第11話 特別編 じゃんく


〜〜〜ジャンク〜〜〜

(まともに乗れないほどグチャグチャで形が悪いコンディションの波。)




(Cafe WAVE☕︎Openから)2度目の春


am10:00



広いキャンパスの端、

桜の花びらが舞う大学の駐輪場。

ちょうど一年通い続けて慣れた自転車通学でも

こんなに早く帰るのは初めてだ。

なんだか身体が怠いし

疲れか風邪か、脚の関節が痛くなって来た。


「おはよー郡司ぐんじ君。あれ?帰るの?」


講義のスケジュールを上手く組めば、

1限目が終るだけのこの時間に帰る人は少ない。


「ちょっとね。じゃ。」


同じ講義を取っている友人に軽く挨拶を済ませ、

何人かの学生とすれ違いながら軽い坂道を下り

校門を抜けると急に緑が減った街並みを走った。



最近お互い忙しくて

ちゃんと仁兄と会えていないからか、

会いたい気持ちが膨れ上がる。


それは、この身体が不調だからか…

なんだか気持ちまで落ち込んで、

ただただ仁兄と過ごしたいからか…



桜の香りにソワソワしながら

落ち着く潮の香りの場所へ急いだ。


彼と一緒にいられるところへ。











5年前。




寒かった冬が終わり、

自転車でボードを抱えて下る坂道も

潮の香りと混ざりながら花の香りで溢れ出す。

いつものように海へ向かう夜明け前の朝は特に

空気もより澄み切っている。

俺の気持ちとは裏腹に。



温かな頬を撫でる風とは違い、

海の水温が上がるのはひと足遅い。

まだまだ冷たい海水に長々と入ってしまうと

身体も冷え切る。

そんな時はあがった後のシャワーの温度を高くし、急速に身体を温めるんだけれど…

高くするたびに、なんで1人なんだろって思う。

熱いシャワーが好きな仁兄がいない。

今なら一緒に浴びれるよ。

あぁ、仁兄がいたら、

冷えると諭され早く海から上がっていたはず。



けど、今、俺は1人。


なんで俺の隣にあの人はいないんだろ…


なんで俺は1人で海に入り続けるんだろ…



大人になるって変わる事?

変わらないと大人になれない?


俺もいつかは変わらなきゃいけない?






制服のズボンを履き、上は薄手のパーカー。

その上の学ランは汚したりしないよう後で着る。

くつ下もまだ履かず、ペタペタとリビングを歩き

ダイニングテーブルのいつもの椅子に座った。

頭をガシガシと拭いていると

母が目の前に朝食のトーストを出してくれる。

いつもの光景で、いつもなら4.5枚、

厚めだったら2.3枚食べるけど…


「はい。3枚で足りる?」


「…やっぱ1枚でいい。」


「えー!焼いちゃったじゃない!もう…

目玉焼きまだ出来てないんだけど、

お弁当の卵焼き余ったのいる?」


「…どっちもいらない。」


「そう?あ、今日お弁当いるわよね?

昨日残してたみたいだけど多かった?」


「…いや。たまたま…」


「え?たまたまじゃないでしょ。

なんか今朝も食欲ないじゃない?!

熱あるんじゃないの?怠くないの?

熱はかってみなさい!」


「……」


少しだけぼんやりしながら、

味のしないパンと牛乳を口に運んでいると

庭の植物が沢山蕾を付けている事に気付いた。


「…ほら、体温計挟んでおいて。」


渡された体温計を脇に挟みながら

母に質問をする。


「チューリップって、毎年咲くんだ?」


「え?ああ、そうよ。4.5年は咲くらしいけど…

うちのは結構咲いてるわよ?確か…

郡司が幼稚園の時に仁君と一緒に植えたのよ。

それから仁君は毎年ちゃんと咲く度に

喜んでたわよ?今年も咲きましたね!って。」


「毎年?今年はまだ見てないでしょ…」


「え?この前来てたわよ?

また咲きそうって笑ってたわよ。

あれ見ると郡司が小さかった頃を思い出すって。

もう高校の卒業式は終わったみたいだから

大学の準備や引越しの準備で本格的に

忙しいみたいだけど。」


「え?…引越し??

