

魔道具職人が少ないとしても、懇意にしている人や、もっと腕の立つ人が他の街にもいるだろうからここでわざわざ買う必要もない。

多分、迷宮都市の方が性能がいいのがあるだろう。

ここから馬車で一週間と少しくらいの距離だから向こうで買えばいいわけだしね。

でも、個人的にこれらは今すぐ欲しい。

だって馬車や馬の安全が確保できれば家で寝れるもの。


買いたいけど、同時使用に関して聞かないことには選択できない。

果たして吉と出るか凶と出るか。

たとえ同時使用できてもアリシアさんの方とも同時に使えるかが心配でもあるけど。

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