第7話

「依頼なら内容と報酬によるとしか言えんな」

 ドーリーの一言、Vも知り合いの鉄兜が保証するということで話だけは聞く姿勢。

「帰っ・・・ほう・・・いい?」

 二人への依頼、ということなら鉄兜は部外者だ。なるべく聞かないほうがいい。

「いやいや、メンバーを集めてる段階で。鉄兜さんの実力と実績、あと口の硬さならちょうどいいので、一枚噛む気があるなら聞いていきませんか。乗らなくてもいいですが、どちらにしても外で話さないことが条件です。おふた方もそれをまず承知してもらいたいんですが。承知できないならなかったことで帰らさせてもらいますので」

「わかりました」

「まぁそりゃ妥当だな」

 二人は承諾。鉄兜は席を動かないことで承諾の意を示した。


「話すと言っても本決まりするまで話せないことのほうが多いんですが、みなさんにお願いしたいのはダンジョン探索です。探索するダンジョンについては話せませんが、組合の判断基準に基づけば中級から初級のダンジョンと予想されます」

「予想ってことは未探索ダンジョン?」

 組合が存在自体は把握しているが、詳細情報を把握していないダンジョンは未探索ダンジョンと定義される。

「はいでありいいえです。諸事情、これを話すと大体特定できるので話せません。で本格的な探索はされていませんが、冒険者パーティーによる探索が行われました」

「なら報告があるだろう」

「いえ、その冒険者パーティーが任務を失敗しまして、1名生死不明、実質死亡判断という結果に終わりました。そのため組合も詳細な情報は把握していません。騎士団などが遠くから確認した情報のみです」

 そう言って仲介屋は一息つく。

「今回の依頼はその冒険者の遺品となるものを回収することです」


「依頼主は家族か恋人か?」

「その点についてはお引き受けするまではお話できません。契約を受注し守秘義務に関わる契約書を書いていただきましたら全容をお話します」

 ぼやかした言い方。

「もし・・・やば・・・仕事・・・ですか?」

「その点については私を信用していただくしかありませんが、受注内容がもし法令に反するような内容でしたら騎士団に連絡していただいて結構です。その点は守秘義務の例外として設けあります」

 ドーリーは時間稼ぎも兼ねて一旦まとめる。彼なりの会話術。

「つまり、諸事情で探索が進んでいないダンジョンの探索に失敗した冒険者パーティーがいて、そのうちの一名が死亡。それで誰かさんがその死亡した冒険者の遺品の回収をなるべく隠密に行いたいと、そういう話か?」

 隠密、というのはドーリーの感想だがいろいろぼやかした言い方からしてそんな感じだろう。

「えぇ、そういうことです。契約の方、受注していただけるなら」

 そう言って仲介屋は一人頭の契約金額と契約期間を話す。結構な金額。これが3人分なら相当な報酬額だ。

「それに現地までの交通費と宿泊費はこちら持ち、経費はそちら持ちになりますが」

「それでも結構な金額ですね」

「ただその分ダンジョンの内容によって長期化や危険を伴うリスクはありますし、守秘義務は墓場に入るまで全うしていただきます。特に延長や死亡があっても報酬の追加は払えません。この二点を承諾していただくための高額報酬と理解してください」



「ダンジョンで死んだ冒険者の遺品の回収、なんて依頼は僕は聞いたことがありませんが冒険者にも家族恋人友人がいるわけですしまぁなくはないでしょう。報酬額や日数などを考えると十分いい話ではあると思いますが」

「うん・・・」

 そう言ってVと鉄兜はドーリーをちらりと見る。ドーリーも同じ感想

 でもなにか怪しい。

「一つ聞かせてくれ。こっちの鉄兜さんはまぁ偶然、顔見知り、常連って理由で選んだんだろう?」

「そうですね。何度も依頼を請け負って頂いて誠実な業務遂行と良い成果をだして頂いています。今回の業務について受けていただけるなら幸いかと」

 完全なる褒め言葉。

「じゃぁ俺と、Vについてはどういう判断で選んだんだ?」


「まぁその、この商売やってますと組合の募集に載せたくない、できれば世間に知られないままやってほしいなんて依頼もある。というよりそういう依頼を持ってくる方が多くてですね。そういう依頼を発注できる冒険者、実績や経歴があり、品行がよく、実力があって守秘義務をまもり、発注した際に確実に依頼を受けていただけそうな方を探す必要があるわけです。ですから普段からリサーチして優秀な冒険者の情報や動向はなるべく把握してここの手帳に収めておくんですよ」

 そう言って自分の頭を指で二度叩く。

「むしろこの手帳が商売で成功する一番大事なことといっていいわけでして、その手帳の中に冒険者としては新米とはいえ傭兵団で生き残ってきた弓を使う剣士と、首都の学校を中退した変わり種魔法使いの情報もだったりその二人が依頼主に満足する成果を出している、トラブル対応能力が高く騎士団との話し合いもできるなんて情報も入ってるわけです」

 確かに依頼を請け負って仲間をあつめて依頼を終わらせる商売なら、情報の多さや人材確保も実力のうちだろうな、とはドーリーの感想。

「普段はもう少し段階を踏んで顔を見せるのですが、今回はちょっとした事情で時間がなくてですね。事情も少々特殊なので特殊技能が求められますが他に手が空いている適任者も見つからない。それで急に押しかける格好になりましたが本日お話を持ってきた次第です」


 まぁありそうな話。そう思ってドーリーは少し考え二人に言った。

「まぁ条件付きだが、俺は乗ろうと思う。ダンジョン探索したいと思ってたところだし、金出してもらえるなら嬉しいことだ。どうする?」

「乗る・・・報酬・・・いい」

「まぁいいでしょう。条件付きです」

 そして二人も承諾。

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