だって大学はここからでも通えるじゃ…」


「知らないわよー。そう言ってたんだもん。

通える距離でも移動時間とか交通費とか考えたら

家賃払ってでも頑張るのかもね。

一人暮らしって良い経験になるし。

こんなふうに当たり前にご飯が出て来て

洗濯された服を着て掃除された空間に住める事が

どんなに恵まれているかって…」


「仁兄はもう春休みなんだ?」


「ママの話聞いてる?…そうよ。春休みだけど

忙しいから郡司とは連絡も取らないのね。」


「……」



小さい頃からずっと一緒だった仁兄。

仁兄が高校へ通い出してからは

あまり一緒に過ごせなかったけど…

たまに海に一緒に入ったり、

近くに住んでいるから偶然会ったり、

会わなくても、会おうとすればいつでも会える

ってだけで近くに感じていたのに。



「ほら。」


母が目の前で掌を出した。


「え?何。」


「何じゃないわよ。音鳴ったでしょ。体温計。」


全然聞こえなかった体温計を取ると、

そこには38度近い数字が。


「あれ?…熱…まぁまぁあるな…」


「え?ほら見せて。え!熱あるじゃない!

今日は学校休んで寝てなさい。」


「え?7度台なら大丈夫で…」


「食欲ないくせに何言ってるの!

これから熱上がるかもしれないし!

風邪薬飲んで寝てなさい!

これから私、少し出かけるけど

買い物して戻って来るから。」


「…えー…」


「え?さみしい?手繋いでてあげようか?」


「は?違…学校休まなきゃダメ?

今日はほぼ勉強しなくていい時間割なのに…」


「あら。これ以上勉強遅れずに済むなら

ちょうど良かったわね。」


「……」



いつもなら母のイヤミに反論するのに、

さっきの'大学'や'引越し'のワードが

頭にガンガン響いているからか

言葉が出てこない。

いや…普通に熱があるからか…



出された薬と水を飲み干して、

自分の部屋へと続く階段をゆっくり登った。

さっき熱いシャワーを浴びたはずの身体なのに

ポカポカの日差しを受けても寒気がする。

大人しくベットに潜る為にズボンは脱いだけど

スウェットのズボンを履くのも面倒で素足のまま

布団に入った。…震えるくらい寒い。



前回熱出したのはいつだっただろう…

確か2年前。2年前だと当然のように仁兄がいた。


けど、今は、当然のようにいない。


俺は、1人になってたんだ。

その事実に何度も気付いてショックを受けて…

その度に孤独に慣れたつもりでいたのに。



耐えられるかな。


1人に。





熱を出すといつも手を握ってくれた仁兄。

彼の手の感触がフラッシュバックする。

逆もあった。

熱を出して寝込む仁兄の隣に寝転び、

手を繋いで過ごすたびに風邪が移るからって

親に引き離されたっけ。


風邪なんかより、一緒にいれない事の方が

僕達には"病"なんだよな…


あ、違う。…'僕達'じゃない。僕だけだ。

一緒にいたいと思うのも、僕だけだ。

そう、1人なんだ。これからは…



「……じんにぃ……」


熱のせいか、

グルグル回るマイナスな思考をかき消す為に

考える事から声を出す事に集中する。

うなされてるのとは違う気がする。

だって意識はあるから……


「…ああ。グウのお母さんに会ったら…

お前が少し熱出してるって聞いたから…」


フラッシュバックした手の感触が心地良いのと

声までも心地良く聞こえ出した。

都合が良い幻聴。

そして薄っすら目を開けると…

更に都合の良い幻覚。

俺に優しく微笑んでくれる仁兄が視える。


「……じんにぃ……」


「…ッ、つらそうだから、声出すなよ…

ッ…そんな顔でそんな声出されたら僕……」


笑みは消え、辛そうな表情の仁兄に

変わってしまった。何を言ってるんだ?

…幻覚まで熱に侵されてグチャグチャだ。

いや、これは現実?


