第2話 「先生」

朝になると、彰は一人で学校へ行く準備をする。

父が用意してくたコンビニのパンを齧りながら、

着替える。

鉄夫は、どんなに二日酔いでも、朝まで、「仕事」をしていても、

玄関に行く、彰に気づくことが出来る。

そして、必ず、起き上がり玄関から見送る。

「いってらっしゃい」

「うん、行ってきます」彰は無表情で返事をする。




彰が、学校へ行くと、担任の森山先生が校門へ立っている。

「おはよう」と先生が言うと、

彰も目は合わせることなく、「おはようございます」と返事を返す。



森山先生は、独身で38歳で、元バレー部という情報しか、

彰は知らない。

好きでもなく、嫌いでもなく、宿題をしてこないと怒られる。

程度の関りだった。


放課後、彰は帰り道中、忘れ物をした事に気づいて、学校へ戻った。

クラスへ入ろうとすると、森山先生と誰かの保護者が話している。

「陽介が学校へ行かないと言い出したのは、先生のせいでもあるんです。

先生は宿題をしてこないと、皆の前で怒ると聞いてますが、

何度も言ってますように、うちは受験も控えており、6年生の勉強など、

とっくに終えていてるんです、今は高校生レベルで、宿題などする時間ないんですよ?」

「しかし、小学校の勉強というのは、復習も踏まえて、矢津田君だけ、宿題をしなくていいという指導は出来ないんですよ」と先生は反論した。

彰は、廊下でそのやり取りを聞いていた。


少し、口調が厳しくなる保護者に、先生は黙って聞いていた。

彰が、教室へ入った。

「すみません・・・」

「どうした?」と森山先生は言った。

「忘れ物をして」

「そうか、入りなさい」


彰が入ると、保護者は黙った。

シーンとした3人だけの教室で、彰は自分の机から筆箱を取り出し、

教室を出ようとした。

森山先生が、近づき、彰の頭を撫でて、笑った。

「また、明日ね」

その笑顔は、少し、引きつっているようにも見えた。


家へ帰ると、

鉄夫は、いつものように、タンクトップと、パンツ一丁で台所へ立っていた。

「お帰り」と無愛想に言う。

彰も、「ただいま」と無愛想に答える。



「お前、牡蠣食べれたか?昨日、ママに貰ってよ、どうすっぺか。

牡蠣フライは材料ねーし、さて、どうしましょう」

父が何者なのか、彰は考えたことがない。

東北弁話したり、時には大阪弁、そしてお姉言葉を交じり合わせて、話すとこも

何も違和感はなかった。







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