第29話 木魔法が使えない的なお話

オオカミになった翌日。

朝起きて筋肉痛の調子をみる。

ちょっと痛むな。程度にまで回復していた。

これなら明日には痛みは無くなるだろう。


セフィア達を伴って食堂に向かう。

食事をする分にはなんら問題は無いのだが、セフィア達が食べさせ合いっこの幸福感にハマってしまったようで、凄く強請ってくる。

仕方がないので一食につき一回ずつと約束する。

それ以上は嫉妬の視線と恥ずかしさで味が分からなくなりそうだし。


朝食を終えたあと、今日は先人達の知恵を借りようと思いスキル関連の本は何処でなら読むことが出来るかをルリエちゃんに聞いてみる。


「そういう本は冒険者ギルドや教会、後は国が管理していると思いますよ。魔法系の本は魔法協会にもあるとは思いますけど、一先ずはギルドに行けばいいと思いますよ。」

「ありがとう、ルリエちゃん。とりあえずギルドに行ってみるよ。」

「いってらっしゃい。お兄さん。」


ルリエちゃんのアドバイスを元にギルドに向かう。

その道中にセフィア達は今日はどうするのかを聞いてみると


「う〜ん、本の内容によるかな。もし、良さそうなのがあったら僕も読んで見たいし。」

「良いのが無かったら訓練か依頼をすればいい。」

「それもそうだな。」


そうしてギルドに行くも貸し出し拒否された。

理由としては新米冒険者がスキルを覚えようと無茶をして身体を壊したり、スキルを覚えたことで調子に乗った冒険者が帰らぬ人に…なんて事が昔あったそうで、それ以来ある程度の経験を積んだ者に貸し出すようにしているそうで。基準としてはDランク以上だ。


素振りをしまくって疲労でぶっ倒れた俺は文句の言いようが無かった。

それでもスキルを覚えたいのなら定期的に行われるギルド主催の訓練合宿に参加するように言われた。

新米用のものとDランク以上用のがあり、新米用のは冒険者としての知識と戦闘の基本を学び、Dランク以上のは実力を伸ばす為のもので、確実にスキルを覚えるというわけではないがどちらの合宿も訓練の過程でスキルを覚えたという事がそれなりにあるそうだ。


だが、次の合宿は十五日後とのことで、リリンに教われば合宿までには知識を身に付けれるだろうし、そうなると新米用のは参加する必要性が半減するし、それまでにスキルを覚える可能性もある。

なので考えておきますと答えて受付を離れる。


「本は借りれなかったし、今日はどうしようか?」

「それじゃ今日は依頼でも受ける?最近はあんまり受けてなかったし。」

「賛成。」

「そういえばそうだな。じゃあ、そうするか。」


というわけで今は街道を進んでいます。

今回受けた依頼はラビット、ファング、ゴブリンの三つだ。

ラビットは納品、ファングとゴブリンは討伐で証明部位はファングは角、ゴブリンは耳だ。

そして今回は別の目的もある。


それは今回こそ木魔法を使うことだ。

そして見つけた獲物は70cmくらいの黒い鳥だった。

リリンが言うにはあれはローグバードという魔物で常に三、四羽で徒党を組みランクはD。

雑食性で、畑の作物や格下の魔物を餌とし、商人の荷車を襲う事でも有名でその様子からならず者を意味するローグという名がついたそうだ。


「なあ、リリン。あれは鳥なんだよな。」

「そう。」

「ってことはさ、飛ぶよね。あれ。」

「そうなる。」

「……………。」

「一体、何時になったら俺は木魔法が使えんだよーーっ!!草結びじゃ届くわけないじゃん。だって飛ぶもん。巫山戯んなよ。」

「あ、気付かれた。」

「ちょっとレント、こっち来たよ。というか襲って来たよ!」

「やってやる。殺ってやるよ。ぶった切って、焼いて、焼き鳥にして殺るよ。」

「落ち着いてよ、レント。っていうかもうすぐそこまで来てるよ。」

「殺ってやんよ、ちくしょうめがー!!」


こうして実践で初めて魔法を使う事にした。……火魔法だけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る