第6話 最終回 なみ


〜〜〜波〜〜〜




pm4:00



毎日の暑さが何故か落ち着き

外を歩いても汗が出ないくらい。

さっきの都会より慣れた潮風が気持ち良い。


電車を降りて、海沿いの道。

仁兄の手を引いて先を進む。


もうお互い会話も必要無かった。



店に着いて、2階へ。

部屋に入ってすぐ

仁兄を身体ごと引き寄せた。


まだ靴も脱げてないけど、

玄関で立ったまま

仁兄の顔を両手で包み、

親指で唇を愛撫してから口付ける。


電車での衝動も抑え、

ここへ来るまでずっと我慢して…やっと。


唇と舌で味わう仁兄の唇は最高だし、

指先で感じる頬の柔らかさと滑らかさ…

舌で舌を味わう様に動かせば、

仁兄が舌とキスで感じてくれてるのか

苦しそうに漏れる吐息の熱が

リアルすぎて俺の中を溶かしていく。


繰り返し繰り返し…

ゆっくり時間をかけて舌を絡めると…

自分の中溶けて疼き出してくるのがわかる。



そして頭でどう進めるか考えたら

自分の手に力が入らないくらい

緊張してしまった。震える手。どうしよう。



おでこを合わせ、間近で見つめる。


「…仁兄、俺…慣れてないから……」


目が合い、仁兄の瞳が揺れる。


「……それは…僕もだし…

どうでもいいよ。っていうか…そんな

投げやりな意味じゃなくて……

……僕がリードしなきゃね…」


「仁兄に…

気持ち良くなって欲しいだけなんだけど…

そういう仁兄が見たいだけ…」



リードして欲しいような

して欲しく無いような…

『僕も』という言葉で

少し緊張が和らいだけど…


震える手で仁兄のシャツをめくり、

素肌に触れる為に手を入れる。


キスをしながら

脇腹から胸へ滑る様に動かすと、

身体がよじれた。俺の手から逃げるように。


キスをもっと深くして、

腰を抱き、もっと感じて欲しくて

胸の突起にも手を滑らせてみた。


「っ…!」


反応に嬉しくなる。

俺が靴を脱ぐと仁兄も脱いでくれた。


キスはやめれないし、

夢中になると手の震えは無くなった。



仁兄の身体から

力が抜けていくのがわかって

しっかり腰を抱きながら床に2人崩れた。


仁兄を上からキスで抑え込む。

唇から首へ、首から耳元へ

口付けを続けていけば、

髪の匂い…汗…香水?…仁兄の匂い…

微かに感じる匂いが嗅覚を満足させる。


さっきはシャツをめくっても見えなかった。

今度は首元までめくれば露わになる胸。

視覚も満足。


首元も舌で味わったけど、

胸も味あわせて貰う。

突起の周りを舐めてから、

その中心を口に含むと…


「ぁっっ…!」


可愛い声が響いた。味覚も聴覚も満足…。


違う…満足じゃない…

声がもっと聞きたくて唇と舌で攻め続ける。

仁兄の下半身にも手を伸ばすと、

少し硬く張り詰めてる。

撫でると余計…可愛い声が大きくなった。


ズボンや下着を

片手で下ろそうとしたけど無理で、

両手で一気に下ろすと全て露わになったと同時に、

仁兄が俺を見る目が

今まで見た事無い蕩けたような目で…


俺の理性が吹っ飛ぶ…かも…



そんな目を向けるのは

俺が初めてって思いこませて…。



俺も仁兄を見つめながら、

仁兄の下半身を舐めた。

仁兄が視線を逸らす。


「…ちょっと、待っ……恥ずかしっ…

やっぱり、リードっ……出来るほ…ど、

経験無いっ…」


少し逃げる様に動く仁兄の身体を抑え舐め上げる。

自分にも付いてる物でこんなにも興奮する。


「ほれ、今ゆー事…?煽ってりゅの…?」


「くち……っそっちこ、そ…っ今言う事…?」



経験は無いけど、

お尻を使うには少し大変な事は知ってる。

自分の指を舐めてからそこを弄ってみる。

…使うかどうか聞くべきか…?



仁兄が初めてかとかどうでもいい。

そう思う事にする。

仁兄が気持ち良くなれるなら使うし、

気持ち良くならないなら使わないし…



様子を見ながら指を入れ

少し離していたモノをまた咥え直した。


…明らかに感じてくれてる。

後ろの刺激も…感じてるよね?


「…グク…気持ちっいい…けど、

このまま僕1人で…っイキたくない…」


「うん…一緒に気持ち良くなりたい…

後ろ、もっと解せば入れていいかな…」


「…そこの油…少し塗って…

そしたら入ると思う…」




台所って言う程広くないけど、

料理してそうな調味料が並ぶ棚から

サラダ油を拝借して、

ベットへ少し移動した仁兄の元へ。



仁兄は入ると言ったけど、

実際キツキツだった。

…言う通りにしないで、

もっと解せば良かった。


ちょっとの後悔と、次こそは、って思い。

そして今からの期待…。


ゆっくり奥までどうにか入り仁兄の中の圧、

それだけで一瞬イキそうになったけど

これからだから…


「……どう?」


「……苦し…けど…気持ちいいよ…」


あ、聞かなきゃ良かったな。

気持ち良く無いって言うわけないのに。


少し不安なまま…


段々仁兄は反応していくと同時に

どこかへ逃げたそうに動く。

腰を抑えて、後ろから手を伸ばす。

シーツから刺激を受けてたみたいだけど

…手のひらで包んだ。


「……ぁっ……ぁっ……」


力を込める度、声が聞こえる。


「…ダメ…ぁっ…先…に、イっ…ちゃうっ…」


…言葉、嘘では無かったのかな。

…初めて見た。前からドクドク流れ出す。

後ろから背中にキスをする。


一緒に気持ち良くなれてる安堵で

さっきより強引に動かす。

仁兄の身体をひっくり返し、

前から抱きしめて動く。


仁兄は更に溶けていて

…素直に感じてる…



「…あ……あ……グ…ウッ…」


俺の名前を呼びながら

腕を首や背中に回し、

ねだる様なキスを何度も繰り返され、

求められながら、俺も果てた。


…1度で収まる筈は無く、

ゆっくり、

出したものはそのまま、

2人で一緒に…1つに溶けるみたいに…








「……仁兄の事、

いつから恋愛対象として見て来たか

わからない。」


何度も達し、仁兄は裸のまま

隣で力尽きて横になってる。


俺も裸のままだけど

外から見られない範囲で窓を開け、

潮風を感じながら海を眺めた。

…穏やかな波。サーフィンには適さないけど

見てる分には1番。

入りたいと思わず、落ち着いて眺めてられる。



外はやっと夕焼けの空で薄暗くなる手前、

紫やピンクが広がってくる。



「…いつからだか分からないけど

ずっと一緒にいたいと思ってたし、

ずっと好きだった。

…仁兄は身内の愛情って決めつけてたけど、

俺は愛情を分類できない…

今は、ずっと抱いてたいくらい好き。」



全然カッコよく告白仕返せなかった。


しかも行為の方が先になってしまった。



「…グウとは…自分の一部みたいに

距離が近過ぎて…

けどキスとか我慢出来なくて。

僕も分類出来てなかったし……

いつからだかわからないけど、

前から恋愛対象だと思ってた。」


「……一緒…かな…

あ、ねぇ、あの箱、

俺が前貰ったプレゼントと一緒……

……何でもない。」


3年前に貰ったピアス、ずっと付けてる。

同じ包装の箱が棚の奥に見えて

少し嬉しくなって話したけど…

あんなの、他の誰かと

何か意味がある可能性が高い…

別に話題にするほどの物じゃない…


視線をまた空に移した。



「…ピアス、ずっと付けてくれてるね。

失くさないで….凄い。

あの箱も、実はピアスと一緒に

渡すつもりだったんだ。

中見てみようか?錆びてたりして…」


裸のまま、鈍い動きで箱を手にし

包装を開け中身を出した。

新品の様な輝きで光る

シンプルなネックレス。


「……いる?」


「俺に選んだやつなら当然、欲しい。」


仁兄の優しい顔が

笑い声と共に、更に優しい笑顔になる。


「…なんで俺よりくれる方が笑顔なの…

ふふっ早速つける。

…どう?貢がれてる年下彼氏だね。」


「…ああ、けど僕は

高校生にタダ働きさせてる店主だけどね。」


「……いつでも手伝うよ。

けど…仁兄に見合う男にならなきゃ。

大会でどれだけ優勝できるか…

大学にもキチンと通って…

サーフィンと両立できる仕事を探す。」


「…戻って来るって言ってくれたら

ここで待ってるよ。」


「俺は何処にも行かない。

大学通っても、ここで海に入るし、

毎日仁兄に会う。」


「…毎日はいいよ…」


ベットに座る仁兄と笑顔で会話しながら

キスをする為に、距離を詰める。


俺の髪が後ろからの風で

仁兄の顔に当たり、仁兄は目を閉じた。

俺とのキスで暫く…まだ目は閉じたまま。









大会の終盤。


得点の高い優勝候補の1人と、

俺とで同時に海に入る。


どれだけ彼より点数が取れるか。

同じじゃ優勝出来ない。

彼よりも良い波を選びたいけど、

タイミングにもよる。

俺の技が出せる波であればいい。

出来る限りの技で、点数を取れれば勝てる。



会場のアナウンスが最後に

俺の名前と点数を発表すると、

全体から歓声と拍手が俺に向けられる。

手を挙げ、頭をさげ、胸に手を当てる。


良かった。

とりあえず、この夏の第1目標が達成できた。


しかも、俺より俺のサーフィンを信じて、

俺より喜んでくれる人が近くにいてくれる。



「グウっ!!おめでとう!!

すごいっ!お前やっぱりすごい!」


俺に駆け寄って来た仁兄。

俺より笑顔だし、喜んでくれる。


「ありがと。

…まさか泣いて無いよね?

そのサングラスはモデルだから?」


「そう。写真撮られないようにね!

あ、写メ!テッテミミーに送らないと!」


「え?それこそ何か使われそうじゃない?」


「…だね。じゃあ送らない!けど写真!」



はしゃぐ仁兄を見て俺も嬉しくなる。



…これから目標は達成出来ないかも。

プロに混じって戦う大会で優勝する事、

どれだけ大変な事か分かってる。



来年も今より調子良いとは限らない。


けど仁兄は信じてくれる。


だから自信を持って

夢を追いかけて…努力できる。


恥ずかしくない。



オリンピック。

出れても、出れなくても。




これからは、ずっと仁兄と一緒。












12年前



「ジイ!なみたのしい?」


父と海から上がって、

砂浜のグウの所へ戻った。


「ああ、波、楽しいよ。

波に乗るのが面白いんだよ。

簡単には立てないんだよ?危ないし。」


夏の日。お母さん達も遊びに来てる側で、

僕とグウのお父さんも休んでる。


「ぼくものりたい!」


「うん、お父さんに聞いてみよ。

僕が教えてあげる。

その代わり、ジイじゃなくてジンニイ!」


「じぃー!」


「仁兄!」


「……じんに…」


チュッ。


「じんにい!」


可愛すぎてグウの頬にキスをした。


「じんにぃ!おとなになっても

この、おみせさんごっこのつづきしたい!」


「あー、砂コーヒーの店ね。

いいよー、多分グウがしないと思うけど…

お店の名前は何にしよーかー?」


「なみ!じんにぃがすきな、なみ!」


「なみねー、なみってねー、英語で

ウェーブっていうんだよー」


「ウェーブー!」



砂浜で砂遊び。

何をして遊んでも楽しかった日々。



僕の1番古い


…2人の夏の思い出。







END




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