第167話 ユニークじゃない…だと。的なお話

「さてと、それじゃあ明後日のハードジャイアント戦に使う魔法の練習をするんだけど……レントはいい加減こっち見なさい。いつまで出口の方を見てるのよ。」

「でも〜。」

「でもじゃない。そんなに心配ならさっさと練習を終えて見に行けばいいじゃない。」

「よしキタ。何からやる? やっぱり火、風の火炎コンボがいいよな。リリンには闇魔法で足止めをしてもらって……あ、前にエルナさんがやっていた魔法を教わった方がダメージも与えれるし、それで……「ここまで極端に変わるとびっくりするわね。」」


俺がこんなに考えてるのにアレクシアさんは何を言ってるのかな?

全く。

こんなんじゃハードジャイアントを倒せないだろうに。


「えっと、落ち着いてレント。心配なのは分かるけどもっとちゃんと考えないと。そんな簡単に魔法を覚えられる訳じゃないんだし。」

「ん。まずは深呼吸。」

「お、おう。スー、ハー、スー、ハー。」


リリンに言われて深呼吸をすると少し落ち着いた。

ファイヤーボールのような簡単なのならまだしも攻撃+拘束できる魔法が簡単なはずが無い。

そんな事も分からないなんて相当焦っていたようだ。

………でも、一応教わってみてもいいんじゃないかな?


「確かに炎を主軸にするのはいいと思うわ。でもそれで倒しきれるかしら? 何かもう一つあるといいんだけど。」

「じゃあ、油は? 魔法の直前にぶっかけてみたら?」

「油か。試してみる価値はあるわね。じゃあ、それで。後は魔法の強化をやりましょう。リリンはエルナに一応教わってみて。出来ればダメージ量が増えるわけだし。それとレントは私と一緒に合成魔法の練習をしてくれるかしら? レントは蒼炎を使ってね。」

「セフィアじゃダメなのか?」

「ダメじゃないけど、風が弱い気がするから。」

「じゃあ、僕はエルナちゃんと?」

「そうね。」

「でも、そんな簡単にタイミング合うかな。」

「合わなかったら戻せばいいわ。明日もやるからその時に戻して練習するから。」

「明日も? というかそんなコロコロ変えて大丈夫?」

「分からないけど、少しでもダメージ量が多くなるようにすべきでしょ。一撃だけなんだから。」

「そうだな。やるだけやってみるか。」


というわけで俺はアレクシアさんと合成魔法魔法の練習をする事になった。

蒼炎を使うらしいけど、もう少し言葉を増やした方がいいのかな?

いや、タイミングの練習だからそこまで増やしたらかえって練習回数が減るな。


「それじゃあ、やろうかアレクシアさん。とりあえず今日は練習だから普通のファイヤーボールでいいかな? そうじゃないと魔力がすぐ無くなりそうだし。」

「そうね。でも、その前に私も奥の手の一つを見せないとね。」

「奥の手って試験の時の?」

「そうよ。あれは精霊共鳴っていうスキルでね、契約している精霊と同じ魔法を使う事で魔力を共鳴増幅させて数倍の威力を出せるのよ。」

「数倍って凄いね。」

「そうね。その上消費魔力自体もそのままなのよ。まあ、派手で目立つのが難点かな。」

「それって、ひょっとしてユニークスキルだったりする?」

「そうでもないわ。エルフは元々精霊との親和性が高いし、契約もしやすいからね。まあ、このスキルの所持者は百人に一人くらいの割合だからそこそこ珍しくはあるけどね。それよりもまずは実践してみせるわね。」


アレクシアさんが実際にやってみてくれるとの事なので離れて見ているとアレクシアさんが発光しだす。

そして魔法名を唱える。


「ウインドショット。」


的めがけて放たれた不可視の弾丸がガオンという音とともに的を砕く。


「これが共鳴させたウインドショットよ。で、こっちが普通のウインドショットね。」


そう言って発光する事なく普通に放った魔法はバキッと的を折るだけにとどまった。

その結果を見るだけでその凄さが分かる。


「実際にはこの発展系のエアロカノンで使うから更に威力が上がるわ。だからそれにも負けない強い炎が欲しいのよ。」


そう言われれば納得する。

確かにこれだけの威力の魔法の発展系ならば生半可な炎じゃ逆に消されてしまうだろう。


パートナーを入れ替えた理由に納得したところでアレクシアさんと合成魔法の練習を開始した。

しかし、セフィアのような嫁と旦那という近しい関係ではない為になかなかタイミングが合わない。

そしてタイミングが合わないまま二時間が経ってしまうのだった。

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