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「――死ぬかと思った。想像してたよりずっと大変だな」
遠くでかすかに男の声が聞こえる。
耳に水が詰まっているのか、声は途切れ途切れにしか聞こえず、身体は重い。
「そろそろ――が救急車に――を運んで戻ってくる頃だろう。こちらも早く撤収しよう」
「ああ、わかった」
二人の男の会話が途切れる。
オレは薄く目を開けた。
夜空と花火の音が、意識をどんどん覚醒へと近づける。
だがまだ近くにいる男の顔はわからなかった。
「心配すんな、あの子は無事だ。今、渡……仲間が救急車に連れて行ってくれた。よく頑張ったな。自画自賛していいぞ」
男はどこか人を不愉快にさせる声だった。
それは七年前に出会った自称父に似ている。
「そのご褒美ってわけでもないが、色々と手回しはしておいた。それとこいつは豆知識だが、田辺のばあちゃんはカステラが好きだ。覚えておくといい」
「それは聞こえているのか?」
不愉快な声にかぶせるように、どこか聞き覚えのある落ち着いた声が聞こえる。
「聞こえてるさ。オレは経験済みだ」
「たしかにそうだったな。では合流して戻ろう」
「ああ。じゃあ、もうちょっと頑張れよ」
足音が遠のいていく。
まだ、オレの意識はもうろうとしていた。
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