第6話

 二人に話しかけてきた女はいかにも事務職という格好。

 ここの受付嬢のほうがきれいな格好をしている。

 首都の組合は金があるのだ。


「どちらさん?」

「誰ですか」

 二人はそう返した。よくわからない勧誘ほど相手にしたくないものはない。

「仲介・・・知り合・・・」

 鉄兜は知っていたのか、そう答えた。

「鉄兜さん。お久しぶりですね。商売繁盛してますか」

 それに対して首をふって答える。

「仲介って?」

「仲介屋ですよ。私設の依頼請負屋です」

 

 冒険者への業務依頼は原則として組合を通すことになっている。

 例外は政府機関、また帝国の法律が届かない諸外国やモンスターなどからの依頼のみであるが、その場合でも組合を通したほうが面倒が少ないということで組合を経由することが多い。

 ただ依頼は組合を通す必要があるが、その業務を受注する冒険者をどう募集するかは発注者個人の考えに任される。

 一般的には組合に申請する流れで組合に募集してもらうことが多いが、個人的知り合いであったり特定の冒険者と交渉して直接発注することもできる。実際、組合や貴族、政府機関や金持ち個人から直接特定の冒険者に仕事を発注することも多い。

 また組合によって募集に関する業務のみ民間に委託することがある。

 というかそっちのほうが多数派。首都のような都市部でなければ大体酒場や商店、公民館や貴族の館などで依頼が張り出される。

 組合を通すというルールは依頼の請負状況などを把握するのが第一の目的であり、依頼自体に何かしらの指導を与えるものではないのだ。例外は法律に触れるような依頼内容の場合だけ。


 そう言った冒険者業務発注の曖昧さと制度的複雑さを狙って成立しているのが仲介屋、私的に貴族などから依頼を受け、組合への申請書類の制作から冒険者のメンバーを集め、業務遂行、その監督、成果報告、などをまとめて請け負う仕事である


「いい加減な連中も多いんですよ。仲介屋って」

 Vはそう言った説明をした上で一言こう付け加えた。

「いやですねぇ。私は良心的経営を心がけてますよ。手数料は依頼者と冒険者から報酬の5%ずづという明瞭会計」

「10%って高いのか安いのか?」

「安い方じゃないですか?その10%が本当にただしいなら」

「信頼ありませんねぇ」

「冒険者業なんていい加減な連中がはびこる商売のご同類じゃねぇ」

「彼女・・・信頼して・・・いい」

 仲介業を知っている鉄兜がそういった。

「ね?私は良心的な商売で高品質なサービスを提供することを心がけているんですよ」

「はぁ。それで、なんの用事です?」

「そうそう。二人に仕事があるんですが、どうですか?というお誘いの話をね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る