番外編 アカネの軌跡
私の名前はアカネ。
元は倉科茜という日本人の転生者。
転生してからはアカネ・ユースティアという名前で生活していた。
転生した世界は魔法あり、魔物あり、貴族ありの最近流行りのネット小説みたいな世界だった。
私はそこのユースティアという貴族の家の次女として産まれた。
前世の死因はバスの事故だったっけ。
運転手さんがブレーキが効かないと叫んでいたのを覚えている。
そしてそのまま崖の下にまっ逆さまだったっけ。
その時は来月から高校生になるのになんでこんな目にと思ったけど、なんの因果か私は異世界で生まれ変わることが出来た。
前世の私は何処にでもいるようなごく普通の女子中学生だったけど、今世では普通とは違うキラキラした人生を歩もう。
幸いここは剣と魔法のファンタジー世界で私は貴族だ。
きっとなんでも出来る。
それから私は13歳になるまで幸せな時間を過ごした。
幼い頃は兄と一緒に走り回ったり、庭の木に登ったり、かくれんぼをして遊んだ。
貴族としての勉強も前世で高校受験で学んだ数学に比べれば算術なんてお遊びみたいなものだし、読み書きも基本言語というスキルのお陰で楽勝だった。
魔法も魔力量が多いとかで褒められたし、ステータスが普通よりも少し高いとかで剣術や徒手空拳も才能があった。
社交術とダンスに関しては、まあ、経験がなかったから得意ってほどではなかったけど、それでも幸福な人生だった。
後は、恋人が出来ればなぁ〜と思っていた時期に事件が起きた。
父が横領で捕まった。
父は無罪を訴え、事実父は罪を犯しておらず、他の貴族にでっち上げられた冤罪だった。
私の父は優秀な騎士として名が通っており国王にも一目置かれていた。
それを妬んだ貴族から軍事費を横領したという罪をでっち上げられ捕らえられた。
私はその横領によって生じた損害を取り戻す為という名目で奴隷となった。
◇
私は200万リムで売れた。
自分で言うのもアレだけど、こっちの世界に転生したらかなりの美少女になっており、その上で貴族の出で戦闘能力もベテラン冒険者相当ということでかなりの値段がついた。
私自身が犯罪を犯したわけではないから扱いは一般奴隷になっていて、その中でも戦闘奴隷として売られた。
見ず知らずの奴の愛玩奴隷なんて真っ平御免だしね。
私を買ったのはとある商会の当主で息子の護衛兼側仕えとして買ったらしい。
ただ、その息子がかなりの馬鹿息子で夢見がちな中高生をやっていた私よりも夢を見ていた。
大した才能もないのに努力もせず親の金と権力で好き勝手してるどうしようもないクズ。
それでも私はその馬鹿息子の奴隷として言うことを聞かないといけなかったし、過度の暴力は違法だが教育や戦闘訓練と称して行われてきた。
日本でも高校に上がる前に死んだし、こっちでも13で奴隷になって、私の人生は呪われている。
それまでの生活が恵まれていた分余計に差を感じる。
私はこのまま報われずに死んでいくのかと絶望しかけた時に転機が訪れた。
ラングエルトの街へと護衛として連れて行かれた時にあいつに出会った。
黒髪黒目の結構かっこいい日本人顏の男の子。
おそらく転移者か何かだろう。
馬鹿息子は彼の連れの女の子達に声をかけるがそこへ待ったをかける彼。
そして私は馬鹿息子に命じられるがままに彼へと襲いかかる。
正直に言って、すごく嫌だった。
おそらく同郷と思われる人を襲い、倒さなければいけないのかと思った。
彼は一度たりとも反撃してこなかった。
攻撃してみたけど、それ程実力差を感じなかった。
リア充ハーレムを形成するチート野郎かと思ったけど、そうではないのは対峙して、彼の動きを見て分かった。
そうして攻撃していると私の両手突きが彼を捉える。
すると私の首から奴隷の証である首輪が外れて地に落ちる。
何故? と思う暇もなくすぐに衛兵が駆けつけてきた。
理由はよくわからないが、彼が私を奴隷身分から解放してくれたことだけは分かった。
私は事情聴取を受け、解放奴隷の当面の生活費としてのお金を受け取って、私は自由の身となった。
自由になった私はまず彼に会いに行く。
場所は衛兵さん達に聞いた。
本当はお礼を言いたかったんだけどね。
照れくさくて言えなくて、結局異世界人かの確認と雇って貰えないかの確認をしてしまった。
冒険者ギルドの昇格試験中ということでカインに着くまで待って欲しいと言われて、その間の滞在費まで出してもらってしまった。
借りばかり増えちゃうな。
◇
大量のオークに襲われたり、彼……蓮斗が倒れたりといろいろあったし、セラさん達と再会して奴隷になってからの一年間のことを聞いたりした。
そしてどうやら父は冤罪を晴らすことに成功したようだが失った名誉までは取り戻すことができずに苦労しているらしい。
そして冤罪を掛けた犯人はジェイル家という貴族でお家取りつぶしになったそうだ。
ざまあみろ。
蓮斗と会って雇用に関して話し合う。
正直に言えば私なら冒険者一本でやっていけると思うけど、借りがあるからね。
蓮斗なら身体でとも思ったけど流石にそれはね。
だから家事手伝いとして働いて返そうと思う。
家事は日本でもやっていたから多分大丈夫なはずだ。
それとは別で自由になったから冒険者もしてみたいと思っていたからそっちもやる。
今度こそキラキラした人生を歩むんだ。
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