第7話 エピローグ




〜エピローグ〜



仁兄の部屋。

二階から眺める暗くしっとりとした海。

クーラーを止めて、窓からの風を感じる。

もうすぐ8月が終わる。



夏休み中、サーフィンで出せた成果は

高校生のみの大会で優勝、

プロを含めた大会で入賞。


…これから海外の大会にも出て

結果を出していきたい。



大会の為の遠征や海に入ってる時間以外は

殆ど仁兄の店で過ごした。

今までで一番一緒にいた夏だと思う。


開店中、手伝う時はエプロンをして動き、

暇な時は宿題やったり筋トレしたり

仁兄とふざけ合ったり

イチャイチャしたり…。


そして閉店後は2人で二階へ。



どっぷり仁兄にハマってる。


…キス…

仁兄の顔を見る度したくなるし、

したらしたでその先へ…

抑える事が出来ない。

感じてくれる仁兄が可愛いし

エロ過ぎて…自分にこんな

性欲があるとは思わなかった。





今も仁兄のシングルサイズのベットで

2人裸のまま。

今日もこのまま寝て、夜明け前帰ろうかな。

そして明朝いつも通り海に入ろう。



うつ伏せで少し逆を向いている、

仁兄の寝顔は見えない状態。


…まだ寝てないかな?

最近、首や肩がこるって言ってた。

首に手を伸ばして、肩にかけて

マッサージをする。

ただ触ってたいだけでもあるけど。



「……気持ちイイ……」


「あ、起きてた?」


「…んー…半分寝てた…

…グウが僕の体力を奪ってく……」


「そんな事言ったって…

仁兄もエロく感じて…

やってる時のねだる様な顔とか声は何…?

無意識?俺で感じてるから?

…こんなに毎日の様にがっつくのは

仁兄のせいでもあるよ。」


「………」


「仁兄?」


「うるさい!もう僕は寝た!おやすみ!」


「…え、話してるし…

あ、ゴメン…俺、心の声言い過ぎた?

…じんにーい……仁兄?じーん…」


「……」


首をさっきより強く揉んでも

仁兄の顔が見えない状態が続く。

返事もしてくれない。

これは拗ねてるな…。


「何で…?恥ずかしいの?

…ホントに…ねだる様な顔とか声…

ヤバイんだって…思い出しても

また見たい、また聞きたいって思うくらい。

…ねぇ…

こっち向いて?」



耳元まで近づいて、囁くように言ってみる。


ゆっくり動く頭。

薄暗い部屋の中、

空いてるカーテンの隙間から月灯り。


多分顔を少し赤らめて、瞳も潤んでるはず。


おでこをくっつけて見つめると、

…やっぱり瞳が潤んで光が反射した。



「…しょうがないだろ…

実際、僕は…

グウを求めちゃってるんだから…」


「うん、嬉しい。

俺だって、しょうがないでしょ…?

そんな仁兄が目の前にいたら

また求めちゃうのは。」


「……まえもって言っとくけど、

今日はもうこれ以上無理だからね?!

けど……キスするよ…?」


近くで見つめてた顔が、もっと近くに…

仁兄から、柔らかなキス。



少しして唇が離れた事で

名残惜しさを感じる俺の目の前に、

仁兄の顔じゃなくて、小さな箱。

…キレイに包装された…


「…朝、渡そうと思ったけど…

日付変わるし…

誕生日おめでとう。1つ僕に近づいたね。」


「……あ、え?あーー誕生日!

土日で明日から学校じゃないから

すっかり忘れてた!そうだ!誕生日!

しかもそのセリフ!

1つ僕に近づいたねって…

いつも仁兄言ってたやつ!」


嬉しくてつい大きな声になる。


「…はい。あげるけど…

つけなくてもいいから。」


「…何で?つけるに決まってるじゃん。」


ドキドキしながらリボンを解き…

中を見るとシンプルなリングだった。

薬指にはめたら…ちょうど…。


「ぴったりですけど。」


「…だね。」


恥ずかしそうに照れながら笑う仁兄。



「…いつからか、貰わないのが

当たり前になってたし…

昔から俺、大したのあげてないね。

…ホント貰ってばっかりでゴメン…」


「グウからは色々貰ってるから…

店も手伝って貰ってるし…」


「…それはただ仁兄といたいから。」


「そーいう事だよ。ほんと、色々貰ってる。

グウは僕に必要な完璧な人。

小さい頃から…そしてこれからも…

こうなるなんて、最初から諦めてたのに…

一緒に過ごしてくれる事がグウからのギフト

……前、僕の記憶力とか言ってたけど…

多分、僕の方がグウとの思い出、沢山だよ。

……店の名前、何でWAVEにしたか

知ってる?」


「……知らない。教えて?

何でベタなWAVEなんて名前に…」


「ふふっ…教えてあげない。」


「え?俺と関係あるの?教えてよ。」


「どうしようかなー…」



気になる。どうやって口を割らせよう。


そりゃ小さい頃から一緒で、

僕なんて昔の記憶を辿ったら全てに

仁兄がいたって言っても過言じゃない。

物心ついてすぐの事なんて、忘れてる事

そりゃあるだろう。




イタズラに微笑む仁兄。

…そんな顔で、もう……我慢してるのに…


これ以上は無理だって言われるのはわかる。

それくらい抱いた。


…とまらない。

けど今日はこのまま…



仁兄の唇は少し前の行為で

いつもより腫れてるかも。

またキスをしたくて、優しく…

頬や鼻、顔中に唇を這わせる。



仁兄の素肌に俺の素肌をすり寄せる。


こんなに幸せを感じられる。



…このまま寝よう。

身体も1つになったみたいに。

…仁兄が吐いた息を吸い込み…

俺と仁兄の呼吸が混ざり合う。



どんなに一緒にいても、

どんなにくっついても、


…当たり前に心地良い人と。






嫌いだった季節も…季節を問わず、




この先も、波の音が聴こえる ここで。






END…


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