第47話 脇役高校生は土産を買う
「いやぁ、俺たちって観客席から見るとあんな感じだったんだな」
「そうだね~。でも、あんな風に見られてたって考えたら恥ずかしくなってきたかも……」
午後にあったペンギンショーでは、午後からカップルチケットでやってきた人が居たらしく、その人たちが参加をしていた。
お二人もどうですか?と言われたが、パフェやジュースで気力を使い果たしてしまい。もう一度あれをする気にはどうしてもなれなかった。
……で、そのカップルチケットの二人組、それは俺と涼風のような相手が居なかったから一緒に来たというわけではなく、正真正銘のカップルだったわけで終始ノリノリだった。
出会った場所はー?とか、お互いのどこが好きなのー?とかも平然と答えていた。これが大学生の余裕なのか?それともリア充の余裕か……?
どちらにせよ、あれの簡易バージョンだとしても砂糖を吐きたくなるような光景を俺たちは繰り広げていたのかもしれない。
「そろそろいい時間だし、お土産コーナー見に行かない?」
「ん? もうこんな時間か。いいぞ、お土産は買う予定だったからな」
「私はぬいぐるみを買いたいなー! ふわふわで寝る時に抱きしめたらちょうどいい大きさのやつ!」
「それ、結構な値段になるんじゃないか?」
そういうと、涼風はバッグをポンと叩いて言い放つ。
「大丈夫! そのためにいっぱい持ってきたから! 何ならカードも!」
「そ、そうなのか。俺は家にぬいぐるみとか無いからなぁ……。いや、実家にはあったかもしれないけど少なくとも俺の部屋には存在しなかった」
妹の部屋にはたくさんあった気がするけれど、妹の部屋にはほとんど入らないというか入れてくれないから正確には覚えていない。
俺が部屋に入ると怒る割には俺の部屋にはよく来るんだよな……。
「んじゃ、とりあえず選ぶか」
お土産コーナーにはクッキーやせんべいなどのお菓子をはじめ、涼風が買うと言っていたぬいぐるみやキーホルダーなど、様々なものが売っている。
ぬいぐるみも特大サイズの物だと2万円を超えるようなものもあり、涼風が手に取っているのは約一万円ほどの胸に抱えられるくらいの大きさがあるぬいぐるみだ。
やはりショーを見たこともあって、ペンギンとイルカのぬいぐるみで迷っているようで、触り心地を確かめるように押しつぶしたり試しに抱きしめてみたりしているようだった。
「ねー! これどっちが良いと思う~?」
「うん? まぁ触り心地的にはこのイルカのほうが良いけど、このカメも捨てがたいな……」
「カメ? ほ、ほんとだ……! こんなところに伏兵が居たとは……」
「でも、寝る時に抱くならペンギンかなぁ……」
どっちにしようかなぁ……と言いながら涼風は悩んでいる。正直、大きさ的にはイルカが一番お得感がある気がする。
「うーん……って、あれ? 静哉くんそれは?」
「なんか触ったら癖になってきて、買っちゃおうかなぁって」
「なるほどペンギン。ペンちゃんだね!」
俺が持っていたのは一万円ほどで買うことができるペンギンのぬいぐるみ。ぬいぐるみを触っていたらどれか一つ買いたくなってしまったのだ。
おいてあるぬいぐるみの中でも、ペンギンのぬいぐるみは枕にしても気持ちよさそうだし、触り心地も良い。夏である今の季節でも使えそうな感じだ。
「よし、俺はこれを買ってこようかな。あとは……せっかくだしキーホルダーでも買うか?」
「良いんじゃない? じゃあ私はイルカにしようかな! イルカのクーちゃんとペンギンのペンちゃん!」
「じゃあ私は学校の友達とかに上げるお土産も探してくるね! 静哉くんは知られてないけど、私は友達にもモデルをしてるって知られてるし、SNSをフォローされてるからね! 水族館に来たことがばれてるんだよ!」
「なるほど……。俺もお菓子は買っておくけど配る予定はないかな」
お菓子を配りでもしたらばれてしまう。最低でも感づかれることは俺でもわかっている。だからお菓子は絶対に配ってはいけない。
もし万が一江橋さんに渡しでもしたらその瞬間完全にばれることになる。……いや、すでに確信されているんだった。
「じゃあ、会計してくるな」
「はーい。レジ終わったら待っててね!」
俺はレジに向かっていく。途中にあるキーホルダーを一つかごに放り込んでから。合計金額は約一万五千円ほど、キャッシュレスで払ったから実質一万四千円だ。
その後、涼風も会計を終わらせる。本当にバスが通っていてよかったと思わせるほどの大荷物で、余裕で二万円は超えたのではないだろうか?
「お待たせー! いや~、いろいろ買っちゃったよ! 大体お菓子だけど、お菓子が入ってる缶が欲しくてほとんどのお菓子を買っちゃった~」
「なるほど、まぁここでしか手に入らないし、缶も小物入れとかに活用できるからな。ほい、片方上げる」
「ん? なにこれ~?」
涼風は俺に渡されたイルカのキーホルダーを掲げる。
「このペンギンのキーホルダーと二つセットで売ってるやつなんだが、片方要らないか?」
そういうと、涼風はキョトンとした顔で言う。
「……いいの?」
「あぁ。当たったカップルチケットだったとはいえ、チケットを出してもらったんだからこれくらいは買わせてくれ。キーホルダーなら持ち運べるし、形として思い出が残るだろ?」
「……そうだね。静哉くんありがとう!」
涼風はすぐにバッグにキーホルダーを付ける。開けてしまったし、せっかくだから俺はスマホにつけることにした。
「おう。大切にしてくれよ」
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