第30話 折れちゃったよ。的なお話

「てい。」

「あいたっ。」


折角のユニーク魔法なのになかなか使えなくてプッツンしてたらリリンのスベスベな手で手刀をお見舞いされた。


「落ち着いて。戦闘では冷静に。」

「お、おう、すまん。あと、ありがとう。」

「うわっ!囲まれちゃったよ。どうしようレント!?」

「セフィア、リリン。背中合わせでお互いの死角をカバーし合う。その上で襲ってきたのを各個撃破しろ。」

「「了解。」」


俺の指示どうりに動いてくれる二人。

三人が背中合わせの状態でそれぞれが得物を構える。

リリンは短刀を、セフィアは双剣を、そして俺は片手剣を。

敵は四羽だが、頼りになる二人に後ろは任せてある。

そうして暫く睨み合う形になっていたが、先に痺れを切らしたのは鳥の方だった。


滞空していた四羽は俺たち目掛けて一斉に襲い掛かってくる。

セフィアとリリンには一羽ずつ、そして俺の所には二羽やってきた。

空いている左手でファイアーボールを襲ってくる左側のローグバードに放ち牽制する。

ファイアーボールが少々大きくなってしまったが急停止した後回避をしていたから問題ないはずだ。

その間に襲ってくる右側のローグバードは翼を畳み更に加速してきた。

反撃は間に合わなそうだった為、剣でガードする。

ガキン!という音と共に衝撃が襲ってくるがなんとか防ぐ事に成功する。

しかし防いだ代償にアリシアさんから貰った剣が半ばから折れてしまった。

やはりDランクな為にこれ迄のようにあっさりと、というわけにはいかなかった。

だが、相手の勢いは完全に殺したのでその隙に左手の指先から火を最大火力で放つ。

火炎放射器みたいな火が出るが僅かに回避され即死にはならない。だが、大ダメージを与える事には成功する。

そして突撃してきた方は一旦体制を立て直そうと上空に逃れる。

もう一方のも突撃してきそうだった為、慌てて剣の柄を投げつけて妨害する。


一旦仕切り直す際にストレージから投擲用のダガーを取り出す。

するとローグバードは二羽同時に翼を畳んでの突撃をしてきた。

ダガーをばら撒いて回避行動をとらせ、その隙にサイズ重視のファイアーボールを怪我をしている方にぶちかましてとどめを刺す。

だが、残った方は依然突撃中な為に直ぐ側まで来てしまっており、防御が間に合わないと思っておもわず目を瞑ってしまった。


「グワァッ!?」

ベシャッ!


だが俺に届いたのは攻撃ではなく妙な鳴き声と何かが叩きつけられた音だった。

何事だと思い目を開けるとローグバードが地面に落ちていた。

何が起きたんだと思った時に上空より飛来した水の槍でローグバードが串刺しになり「キュワァァァ」という悲鳴と共に絶命した。


「大丈夫だった?レント。」

「ひょっとして地面に落としたのはセフィアが?」

「うん。こう上から強い風を起こしてね。」


身振り手振りで風の様子を表現しているセフィアはとても可愛かった。


「さっきは助かったよ。二人ともありがとう。」

「ん。」

「どういたしまして。」

「しっかし、二人を護るとか言ったのに俺が助けられてちゃ世話ないな。」

「そんなことないよ。レントが二羽を相手にしてくれたから僕たちが余裕を持って戦えたんだから。」

「それにこれを見て。」


そう言ってリリンが見せて来た物は丸焼きになったのと、中心部分を一突きにされていたローグバードだ。

一突きのは多分リリンが倒したものだろう。

その二つを見比べると丸焼きの方が一回り大きかった。


「リーダー個体。」

「つまり、俺がリーダーと戦ったてたから二人は余裕が持てたと。」

「そう。」

「そっか。そう言って貰えるなら、頑張った甲斐はあったかな。」


初めての飛行型が相手だったが、ここでやっとひと息つくことが出来た。

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