第230話 レントちゃん的なお話

ドアをノックすると返ってきたのは………静寂だった。


「あれ?」

「出掛けてるのかな?」

「かもね。」


ドアをノックしても誰もいないようで誰も出てくることはなかった。

緊張してた時間を返せ。


誰もいないと分かると途端に緊張がほぐれてくる。

さて、帰ってくるまでどうしようか?

このエルカという街を見て回ろうかな?

そう思って周りの人に声をかけようとすると後ろから声がかけられた。


「そこにいるのは誰だ?」

「ほひゃわぁ!」


……………………なんか、変な声出た。


「うわっ! びっくりした!」

「あ、ヨー兄。」

「うん? セフィアか?」

「うん。ただいま、ヨー兄。」

「おかえり、セフィア。それで、その人達は一体誰なんだ?」

「まあ、それはお父さん達が帰ってからで。」

「それもそうだな。じゃあ、上がっていってくれ。」

「「「「「「お邪魔します。」」」」」」


ヨー兄? さんに促されて俺達はセフィアの実家に上がっていく。

中も普通だな。

あ、でもなんかよく分かんない置物とかは無いぞ。

漫画だとたまにあるけどウチの嫁の実家にはそういう定番的な意味での普通ではなく一般的という普通だ。

まあ、有っても対応に困るから無くて良かった。


そしてリビングに案内されてソファーに座る事を勧められるが急に6人も増えたから座るところが足りない。

というわけでレイダさんとセフィアが何処からか持ってきた椅子になった。

って今はそれどころじゃ無い。

もうすぐセフィアの両親が帰ってくる訳でだから俺はえーと……どーなるんだ?

なんていえばいいんだ?

普通に娘さんは預かったか?

ってこれじゃ誘拐犯じゃねぇか。

娘さんを僕に下さいっていうわけにはいかないしというかすでに貰ってるしだからえーと………


「「ただいまー。」」


帰ってきちゃったー?

どうしようえーと、えーと…


「あれ、お客さんかな?」

「あら、本当。」

「む、娘さんが、僕に頂きに、下さい!」

「「「はい?」」」

「レント……落ち着いてよ。」


うわぁ〜、なんか変なこと言っちゃったよ。


「えっと、君は誰かな?」

「おれ、ぼ、僕はその、セフィアの嫁……じゃなくて、えと……「てい。」……あいた!」

「落ち着いた?」

「リリン……なんとか。」

「僕が説明するよ。えっとね、お父さん。僕はこのレントと結婚しました。」

「「なにーーー!?」」

「あらあら。」

「で、こっちのリリンとルリエちゃんが僕と同じでレントのお嫁さんだよ。」

「あぁ……」

「父さん!」

「あなた!」

「お父さん!? どうしたの!?」


セフィアが説明しているとセフィアのお父さんがこう、ふらぁ〜と倒れてしまい大慌てに。

こんな事になるなら事前に挨拶に行くべきだった。

でも、しょうがないじゃん。

だっていなかったんだもん。


その後はとりあえずセフィアのお父さんをセフィアのお母さんが寝室に運んで休んでもらう。

で、このまま有耶無耶に……とはいかないわけで。

改めて自己紹介をする事に。

リリンとセフィアのお陰で幾分か落ち着いたので自分で言える。


「えっと、改めて、俺は蓮斗って言って、セフィアさんと結婚させていただいた者です。」

「……空耳じゃなかったのか。」

「そうなんですか。それで、新居は何処に?」

「って、母さん!? そんな簡単に認めていいのかよ!」

「だって、こういうのは本人同士が決める事でしょう。それに私達も親の反対を押し切って………という話を聞いたことあるし。」

「人の話かよ!」

「まあ、いいじゃないの。セフィアもいやいや結婚したわけじゃなさそうだし。そうよね、セフィア?」

「うん。そうだよ。僕はレントの事が大好きで結婚したんだから。」

「じゃあ、この話はこれでお終い。あの人には私から言っておくから。」

「母さんがそう言うなら……」

「そういうわけで、これからは義理の親子としてよろしくね、レントちゃん。」


なんかよくわかんないけど、なんとかなりそうです。

後、いきなりちゃんは恥ずかしいので止めてもらいたいです。

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