第22話

「こういったわけでして、今回の冒険者の集団は名目上辺境公が雇った冒険者ですが実質的にはA国と帝国共同で雇ったような物です。それに政治的事情も微妙な地域なので、我が国の冒険者の死体を放置しておくというのは面倒が起こりかねない。ですから帝国とA国で責任をもって捜索隊を編成することにきまりました」

 事情を話し終えた団長は少し背伸びをした。

「まぁ、言ってしまえば彼らを呼んだのはくだらないお役所の都合でしかないわけです。その結果起きてしまったことについては、国の機関である我々が責任をもって対応すべきだと」

「それは誰の考えですか」

「私の考えです。誰の死も悲しいことには間違いありませんし、国の問題を押し付けたようなものですから」

 真面目だな、とはドーリーの感想。

「まぁそういうわけで、明日以降捜索隊が結成されます。そんなときにあなた方のように指揮下に入らない人がウロチョロされると困るんですよ。わかっていただけましたか」

「それについてはまぁ分かったが、こちらの事情も汲んでもらいたい。騎士団に任せてるだけじゃお給料はでないんだ。座っていても給料が出るお役所勤めではないんでね」

「指示・・・聞か・・・対応・・・ある」

「そうですねぇ。できる範囲のご協力はしたいのですが」


全額前払いだしここまで来た以上、騎士団が回収した遺品や遺体を持ち帰るだけでもある程度の報酬は請求できる。

とはいえそういう話になると返金を前提に料金の交渉をする必要があるだろうし、そうなると私の採算も赤字になるかも、とはマリーの頭の中の計算尺が叫んでいる。

適当な報告をして給料をもらう、という発想や騎士団の指示を無視する、という考えはない。だから信頼されている。


「あの、一つ、妥協案的なものがあるんですが」

 そんな中でVが一つの提案をした。

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