第229話 殴られるかも。的なお話
「ここがエルカかー。」
セフィアの生まれ故郷であるエルカに着いた。
門から見える風景ではカインより少しばかり劣るもののかなり栄えているように見える。
なにより、人の数が多い。
失礼かもしれないけど、族長とか馬鹿息子という単語から勝手にもっと田舎な感じだと思っていたから余計に驚いている。
「ほら、門から眺めていないで早く入ろうよ。」
「それもそうだな。」
セフィアに促されて門の中に入ろうとすると予想通り門番さん(狸人族)から待ったがかけられた。
ちゃんと仕事してる。
馬鹿の影響はなさそうだ………多分。
「ん? そこにいるのはセフィアか?」
「あ、おじさん。」
「知り合いか?」
門番さんはどうもセフィアの知り合いのようだ。
「うん。近所に住んでいた32歳独身のおじさん。」
「それは言わないでくれ。っと、それよりもちょうど良かった。」
「ちょうど良かった?」
「少し待っててくれ。」
門番さんはそう言うともう一人の門番さんに声をかけてどこかに使いに出したようだ。
その後はセフィア以外の俺たちに対して身分証を提示するように言ってきた。
当然やましいところなんて無いので提示し問題なく通っていいと言われた。
とはいえセフィアに待っててくれと言っていたので俺達も待つ。
そうして暫く待っているともう一人の門番さんがなにやら小太りの少年を連れてきた。
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ………な、生意気なこと言って、すいませんでしたー!」
「「「「「「「????」」」」」」」
なんか小太りの少年が突然土下座した。
それを見た俺達は全く訳が分からず頭の中にはてなマークを浮かべる。
「えっと……」
「こいつはゲスタール。森の中で怪しいヤツらと密談していて誘拐の依頼をしているところを捕まり、今は警邏隊見習いとして罪を償っている族長様の長男だ。」
「あの手紙の! セフィアを嫁にするとかのたまっていた馬鹿の!」
「手紙は分からないが、セフィアを嫁にするっていうのはこいつだな。」
「えっ!? でも、前に遠くから見た時はもっと太っていたような?」
「そうか? まあ、確かに少し痩せたかもな。」
どうやらお仕置きする必要がなくなったみたい。
まあ、面倒事が勝手に解決してたというなら楽でいいって事で。
「と、とりあえず、僕は家に帰っていいですか? ここまで移動してきて休みたいんで。」
「それもそうか。じゃあ、詳しい話はまた今度話すとして、今日はゆっくり休んでくれ。そっちの客人達も。」
というわけで門番さんに別れを告げてセフィアの先導の元セフィアの実家に向かいます。
ちなみに馬鹿は放置だ。
「おお〜。凄いな。街ゆく人みんな耳と尻尾がある。」
セフィアの実家に向かってる最中にすれ違う人達がみんな何らかの獣人さんでつい声が出てしまう。
しかし、こんなファンタジー感満載なんだから仕方ないというものだ。
事実蒼井もあっちこっちに視線をやっているし。
そんな感じで歩く事10分程。
セフィアがそろそろ家に着くよと声をかけてくれる。
と、ここで急に緊張してくる。
なんせ、「娘さんを僕に下さい!」と宣言する事なく既に結婚しているんだから。
もしかしたらふざけるなとぶん殴られるかもしれない。
俺達に子供が出来てその子がそんな事言ってくるヤツ連れてきたら俺なら確実にぶん殴る。
……………ぶん殴られるのは覚悟しとこう。
「ここだよ。僕の生まれた家。」
どうやらセフィアの実家に着いたようだ。
セフィアが指差す先には周りにある家とそう大差が無いような普通の木造一軒家がある。
「すぅ〜はぁ〜。良し。行くか。」
深呼吸してから俺はドアノッカーで玄関のドアをノックした。
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