第19話
「すいませんね。忙しくしていて」
すこし待ったところで応接間に若い男と従者が入ってきた。
「私はこの団の団長をしています」
「あ、これはどうもわざわざご丁寧に」
団長の自己紹介にマリーは立ち上がり深々と礼。
「冒険者のドーリーです。こっちからV、エヴァンス、マリー」
マリーより落ち着きを持ってドーリーは挨拶。
ほかの二人も合わせて会釈で答えた。
「団長が自ら出てこなくても、そこまで大事じゃないしです」
「私が一番暇なんですよ。実務方面は部下に任せてますし」
それといろいろ面倒な時に来た冒険者の面々の対応などは部下に任せるより自分がやった方が早いという判断。
「今回あなた方はダンジョンに行きたい、とのことですが」
「はい。国境が未定の土地にあるダンジョンに行くためにA国への出国許可も貰おうかと思っていたのですが、馬を借りた宿屋の人にまずこちらに来た方がいいと言われまして」
宿屋の主人の対応は非常にありがたい。とは団長の考え。
「なるほど。えぇ、まぁ率直に言いますとダンジョン行きはやめてもらいたいんですよ」
「騎士団の権限で冒険者のダンジョン探索を止めることはできないので、もらいたい、つまり「お願い」となるんですが」
「なぜ?」
役人の遠回しな言葉には何かしら攻略ポイントか都合がある、というのがドーリーの考え。
「まず、政治的に非常に面倒な地域であり大きなことは起こしてほしくないこと、そして、聞いてますよね?ダンジョン探索に行った冒険者が一名行方不明で現在A国との共同捜索隊を編成している段階だという事の二つです。我々の管理下に入らない武装集団をこういった地域に入れさせるのは色々と不都合が、というわけです」
嘘をついても仕方ないので正直に話す。
物が分からない冒険者ならこれで引くだろう。
「捜索隊?冒険者が行方不明になった程度でですか?」
これはVの正直な驚き。
「それは我が国の国民が」
「いい・・・そう・・・話」
「そうです。私たちは同業です。その辺よくわかってますから」
団長のお役所的言い回しをさえぎって鉄兜とVは言った。
仕事とはいえダンジョンに好き好んで入り込む社会のはぐれ物が冒険者だ。
それがダンジョンの中で行方不明になったからと言って騎士団が捜索隊を編成するなんてことはまずありえない。
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