意識が朦朧とする…


「…じんにぃ…1人にしないで…」


「ッ……そんな事、言うなよ…」


「…じんにぃ…ぼく……」


「…な、何?…」


「……」


「…何だよ…いつも俺とか言って強がるくせに…」


「………1人は…ヤダよ…」




手が熱い。

熱の出始め、手が変に冷えていると

これから熱が急激に上がる恐れがある。

けど、熱いって事はもうこれ以上は上がらない。

いつかは下がる熱。


…自分の手が熱い事を実感出来る、

冷んやりとした手の感触は安心をくれる。



『…これ以上はつらくならないよ。

熱、これからはあんまり上がらない。

グウの手、あったかいもん』


『そうなの?仁兄はなんでも知ってるね』


『えへへ……僕がいるから安心して。

ずっと手も繋いでるから』


『治るまで?』


『治るまで』






ドアのノック音が響くと

母が話しかけながら部屋へ入って来た。


「どう?何か食べる?」


「んー……」


母に起こされたけど、目覚めが良いから

ぐっすり寝た気がする。

寒気も無くなり、熱っぽさも無い。

そしてやっぱり仁兄はいない。



「昼にゼリー飲料だけでしょ?

そろそろ夕方だけど何か食べれそうなもの…」


「え?俺、ゼリー飲料なんて飲んだ?」


「飲んだって言ってたわよ?仁君が。」


「仁兄??」


「あれ?寝てたの?寝ながら飲んだの?」



夢…のような記憶は現実…


確かに仁兄が一口一口、

ゼリー飲料を飲ませてくれた。

それは過去の仁兄を思い出しただけかと…



「あぁ…ボーっとしてたけど、

確かに仁兄に飲ませて貰った…

もう怠くないし、お腹すいた……」



仁兄の辛そうな表情は本物…?


あの手の感触は本物だったのか…?

手だけじゃない…オデコも熱くて…

彼のオデコにくっ付けて

気持ち良いとか言ってたな俺。

多分その時の俺の顔は目をとても細めて

口元もしっかり緩ませてニヤけてたような…


あと…久しぶりに仁兄が近くて…

薄れる嗅覚でも仁兄の香りが心地良くて

彼の肩に頭を預けて首もとに擦り寄って

思い切り仁兄を吸い込んでいたような…

……変態じゃないか?俺。


そして都合の良い夢だから…

仁兄の顔が赤くなって照れたり笑ったり、

コロコロ変わる表情が可愛くて…


『可愛い…』


『…ッな、何が…』


……可愛いって呟いたような。

しっかり聞かれてしまったような。

この記憶は、…夢であって欲しい。

そして、更に……1人にしないで、なんて、

恥ずかしい事を口に出してはいないはず…

だって困らせるだけだろ。


『…じん…にぃ……1人にしないで…』


『………』



あの、困った表情、

潤んだ瞳で僕を見つめたまま

声を詰まらせていた仁兄は夢…







「あ、誰か来たわ。多分仁君ね。」


「え?なんで…」


「え?だって、あなたが心配だから

また来るって言ってくれてたわよ?」


開いていたドアから覗く久しぶりの仁兄。

…いや、さっきも会っていた…のか。


「…おじゃましま…あ、どう?」


「すっかり元気になったみたいよ?」


「な、まだ怠いよ!

か、母さん、何かサッパリしたの食べたい!」


「はいはい。今フルーツ持ってくるわよ。」


仁兄と笑顔ですれ違い、出て行く母。


「…まだ怠いか…熱は?」


「まだ、少し、ある…」


「……そう…」



'治るまで一緒にいて'


一緒にいてなんて言えないし、

手も自分からは繋げないけど、

仁兄が俺との約束を覚えてるか期待して

つい甘えてしまう…



俺から離れていかないで。












pm18:00




「どう?まだ怠い?」


俺のオデコを冷たい手で包みながら

上から覗き込んでくる仁兄。


久しぶりに熱が出たような気がしたし、

だからか無性に仁兄に会いたくて

午前中のうちに大学から引き返して来た。

そして直ぐに仁兄の部屋へ転がり込んだ。

病人に押しかけられたら大迷惑だろうけど、

仁兄は心良く迎えてくれるし

誰よりも手厚く構ってくれる。


オデコから離れてしまった手を掴んで、

指を絡ませて繋いだ。


「…まだ怠い…ような…」


「はいはい。何か食べる?」


ほんと、大迷惑だと分かってるのに、

甘えてしまう。

けど、仁兄はニコニコ笑って楽しそうだ。

少し頬も赤らめて…もう風邪を移したか…?

こんなんじゃ、風邪、移しちゃうよな…

マスクをして、換気をして、手洗いうがい…

どんなに気をつけたって移る可能性はあるし、

移ったら仕事に支障が出るから

大迷惑を通り越して本気で大大大迷惑…

子供の頃の素直な行動とは違って

分別ある大人にならなきゃいけないのに…



「……ごめん。甘えて。」


「全然?グウが弱って甘えるなんて珍しいし。」


「……だから仁兄楽しそうなの?」


「えへへ。僕の方が不謹慎でごめんね?

