なんか、村が賑わっていて…… その3
コイントス
俺が表で、ザミナスが裏。
結果は、
「表です!」
自分の手の甲のコインを確認したテテの言葉に、思わずガッツポーズ……をしそうになってしまった俺なんだけど、そもそもおまけを貰う・貰わないが発端だっただけに、ここは我慢して……
「さっすがパパ! すごいベア!」
「見事じゃ! 妾が選んだ主殿だけのことはあるのぉ!」
って、そんな俺の気持ちを無視するかのように、俺の後方でバンザイをしているポロッカとラミコ。
ま、まぁ……なんていうか、2人とも悪気はないとはいえ……
「ふ、2人とも、ちょっと落ち着いて……」
って、勝負に勝った僕が、申し訳なさそうな表情を浮かべながらポロッカとラミコをなだめる羽目になってしまっていたわけです、はい。
そんな俺の様子を、苦笑しながら見つめているザミナス。
「しょうがない……これも約束だから、品物は引っ込めるけど、その代わりに何か準備させてもらうことにするよ。この村のためになることなら問題ないだろう?」
「そ、そうだね、そういったお礼ならありがたいかな」
ザミナスとそんな約束を取り交わした俺は、受け取った交易品をラミコが引いて来た荷車に載せて、その場を立ち去っていった。
そんなザミナスをはじめとしたリザード族のみんなんだけど……俺との交易が終了すると、
「よし、じゃあいつものお祈りに行くぞ!」
「「「おー!」」」
そんなかけ声を上げながら、村の一角へ移動していった。
その一角っていうのが……まぁ、その……俺の家に併設されているリサナ神様の神殿だったんだけどね。
ザミナスを先頭にして神殿に入っていった一向
神殿の奥にはお立ち台みたいなスペースが設けられていて、そこにリサナ神様が立っていた。
ちなみに……
以前は、俺の部屋とつながっていたこの神殿なんだけど、つながっていた部分に、リサナ神様が自らの魔法を駆使して壁を出現させてくれている。
そのおかげで、俺の家の中から神殿の中が見えないし、神殿の中からも俺の家の中が見えないようになっているんだ。
神殿の奥に立ち、目を閉じたまま厳かに立っているリサナ神様は、ザミナス達が入って来たことに気がつくと、
「我が使徒の皆、今日もお祈りを捧げに来てくださったのですね……心より感謝いたします」
厳(おごそ)かな口調で、そう言った。
その口調からは、つい先日まで俺が女性プレイヤー達と話をしていると、
『エカテリナさんがいない間に浮気ですの?』
と、鼻息を荒くしながら駆け寄ってきていたのがまるで嘘のようというか……このゲームの中ではNPCも成長するんだなぁ、って、感心しきりだった俺。
その光景を窓から少し眺めていた俺は、邪魔しちゃあ悪いと思って、街へ向かって出発していった。
今日は、荷車を引っ張ってくれるラミコを筆頭に、ポロッカとイースさんが同行していた。
本当なら、レジ作業が上手なファムさんにも同行してもらおうと思っていたんだけど……どういうわけか、いまだにログインしてこないんだよなぁ……
……一応NPCではあるんだけど……ファムさんの中の人って、俺の隣室に引っ越してきたばかりの古村さんなんだよね……その古村さんって、朝は確実に家にいたはずなんだけど……何しろ、素っ裸で俺の部屋を訪ねてきたぐらいだし……って、まさか、その姿を誰かに通報されて、警察に連れていかれて事情聴取をされているんじゃ……って、ま、まさかそんなはずは……ねぇ……
ちなみに、俺達の他に、荷馬車にはエナーサちゃんも同乗していた。
「なんだか申し訳ありません、私までご一緒させてもらっちゃっで……あたた。そ、それに、いつも噛みまくっていてもうしわけありましぇん……あいたたた……」
相変わらず、恥ずかしそうにうつむきながら話しているエナーサちゃんなんだけど……これまた相変わらず噛みまくっていて、口元を何度も手で押さえながら言葉を続けていた。
そんなエナーサちゃんに、笑顔を向ける俺。
「なぁに、旅は道連れともいうし、気にするこたぁないよ。それに、言葉遣いも気にしなくていいって」
「ほ、本当でしゅ? ……あいたた……こ、こんなに噛みまくってたらイラつかれませんでしゅか? ……あぁ、もう、また……」
「言葉遣いに関しては、むしろ気にしすぎだって。少なくとも俺は別に気にすることはないから、遠慮しなくていいからね」
俺の言葉に、ぱぁっと笑顔を輝かせる早苗ちゃん。
「そ、そんな事を、本気でそう言ってくださる方ははじめてでしゅ……あたた」
相変わらず噛みまくっている早苗ちゃんなんだけど……俺の言葉を聞いたエナーサちゃんは、本当に嬉しそうに、その顔に笑顔を浮かべていた。
「……こんなに素敵な言葉をかけてくれりゅ、なんて……あぁ、あのお方とフリフリさんが同じ人だったら最高でしゅ、のに……あいたた」
「うん? 何か言ったかい?」
「い、いえいえ、何でもありませんでしゅ……あたた」
小声で何か言っていたエナーサちゃんなんだけど、俺が聞き返すと、顔を真っ赤にしながら首を左右に振りまくっていたわけで……まぁ、本人的には話したくないみたいだし……この話題に関してはここまでにしておくとしよう。
◇◇
街の裏街道にある俺の店の前には、今日も開店待ちをしているプレイヤーの皆さんがずらっと列を成していた。
これも、全ては俺がリザード族との交易で入手したリザード族の武具を購入するためなんだ。
昨日までは、1日の交易数が少ないせいもあって、あっという間に品切れになっていたんだけど、今回はメタポンタ村がレベルアップしたおかげで交易量が増えたもんだから、
「さぁ、今日は昨日までの倍近く販売することが出来るからな」
開店準備をしながら、窓の向こうれ開店待ちの列を成しているみんなに声をかけていったんだけど、
「うぉぉ! 今日こそ購入するぞ!」
「何よ! 私の方が先なんだからね!」
「前のみんな、買い占めは駄目だからな」
みんな嬉しそうに歓声を上げながら、互いにあれこれ会話を交わしていた。
その嬉しそうな笑顔を見ていると、俺まで笑顔になっていたわけで……
◇◇
確かに持参してきたリザード族の武具の数は、昨日よりもかなり多かったんだけど……店内の品物が完売するのに要した時間は昨日の三分の二くらいだったわけで……
「なんていうか……ホントにすごい人気だよなぁ」
「それはそうですよ。リザード族の武具って、今、開催されているイベントの重要アイテムなんですもの」
お店の後片付けをしながら笑顔で頷きあう俺とイースさん。
「あの……このお店の事を記事にさせてもらってもいいでしゅ、か?」
「あぁ、別にかまわないよ」
「わぁ、嬉しいでしゅ! あたたぁ……」
俺の言葉に、嬉しそうにガッツポーズをしているエナーサちゃん。
その仕草を見ていると、ごくごく普通の女の子なんだよなぁ。
「さて、今日の店の営業も終わったし……少しログイン広場を覗いてから帰るとするか」
あの広場って、プレイヤー達から課金くじのはずれNPCを買い取りしている商人達が集まっている場所があるんだ。
その近くに立って、
『NPCキャラ購入します』
って旗を掲げていると、それなりにプレイヤーが集まってくるんだよな。
そんなプレイヤーが販売にくるキャラって、課金ガチャでもはずれとされているノーマルのキャラが大半なんだけど、今までに俺が買い取らせてもらったNPCの仲間キャラのみんなは、よく働いてくれているし、あれこれ作業をすることでNPCのキャラ達のレベルまで上がっているし……なんというか、みんなすごく頑張って働いてくれているんだよね。
そんな事を考えながら、俺はイースさんと一緒に広場へ向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます