第9話
ドーリとVが出した条件は以下の3つ。
・法令や社会規範に違反するような内容であれば騎士団や組合に報告し対処してもらうこと
・計画の全体像を聞いたあとでも実行不可能と判断するなら請け負うことをやめる。その場合でも前項に当たらないのであれば守秘義務は守る
・事前に報酬や前項の条件などを明確化した契約書を製作すること。依頼を実施する場合は組合に報告すること
組合からの依頼であればこれらは原則論の内であり明言されることは少ない。
ただ今回は色々と怪しいということでこういった条件を明確化する旨の条件をつけた。
「その点は問題ございません。では仮契約、という形でよろしいですか」
「まぁ承諾しますが、ダンジョン討伐ならあと一人か二人はいるでしょう」
「それはこちらで手配します。また急ぎの仕事なので今週中に出発くらいの話になるかもしれません。とりあえず明日組合が開いたらここに来てください。本契約の書類を制作しておきます」
「急ぎたってえらく早いな。まぁ俺はいいよ」
「今・・・仕事ない・・・」
「何泊くらいします?用意しとくので」
そんな会話をして4人は別れた。
組合が開いたら、というざっくりとした早朝の指定だったが全員組合が開く前の時間帯に現れた。
冒険者業では珍しい時間厳守。
高価な時計か鐘の音で時間を知る首都においては厳密な時間指定は無理なので、みんな多かれ少なかれ時間にはルーズだ。その中でも特にいい加減な連中が多い冒険者業界の連中が時間を守れないなんてのは今に始まった話ではない。
「おそろいですね。遅れちゃいましたか?すいませんね」
最後に談話室に来たのは仲介屋だが、彼女も別に遅れたというほどではない。
彼女も組合が開いたらすぐに来た。他の連中が早かったというだけ。
「これが本契約の書類となります」
揃っている、ということで早速本題に入る。
本契約の書類、ということで渡された書類の束。
三人はそれぞれ目を通して黙読。
冒険者業界の契約書としては比較的一般的な内容。
ただ条項として二人がだした条件が明記されているほか、守秘義務については通常より広範囲でなおかつ強力に規制されている。
また発注者の名前は「マリー」のみ。
「マリーって誰です」
「私です。言ってませんでしたっけ?仲介屋のマリーと言いますので、以後よろしくお願いします」
「あ、これはこれはご丁寧にどうも」
Vはそんな挨拶をしながらマリーの服を見た。
昨日の事務員みたいな格好とは違い、おしゃれをしている。
Vが持つ女性のファッションに対する知識ではその服のデザインがどうだ、質がどうだなどは言えないが、ある程度公式な場所か上流階級の家に行く格好だとはわかった。
「君の名前でいいのかい?これ組合にも出すやつだろ」
「名前を出したくない、って希望でして。私が依頼主から全責任の委任を受けまして、私があなた方に発注する形式をとってます。もし不払いなどがある場合は私に請求してください。私は依頼主から請求することになります」
「信頼・・・あるの・・・?」
「依頼主は、まぁ本日契約が成立したらお会いしていただきますが、信頼がおける方ですから支払えないなんてことはないでしょう。もし撮り損ねてもそれは私の責任ですので関係ありませんよ。どんどん請求してください」
まぁそういうことなら、とドーリーは納得。
そして三人はその書類にサインをした。
契約成立。
「これで正式な契約成立となりました。改めましてですが、これからよろしくお願いします」
契約書と組合への申請書を組合の受付に出して戻ってきた仲介屋はそういった。
組合への申請はこれで終了。追加料金になるが組合の魔法使いが魔法で写しを作って来れるサービスがあるのでそれを頼んだ。
写しができ次第出発。
「よろしく。他のメンバーは?」
「居ません。時間が足らなくてですね」
「三人じゃ無謀ですよ」
「私が出ますから、そのご安心ください」
「あなた・・・できる?」
ドーリーが見るところ、剣や弓を振るうという感じではない。Vのように魔法が使えるということか?そんな感じもしないが。
「えぇ、戦闘職として銃を使いますのでお役に立てるかと思います。冒険者の資格も持っていますし」
「銃ね。男三人に女一人は大変だろうが、まぁよろしくたのむよ」
まぁ仲介屋なる胡散臭い仕事やっているのだし、冒険者業界は胡散臭いやつのたまり場のような部分もある。
女でも強いやつは強いさ。多分。
というドーリーの考えで承諾した。
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