調子悪いグウがずっと僕の所にいるから

なんか嬉しくて…」


そう言って笑い、手を繋いだまま

自分のベットを占領している俺の隣に

擦り寄ってくる。


「……移し、ちゃうよね…」


「まぁ、そんなに強い風邪では無さそうだし

僕、免疫力高いし…」


「…それは…」


それは…してもいいって事…?

空いている方の手で仁兄の腰を引き寄せた。

更に片脚を仁兄の脚に巻き付けて密着させる。


「…ッ」


何度も抱いているのに、可愛い反応。


「…仁兄…」


「ッ、お前、エロいって…」


「……1人にしないで…」


「ッ、だから……してないだろ。

今夕方だけど何回1階と2階往復したと思って…」


「…ありがと…」


「いや、うん……素直なグウ、可愛いな。」


「いつも素直でしょ…」


「まぁね。小さい頃も、反抗期の頃も、

グウは風邪ひくと素直になって可愛いよ。」


「……俺をおいて1人暮らししたくせに…」


「1人暮らし?僕が高校卒業した時の話?

春休み、グウ熱出したけど完治するまで

グウの部屋に何度も通ったじゃん!」


「…うん。」


「ホント、次の日も次の日も…」


「…うん。」


「なんか、その時期はグウに会うたび

素っ気ない反応にちょっと落ちたりしてて…」


「え?…けどそれは…」


「ああ、僕の方が素っ気無かったよね。うん。

距離作ってたのは僕だし当たり前なんだけど…

お前が熱出して疼くまってる姿見たり、

僕に甘えてくる声とか聞くたび…ヤバかった。」


「……」


「可愛いのと、エロいのと、いろいろと…」


「仁兄は、いつもエロいよ?

熱出してなくても、服着てても…

一緒にシャワー浴びてる時も、

自転車漕いでる時も、いつも、全部。

…俺が五歳下で良かったね?

じゃなきゃとっくに手出してたと思うよ?」


「ハハッどうかね、それは…」


俺の言葉を冗談なように笑い飛ばす仁兄。

けど、笑いながら、瞳からは溢れ出す涙。


「……仁に…い…?どうしたの?

何?何かあった?」


「な、なんでもないよ…

ただッ笑いと涙がグチャグチャで。」


「…仁兄…」


「…グウ……お前は、変わらないでいてくれて

ありがとう。」



温かい吐息と一瞬に届いた声。

少し反応している俺は隠そうともせず…

仁兄と下半身を密着させたまま、

仁兄の唇を食べるように口付けた。

そしてすぐ離して仁くんを見つめる。


「…うん…俺は、変わってない。変わらない。」


「…?」


「俺は、ずっと、仁兄を愛してる。」


「……」


仁兄は潤んだ瞳で僕を見つめたまま

声を詰まらせた。

夢か現実か…曖昧だけど

強烈に覚えている反応と同じ。

1人にしないでと呟いた時の仁兄の反応。


「…困らないでよ。」


「困ってないよ。……ぁ…まぁ…

嬉しすぎて困る…けど…」


頬まで赤らめて、囁く仁兄。


「……仁兄…嬉しくて困るって…

そういう反応するの…?…」


堪らず貪るように口付ける。

今度はそう簡単には離さずに、深く。

すると、仁兄のモノが少し

硬くなったのが自分のモノと当たって伝わる。

……この、伝わる反応の刺激は…くる。


「……ッ」


ジュルッ…と音が響くくらい

仁兄の舌を吸って唾液を吸い取る。

少しずつ、硬さが増すお互いのモノ。


熱い吐息を交換するように

深いキスから軽いキスを繰り返す。

次第に震えだす仁兄の身体。唇も…


「……ッ」


触れて欲しそうな表情の仁兄の瞳を見つめて、

俺の硬くなったモノを当て付ける。

俺だって触れて欲しいし、

なんならもう突っ込みたい。


……けど、震えながら困っているような表情は

俺も困るくらい嬉しい。


俺は…Sなのかな…Mなのかな…


ベットで横になって向き合ったまま、

下半身の密着をこれでもかと加速して

唇で蕩けるようなキスを交わす度、

ビクビクとした反応が伝わる。

俺は突っ込んでるような腰の動きで煽りながら

仁兄の唇を貪った。

反応を、頭がおかしくなるくらい楽しみながら。



「……ッ、触って…くれないの?

…は、やくッ……入れて欲し、いんだけど…?」


「……ね、そうしたいのは、そうしたいんだけど…

なんか、キスだけでもイケそうだし、

頭おかしくなりそう……」


「ッ、グウ…僕も、だから…

イキそう……だけど、何か、何で、こんな…

限界を……」



触りたい、触ってほしい、

思い通りにならない不自由さを通り越し…


仁兄の表情を思い切り間近で見つめる。

潤んだ瞳の上で濡れて震えるまつ毛、

赤く膨れる唇、その柔らかい感触、

熱い吐息と声……


「……ッじんにぃ、ホント、スキ…

仁兄……仁に?あいしてる…」


「…ん、……グウ……もぅッ、なに…

グウ……僕も、僕、グウがスキ……ダイスキ…

……あいしてる…」



気持ちを確認しながら、

腰を打ちつけるだけでイッてしまった。


仁兄も、震えながら、イッた…はず。



「……はぁ……仁兄、これから、だよ。

触って欲しいでしょ?

突いて欲しいでしょ?

……不自由さを知って、満足を知る…

あーー…俺達みたい…離れた時を乗り越えて

今の幸せをより感じる、みたいな…」



…全てを知るなんて無理で…

だからこそ潤んだ瞳がどれくらい俺を見て、

どれくらいイキながら揺れるか知りたくもなる。


…ずっと一緒にいたいと願っても

毎日一緒に過ごすのなんて無理で…

だからこそ今もこの腕の中にいる恋人を

これでもかって求めてしまう。



「……ッはぁ……もぅ…イッちゃった…

グウ、も、今…イッたんじゃ…」


「イッたけど……止まらない…」


「…ああッ……チョ、ッ…」


仁兄の下着の中へ両手を進め、

感度が上がりきった所を扱いたり…

その先にもクルクルと刺激を与えたりすると、

俺にしがみついて震え出す仁兄。


「…ほんと、止まらないよ、どうしよ…」


「ッ…フッ……グウが困ってる…」


…困っている俺を見て、嬉しそうな仁兄。

仁兄のMな感じもSな感じも

可愛いからホント困る……


「ん。仁兄を抱き潰しそう…

先に謝っとく。ごめんね…」



下着の奧から指を抜き、

うつ伏せにして腰を軽く浮かせ

その腰を両手でしっかり捕らえると、

緩々と腰を押し付けた。


震える腰。

ピクピクと俺を待ち構えていた奧の奧、

さっきは触れもしなかった仁兄のイイ所を

これでもかと突く。

ビクッと跳ねてベットへ崩れる仁兄の背中を眺め

それでも腰は離さずに、何度も突く……


「……ッ、ぁ、ぁ、…グッ、ウ、す、ご……」


「ッ……」



何度も何度も、求めてしまう。






ずっと一緒にいても、

いろんな事でコンディションが乱れても、


変わっていくもの、

変わらないものがある中で、


進んでいく。


流されていく。




ずっと見てきた仁兄の表情。

改めて知る仁兄の気持ち。


手やオデコの心安らぐ冷たさ、

深く繋がった時の蕩けるような熱さ。


強がって人に甘えられない俺、

甘えたくなる唯一無二な存在。



日々、流れを楽しむ。



流される事の疑問も、

抗う事の意味も、

いつもと違ったコンディションでも、


仁兄と、ここで、

受け入れて、進んで、変わりながら、変わらず、


楽しむ。





仁兄がいなくなった時、

心の隙間にどうにか夢(オリンピック出場)を作り

前へ進んで来た。


その夢は、叶っても、叶わなくても…


夢を追い続けるし、新たな夢を見つけるし、

楽しんで進む。



今日も明日も、今年も来年も、この先ずっと。





波に揺られながら、日の出と変わる空色を見て

今朝も綺麗だねって。


波の音を聴きながら、月の輝きと満ち欠けを見て

今夜も綺麗だねって。


潮風に吹かれながら、毎年繰り返し咲く花を見て

今年も綺麗だねって。



この先もずっと、仁兄と。








END


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