第20話

「えぇ、我々としては」

 マリーが遠回しな話をはじめようとしたのでドーリーは手で制御。

 お役所仕事に慣れてる口調だが、こういう話し合いは慣れてないのだろう。

「どうせ、冒険者風情なんか放置だろうと思ってきたんですが」

「あなた方というかあなたたち(マリー以外を見て)、正直に話した方がいいタイプみたいですね」

 妙な御託を並べるより正直な理由を話して納得させた方が早いタイプ、というのは結構いるというのが彼の持論。

「えぇ、まぁ、正直に話しますと、普通ならそんなことしませんが、今回は事情が特殊なんです。そもそもどういったダンジョンかご存じですか?」

「詳しくは知りませんが、国境があいまいな地域にあるとか」

 Vの正直なコメント

「そこからですか?どういった事情でこちらに来たのかお聞きしても」

「それは」

 ドーリーはマリーを見る。彼女は困ったように首を傾げ

「依頼主の名前は明かせませんが、その行方不明の冒険者にとって非常に親しい方から遺品となるものを回収してほしいという内容の依頼をうけました」

「遺品。わかってらっしゃるのですね。その方は」

「みんな・・・知って・・・言わ・・・だけ」

 鉄兜の言葉にみな無言の同意。


 もう行方不明になって何日目だろうか。

森の中で消えたわけではない。小さいとはいえダンジョンだ。

 一人ではまず生きていられない。


「ですから、私たちとしては仕事をしっかりと完了して依頼主に満足していただく、そしてしっかりと報酬をもらいたいわけでして、許可をいただいたうえで明日にもダンジョンに乗り込みたいわけです。普通ダンジョン攻略で行方不明や死んだ冒険者に捜索隊なんか出さないのが相場でしょう」

「えぇ、そうですね」

 騎士団の任務や民間人が迷いこんだなどなら別だが好き好んでダンジョンに乗り込む人間が死んだからと死体の回収をやる義理は騎士団や国にはない。

それにそんな予算もない。もっと有意義な使い方がある。

「ですから私たちが乗り込んでも、まぁ場所が場所ですから微妙に難しい部分はあるとは思ってましたが、特に問題ないと思ってたんですが」

「そういうわけですか」

 あまり聞いたことがない話だがない話ではないだろうし、彼の言い分通り冒険者が普通にダンジョンで死んだのなら、その遺品を同じく冒険者が回収することを騎士団が止める理由はない。

 しかし今回は普通じゃないのだ。

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