NEW WORLD その1

「あ! お父様!」


 俺に気がついたフリテリナが、笑顔を浮かべながら飛んで来た。


 ……そう


 文字通り「飛んで」来たんだ。

 フリテリナの背には、純白の翼が出現していて、それで飛翔していた。

 その翼を使って飛翔しているフリテリナの周囲に村のみんなが集まっていたみたいなんだよな。


「おいおいフリテリナ。お前飛べるようになったのか?」

「はい! きっとお母様に似たのですわ」

 

 俺に抱きつき、嬉しそうに頬ずりしているフリテリナ。

 言われてみれば、フリテリナの背の羽根って、エカテリナが時々使っている飛翔スキルのヤツとそっくりだ。


「ふ、フリテリナ様すごいです! 子供キャラは両親のスキルをいくつか継承出来るのですが、その中でもレアスキルを継承していたなんて!」

「さすが、フリフリ村長様とエカテリナ様のお子様だな!」


 なんか、村のみんなも口々に歓喜の声をあげてくれているんだけど……


「ホントにすごいなフリテリナ。パパも感動したよ」


 そう言って頭を撫でると、フリテリナは少し恥ずかしそうに俯きながら頬を赤くしていました。

 なんか……いいな、こういうのって。

 まさに家族って感じがして……


 リアルの方でも、小鳥遊との間にそのうち子供が出来て……


 って、俺ってばどんだけ先の事を考えているんだ? おい。

 なんか照れくさくなって、エカテリナへ視線を向けると。


「……旦那様と娘のスキンシップ……と、尊すぎるんだから……」


 そんな事をブツブツ呟きながら、俺とフリテリナの事を見つめているエカテリナ。

 その目には感涙がたまっていて……って、おいおいエカテリナ、俺以上に感動してるじゃないか……


 そんな会話を交わしていると、


「フリテリナちゃんが継承スキルを発動したみたいですね、おめでとうございます!」


 ファムさんが拍手をしながら歩み寄ってきた。


「子供が出来ると、両親が所有しているスキルを継承出来るとはいえ、まさかレアスキルの飛翔を継承しているとは、私もびっくりです」

「いやぁ、俺もびっくりですけど、まぁ、母親が超優秀ですからねぇ」


 ファムさんの言葉に、思わず笑顔を浮かべる俺。

 すると、そんな俺の腕をエカテリナがガッシと掴んだ。


「そんな事ないんだからね! 旦那様の遺伝子が素晴らしいからこそ、私のレアスキルが継承されたんだからね!」

「あ、あぁ、そ、そう言ってもらえると嬉しいけど……」


 興奮しているのか、息を荒くしながら俺の腕を激しく振り回すエカテリナ。

 そのせいで、俺はまともに言葉を発することが出来なくなってしまい……


「ママ! パパが死んじゃいます!」


 クーリが慌てて駆け寄ってくれたおかげで、どうにか一命を取り留めることが出来た次第で……

 振り回される度に、HPゲージがすさまじい勢いで減ってたんだよな……っていうか、エカテリナってばどんだけ強いんだよ、ホント……


◇◇


 フリテリナが、飛翔スキルを発動したわけなんだけど、クーリはまだ何も発動していなかった。

 リアルの世界でも、子供の成長には個人差があるし、2人とも俺とエカテリナの大事な子供なのには変わりないしな。


 そんな子供達の相手をした俺は、


「さて、まずはアンテナショップの様子でも見に行くか」


 と、思っていたんだが、


「お父様! お時間がありましたら森に遊びに行きたいのですが……」


 フリテリナが、上目使いで俺の腕を引っ張ってきた。

 なんか、その上目使いの感じがエカテリナそっくりになってきていて、思わずドキッとしてしまったんだけど……こういったところもリアルに引き継がれているってことなのかもしれないな。


「そうだな、たまにはそういうのもいいかもな。エカテリナはどうする?」

「新しいイベントが始まっているけど、旦那様がどうしてもって言うのなら、同行してもいいんだからね!」


 口調こそツンデレなんだけど、フリテリナと同じように俺の腕を引っ張りながら上目使いをしているエカテリナ……ちょっと言葉と行動が一致していないんだが、それがまた可愛いというか、なんというか……


「そういえば、今日からだったっけ新しいイベントって」

「『レアモンスター大襲来』なんだからね! 今までのイベントに登場した強豪モンスターをいかにたくさん倒せるか競うイベントなんだから!」

「そんなイベントだったら、早めに参加しないとランキングにのれないんじゃないのか?」

「今回のイベントは、モンスターをただ倒せばいいってわけじゃないんだからね。レアスキルやレアアイテムを使用して討伐するとスキルポイントが加算されるし、モンスターの弱点にクリティカルな武具を仕様すればボーナスポイントが加算されるし、同じモンスターを連続で倒していくとコンボボーナスが加算されるし……といった具合で、単純にモンスターを狩るだけじゃポイントが伸びない仕様になっているんだから、少し後から参加しても十分挽回出来るんだからね!」


 俺の言葉に、ドヤ顔で応えるエカテリナなんだけど……エカテリナはレアなスキルや武具をたくさん所持しているわけだし、確かに遅れて参加しても問題なさそうな気がする。


 ……あ、でも……


 今までのイベントに登場したモンスターの弱点にあった武具となると……


 メタポンタ村のアンテナショップで販売している武具って、


 ドラゴンに有効なエルフ族の武具

 アンデッド系モンスターに有効なリザード族の武具


 といった具合に、今までのイベントの攻略に有効な武具を扱っているわけで……今まで以上に店が混雑している気がしないでもないというか……


「ま、まぁ、アンテナショップの様子はまた後で見にいくとして……とりあえず森に散歩に行ってみるとするか」


 俺がそう言うと、


「その言葉、お待ちしておりました!」


 俺の家の方からそんな声が聞こえてきた。

 そちらへ視線を向けると、俺の家の扉をバン!と開け放ち、ゴーレムメイドのゴーメが俺に向かって駆けて来た。

 その後方には5人のゴーレム狸達が付き従っているんだけど、その頭上に、


『ロックタートルと森のお散歩イベント』


 って書かれたウインドウが表示されているんだけど……


 

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