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0697:布団からベッドへの大きな一歩
休日の、本格的に混み出す少し前の時間。僕たちは窓際の、日の光が差し込む暖かそうな席に座った。何を食べようかと迷うのはいつも僕の方で、彼女はメニューをパラパラめくり、ものの数分で決めてしまう。
注文を終えると、彼女は手首につけていたヘアゴムをはずし、髪を後ろで1本に束ねた。食事の時は髪を結ぶ、というのが彼女のポリシーだ。
ゆらゆら揺れるイヤリングがよく見える。お気に入りなのか、何度か見たことがある物だ。僕がプレゼントしたアクセサリーを身に付けている姿はほとんど見たことがないけれど。
彼女から窓へと視線を移そうとして、僕は、あいててて、と声を出し首をさする仕草をする。
彼女が窓から僕へ視線を移した。
「昨日は腕が痛かったんだけど、今日は首が痛くて。どうしたんだろう?」
僕の言葉を聞いた彼女は、なんだそんなことか、と言いたげな顔をして、また窓へと視線を戻した。
「どう、って。寝違えたとかじゃないの?」
「そうなのかな。これが毎日続くのは嫌だなぁ」
彼女はあまり興味がなさそうに、それでも、僕のぼやきに答えを返してくれる。
「布団買い換えたら?」
「いや、でも、次はベッドにしようかなぁなんて思ってて……」
僕は彼女の反応を窺う。
「そうなんだ。私ずっとベッドだけど、ベッド良いよ。食べたら見に行ってみる?」
「いや、でも、もしかしたら近々引っ越すかもしれないし……」
「引っ越す!? 聞いてない。いつ? どこに?」
真っ直ぐに僕を見て問い詰める彼女に、自分で仕掛けておきながら、僕はどぎまぎとしてしまったが、今だ言え言え言っちまえ、と自分を鼓舞する。
「いや、あの、引っ越すっていうか、その……」
一緒に……
一緒に暮らさないか?
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