第42話
帝国の騎士団は古臭くて歪な組織だ。それは帝国の騎士団の若手はよくわかっている。
他国では国境防衛と市中での警邏業務を分け初めている。自国民と対峙するのと外国からの侵略者と対峙するのが同じということはないのだ。
そのうえ帝国は法と組織を重視する国、その中で宗教や都市の自治権を取り上げ法を整備した。そして騎士団になんでも間でも放り込んだのだ。
一方で完全に取り上げなかった権威や権利もある。
そのため管轄や権限が複雑怪奇になまま巨大化してきたのが騎士団であり、いろんなところに歪な部分がある。
帝国国境防衛特別騎士団という存在はまさにその典型例だ。
「国境防衛とそれに関わる全ての業務と責任を負う」という名目だがA国民の入国管理もしている。一方で出国する場合は役場で申請する。またA国民以外がA国から入国する場合も役場での申請となる。
A国との条約や交渉はもちろん首都の官僚が行うが、A国の町からくる苦情や要望、例えば
「姉妹都市関係を結びたい」
「帝国側に羊が逃げてしまったから回収したい」
「密猟者が逃げ込んだから捕まえてほしい」
と言った内容は基本的にこの騎士団と役場が共同で対応し、対応できなければ首都に送る。
一方でまったく同じ内容でもA国の議会やA家から要望が来た場合、これはまず首都に回される。外交は皇帝が独占する権利だ。皇帝に外交業務を委託されているなんとかという役所で審議され、ほかの役所や貴族諸々と話し合いがもたれ、そしてそこから命令が来ることになる。
ここの隊長となった今でもこの特別騎士団の仕事がどこまでで、それ以外はどこの仕事になるかということを完全には理解できていない。隊員は経験の分私より理解は進んでいるだろうが、それだってすべてを把握しているわけじゃないだろう。
なぜ団長がこんなことを思うかと言えば、今目の前の問題は誰がどう管轄すべきなのか、それを必死に考える羽目になっているからだ。
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