第168話 会得! 的なお話
「なぁ、そろそろ休憩にしないか? もう二時間になるし。」
「そうね。それじゃ、少し休みましょうか。」
そう言いながら目を閉じつつ腕で額の汗を拭うアレクシアさん。
その光景についドキッとしてしまう。
やっぱりエルフなだけあって美人でつい目を惹かれてしまうが、それは嫁にもアレクシアさんにも失礼だ。
そう思ってセフィアの微笑んだ顔を思い浮かべる。
あの笑顔を見る為にも頑張らないとな。
「急ににやけて……大丈夫?」
「何でもない。それよりもこれ飲む? アポーの果実水だけど。」
「頂くわ。ありがとね。」
ストレージから取り出した果実水をアレクシアさんに手渡す。
渡す時に手が触れてびっくりして落とすなんていう定番イベントが起きないように気をつけた。
どうせなら似たイベントのつい見つめ合ってしまうのをセフィアやリリン、ルリエとやりたいものだ。
隅の方に行きアレクシアさんと一緒に座りながらリリンの方に目を向けてみると驚きの光景が広がっていた。
リリンが、シャドウオブデスピアーズを、使っているのだ。
それはエルナさんのように一気に十三本の杭を出現させていないし数も少ないが、あれは確かに同じ魔法だ。
「驚いたわ。こんなに早く使えるようになるなんて。」
「確かに、これは、驚いた。」
リリンにはよく驚かされている気がする。
それはそれとしと俺達の加護は、今は恩恵だけど、あれはスキル習得確率が上がるけど魔法には効かないと思うのに、なんであんな簡単にできるんだろう。
やっぱり、魔力操作が上手いって事なのかな?
俺は下手だからな。
次はセフィアを見るとそっちの方もそこそこ上手くいっているようでまだタイミングが微妙に合っていないがそれでもファイヤーストームが出来ている。
これはひょっとして、アレか?
セフィアが俺に合わせてたって事なのか?
これは、俺も頑張らなければな。
休憩もそれなりにできたし再開するかな。
「それじゃあ、そろそろ再開しようか。三人には負けられないし。」
「そうね。」
それから三十分。
何十回と失敗を繰り返したが、遂に初めて成功する。
「アレクシアさん、今の。」
「ええ。出来たわね。 この調子で完璧にするわよ!」
「もちろん!」
何回に一回かは失敗するがそれでもきちんと成功する。
そして更に一時間が経つ頃にはほとんど成功するようになっていた。
「アレクシアさん。そろそろ魔力がヤバイからこれが最後で。」
「私もちょっとキツイかも。」
「だから最後は……最後も成功させよう!」
「ええ。」
「ファイヤーボール!」
「ウインドショット!」
残り少ない魔力を込めて俺とアレクシアさんはそれぞれ魔法を放つ。
その二つの魔法は混ざり合い的を燃やし尽くした。
〈合成魔法 緋炎を会得しました〉
遂に来た。
「アレクシアさん。今の完璧だったよ!」
「そうね! 遂にやったわね!」
俺とアレクシアさんは向き合っておもむろに手を挙げると景気のいい音を出しながハイタッチをした。
「随分と仲良くなったね〜。でも、成功おめでとう、レント。」
「ん。おめでとう。」
「おめでとう、ございます。」
「ありがとう。」
「え、ええ。そうね。」
なんかアレクシアさんが急に恥ずかしくなったのか顔を赤くしている。
「そ、それよりも、もう一人のお嫁さんを迎えに行かなくてもいいの? もう結構いい時間よ。」
「え? あっ! 本当だ!」
アレクシアさんに言われて時計を見るともう夕方と言っていい時間だった。
なので俺は慌ててギルドを飛び出して街の外に向かう。
その道中にMPポーションを呷る。
たとえ無駄になろうとも嫁の為ならこの程度惜しくない。
まあ、すぐに合流できて無駄になったんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます