第6話 部屋
夜遅く帰宅後の部屋で、何度もLINEをアクティブにしたり電源を落とすのを繰り返していた。課題の能率が上がらず、スマホをベッドに投げた。結局、それを追うように自分もベッドに倒れる。
基本的にグループLINEも既読専門の俺が、グループLINEからエマのアカウントをタップするか悩んでいた。
「マフラーのお礼なんかでLINE繋ぐのは今さらおかしいよな」
もう距離を置こうと決めているエマを引き留める手段が無いか考えている。受験でそれどころでは無い時期なのに。
三年の引退試合になった大会の翌週、打ち上げパーティーで完全に部活からの卒業となった、あの日。当たり前みたいに俺の隣を確保しつつ、マネージャーとしてパーティーの仕切りをしていたエマ。
「タイチセンパイ、明日からもう部員じゃないですよね? 解禁って思ってもいいですか? 」
そんな事を言っていた気がする。
「そうだな。お前はまだ一年あるか。世話になったな」
思えば数ヶ月前から拗れていた。エマからの問いの意味を理解してなかった。通い始めたばかりの予備校の夏期講習の予定ばかり気になって、かなり適当に返事をしていた。
何のことを言ってるのか分かりにくいのもどうかと思うけど。
少なくとも卒業まではズルズルとエマの彼ピごっこが続くんだと思っていた。少しずつクラスメイト達の進路が決まって空気が変わっているのに、エマだけが変わらず寄ってくるってなぜ思っていたんだか。彼ピごっこポジションにあぐらをかき過ぎていた。
ベッドに転がったままエマからのマフラーを手に取ると、太い毛糸で縄編み模様が組まれてボリュームがある。タグが付いてない。
「お守りなんて寄越して未練持たせるとか、そういうのではないよな。下手したら、三年元部員全員に用意しかねないのがエマだけど……」
大きく息を吐いてベッドから起き上がりマフラーを首に巻いて、机に向かう。
失恋した流れで、エマに新しい本物の彼ピを見せられて卒業するなんて真っ平ごめんだ。
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