番外編 エイプリルフールを楽しもう

「ねぇ、エイプリルフールって知ってる?」

「「えいぷりるふーる?」」

「それなに?」

「俺のいた国であった行事? 風習? みたいなやつで、四月の最初の日は嘘をついても許されるんだ。もちろん限度があるけどね。」

「なんでそんな日が出来たの?」

「さあ? それは俺もわからないけど、でもその日は友達とかで冗談を言い合って楽しく過ごしたりするんだよ。」

「へ〜。面白そうだね。」

「それを話したって事は…」

「うん。ちょっとやってみようかなって。でも、やるのは俺たちだけにしとこう。知らない人に言ったところで怒らせたり、混乱させたりするだろうしね。」

「それは確かにそうだね。」

「でも、アカネなら。」

「うーん、今回は無しで。一応ね。向こうから聞いてきたり、嘘を言ってきたらその時は応じればいいし。」

「そうだね。」

「それと嘘は笑って許せるものだけでね。相手を傷つけるのは後々問題が残るから。」

「う〜ん。例えば、レントなんか大っ嫌い…とか。」

「ぐはっ!だ、大っ嫌い……大っ嫌い、大っ嫌い……ふふっ。嘘だと分かってても、これはくるな。」

「僕も……自分で言ってて悲しくなったよ。」

「うん…そういうのは止めよう。」

「レント。私は大好きだから。」

「お兄さん、私も大好きですからね。」

「あ、ずるい。僕もレントの事、大、大、大好きだからね。」

「うん。ありがとう。そういうわけだから、笑えるのにしよう。あ、いっそのこと俺を一番楽しませた人とディナーデートするとか。」


ーキュピーン


「勝負だよ。リリン、ルリエちゃん。絶対に僕が勝つから。」

「デートは私の物。」

「私だって負けませんから。」


そういって三人は部屋から出て行った。


「えーっと、準備に出て行ったのかな。というかなんかちょっと怖いんだけど、大丈夫かな、俺。」



三人が出て行ってから一時間くらいした頃、セフィアがやって来た。


「レント、ヨージさんが不敬罪で捕まったって!」

「なんだって!?……って一時間でそこまで分かるわけないじゃん。」

「あはは。流石に無理があったか。つ、次に期待してて。」

「お、おう。あ、そうだ。時間だけど12時までで。流石に長時間やるのはお互い大変だから。」

「うん。わかった。」


セフィアが出て行ってから15分程すると、ルリエがやって来る。


「お兄さんに決闘を申し込むって人が来たんだけど。なんか、僕のルリエちゃんを返せとか言ってて。」


ルリエはそう来たか。

確かにルリエは可愛いし、ストーカー的なのも一人や二人いてもおかしくないとは思うが、これはちょっと微妙なラインかな。

なんて思っていると外から


「レント・カザミーー!僕と決闘しろーー!」


と聞こえてきた。

どうやら嘘ではなく、本当にやって来たみたい。



これからも粘着されると面倒なので決闘に応じてギルドで戦ってきたけど、ナニアレ。弱すぎるだろう!

一応、ルリエに金輪際近づくなとは言っといたが。

それにしても、あんなんで決闘とか言ってんのか。

しかも、ロリコンのストーカーど真ん中って容姿でマジでキモかった。

いや、俺がロリコンを否定するのはちょっと問題があるか。

だってそのルリエと結婚してるし。

……いやいや、俺とルリエは三つしか違わないし俺はロリコンじゃない。

ロリもいけることは既に証明されているが。


とはいえ、貴重な時間がストーカーによって潰されてしまった。

ルリエにも終了時間を伝えてから部屋に戻る。

部屋に戻るとリリンがスタンバッていた。……全裸で。

なして?


「えっと、何してるのかな?」

「師匠が、一緒にレントとHしたいって。」

「はあーー!?えっ!?うえーっ!?ちょっ、それ本当!?」

「嘘。師匠にはまだ早い。」

「嘘……あっ!あー、うんそうだよね。びっくりしたー。……ってまだ早いって流石に酷くないかそれ。」

「口が滑った。」

「そう。口が滑ったんなら仕方ないよね。」

「うん。仕方ない。」


それからリリンは服を着るとそのまま居座った。

話を聞いてみると自信があるから他にやる必要がないって。

そうしてリリンと一緒にラノベを読みながらのんびりしているとルリエがやって来た。


「お兄さん。アカネさんがお兄さんの事が好きで自分の事をどう思っているか聞いてきてって言われて、それで今隣の部屋にいるんだけど、返事を言いに行ってきて。」

「アカネが!?うーん。分かった。行ってくる。」


ルリエに言われた通り隣に行ってアカネに話しかける。


「えっと、俺の事が好きだって話だけど……」

「う、うん。」

「ごめん!俺、アカネの事をそういう風に見る事が出来ない。その、ルリエの時にも言ったんだけど、既に好きな人がいるからそういう時は俺を振り向かせないとそういう関係にはなれないって。だから……って、なんで笑いこらえて…ってまさか!?」

「うん。ごめん。ルリエちゃんがどんな嘘にしようって呟いてるのを聴いちゃって、それでエイプリルフールだって思って協力するって声を掛けたの。」

「そうなのか。」

「ごめんね。」

「そういうことなら仕方ないよね。でも、本当にびっくりした。」

「だってさ。ルリエちゃん。」

「えへへ。やりました。」

「本当にびっくりしたよ。分かってるだろうけどこういうのは今日だけだよ。」

「もちろんです。」



それから12時になるまでの間、セフィアが細かいネタを仕込んで来たものの、どれも分かりやすかった。

まあ、セフィアは根が本当に優しいから嘘はつきにくいよね。


「それでは、結果発表を行う前に、一つ報告があります。実は一番楽しませた人とディナーデートをするというのは嘘です。」

「「「えっ!」」」

「本当はみんなでディナーデートです。なので、5時くらいから出掛けよう。」

「「「うん。」」」


それからお昼を食べた後、ルリエは仕事の続きをし、俺たちはギルドで訓練をして5時くらいになってからディナーデートに出掛ける。


「そういえば、結局レントが一番楽しめたのは誰?」

「うーん。リリンのは本当にびっくりしたし、ルリエのはアカネと共謀だったのが良かったけど、楽しめたのはセフィアかな。なんか、一生懸命なところがすごく可愛かったから。」

「確かに。」

「そうですねぇ。あれは卑怯ですよ。」

「う〜。も、もう。早く行くよ。」

「「「はいはい。」」」


その後はディナーデートをして、豪華なホテルに宿泊した。

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