なんか、村が賑わっていて…… その2
今日は偶然にもディルセイバークエストの情報系サイトを運営しているエナーサちゃんとイースさんが同時にいるので、
「じゃあ、何かいいネタがあったら、2人で相談してどっちのサイトに掲載するか決めてくれるかい?」
二人に向かって、そう声をかけた俺。
「え、よろしいんですか? 私達で決めてしまっても」
「えぇ、かまいませんよ。俺としても、ディルセイバークエストの内政関係の情報が出回ることによって、プレイヤーのみんながモンスター討伐以外のことに興味を持ってくれるのは、むしろ嬉しいことだからね」
「そう言ってもらえると、とっても嬉しいでしゅ……あたた」
俺の言葉に、嬉しそうに笑みを浮かべているエナーサちゃんなんだけど……相変わらず噛みまくっているところは、まぁご愛敬ってことで……って、いうか……それにしてもエナーサちゃんって、なんか気になる存在なんだよな……
いや、別に若そうだとか、胸が大きいなとか、そんな事もちょっとじゃなく気にはなっているんだけど……なんだろう……笑顔を浮かべながら、恥ずかしそうにうつむく仕草とか……上目使いで話しかけてくるところとか……いつも噛みまくるところとか……
そんな事を考えたいた俺の脳裏に、一人の少女の姿が浮かんできた。
……い、いや……っていうか、なんでここで早苗ちゃんの姿が浮かんでくるんだ?
確かに早苗ちゃんってば、学生にしては胸が……うおっほん……今のはなし、うん、なしで……いくら言葉に出さないからって、学生の早苗ちゃんをそんな目で見るわけにはいかないからな、うん……
ってなわけで……いつもうつむいていて、上目使いで俺を見上げてくるところとか……スマホの中の文書で噛みまくるところとか……なんか、そう考えると、確かに類似点が多いような気が……
「って言っても……このディルセイバークエストって、全世界の何十万人もの人たちが同時にゲームをしているわけなんだし、通勤電車で顔を合わせるだけの早苗ちゃんと、こんなところで都合良く出くわすはずがないよな、うん……」
「……あの、今、私を呼びました?」
独り言よろしく呟いていた俺。
そんな俺の顔を、早苗ちゃんが怪訝そうな表情で見つめてきた。
「あ、あぁ、いや……何でも無いよ、ただの独り言だから……」
「え? でも、今、早苗って……私、本名がさなもがががが……」
エナーサちゃんの口を、イースさんが横からそっと抑えた。
「駄目よ、エナーサちゃん。ゲーム内での会話は、結構離れたところからでもログを取ることが出来るんだから、リアル関係の発言は御法度よ」
イースさんに笑顔で諭されたエナーサちゃんは、
「そうでした。ごめんなさい」
申し訳なさそうに、深々と一礼していた。
……しかし、だ……どうやらエナーサちゃんのリアルネームも「さなえ」って言うのは間違いなさそうだけど……いや、なんていうか……何十万人もプレーしていれば、同じ名前の人が複数いてもおかしくないもんな、うん。
そう自分に言い聞かせながら、俺は、情報交換をはじめたイースさんとエナーサちゃんへ視線を向けていた。
◇◇
村のレベルがあがったことで、メタポンタ村の中はあれこれグレードアップしていた。
畑の野菜や薬草の出来が明らかにすごくなっているし、村人の家も明らかに豪華になっていた……って、まぁ、一回り大きくなっているくらいだったんだけどね。
そんな中……ドワーフの2人「オドワ」と「アドワ」が作業を行っている小屋もなんかちょっと大きくなっていて、中から鍛冶仕事をしている音が聞こえていた。
「やぁ、2人とも調子はどうだい?」
「おぉ、フリフリ村長ではないか」
「あぁ、見ての通り絶好調じゃわい」
様子を見に、小屋の中へ入った僕に、オドワとアドワがニカッと笑顔を浮かべながら、親指をグッと突き立てた。
2人の周囲には出来上がったばかりらしい武具が並べられていたんだけど……
「ちょ!? そ、それって、ひょっとして、リザード族の武具なのかい!?」
俺が指さした先、小屋の壁に立てかけられていた武具なんだけど……間違いない、毎日リザード族が交易品として持ってきてくれているリザード族の武具と瓜二つだったんだ。
「おぉ、さすがは村長、一目でわかったか」
「あぁ、その通りじゃ。まだ、攻撃力の数値などが本物の三分の二ほどしか出せておらぬが、どうにか値段を付けて売れるくらいの品が出来上がったぞい」
「うわぁ、もうそんなになったんだ」
いや、俺が驚くのも無理はないって……だって、SSS級のアイテムであるリザード族の武具をだよ、たった1日でS級レベルの出来映えで再現しちゃったんだから。
「おぉ、あと2日もすれば、リザード族の武具に引けを取らない出来に仕上げて見せるぞい」
「あぁ、村長には、消去されかけたところを助けてもらった恩があるからの。これからも任せておけい」
アドワがそう言うと、2人は楽しそうにガハハと大声をあげて笑い声をあげた。
なんというか、頼もしいことこの上ないというか……うん、本当に頼りになる2人だよ。
「じゃあ、2人が作ってくれた武具も、早速ログインの街で販売させてもらうよ」
「おぉ、よろしく頼むぞい」
「あぁ、ワシらは、作るのは得意なのじゃが、販売するのはからっきしなもんでなぁ」
「おぉ、まぁ、そこは村長にお任せってことで」
「あぁ、それで異論はないぞい」
そう言うと、2人は再びガハハと笑いながら、僕の肩を楽しそうにバンバン叩きまくってきた。
端から見たら、仲良しドワーフ3人組って様子なんだろうな、これ。
そんな二人から武具を受け取った俺は、その足でリザード族の交易所へと出向いていった。
「あぁ、フリフリ村長さんいらっしゃい。村から交易の品が届いているよ。すぐに買っていくかい?」
交易所の中で忙しそうに動き回っていたザミナスが、俺に笑顔で話しかけてきた。
「いつもありがとう。本当に助かるよ。リザード族の村の武具ってどれもすっごく性能がいいからさ、街でも大人気なんだ」
「そう言ってもらえたら、こっちも嬉しくなるよ。さぁ、遠慮なく買い取ってくれよな」
俺の言葉に、嬉しそうに頬を緩ませているザミナス。
そんなザミナスの笑顔に釣られて、俺も笑顔を浮かべていた。
その後、ザミナスからリザード族の交易品を買い取らせてもらったんだけど……
「うん、今回もどれもすごくいい品だ。いつも本当にありがとう」
「だから、そんなに褒めたって……盾を1つサービスするくらいのことしか出来ないよ」
ザミナスってば、俺の言葉がよっぽど嬉しかったのか……買い取りをさせてもらった品物の中に、リザード族の盾をつけてくれたんだけど……これって、竜の鱗を使っているらしくてすっごく出来がよかった
「こ、こんなに出来のいい品物をおまけでもらうわけにはいかないって。きっちり代金を支払わせてもらうから」
「いやいやいや、リザード族が武具をプレゼントするなんて滅多にないことなんだから、今日のところはあきらめ受け取ってよ」
そんな感じで、リザード族の盾を間に挟んで、しばらくの間押し問答を繰り広げていた俺とザミナスなんだけど……最後はコイントスで決着を決めることにした。
……んで
「では、今回はコイントスで決めるということで……」
俺とザミナスの間に立ったコイントス係のテテが、手に持ったコインを俺とザミナスに、交互に見せてくれていた。
「アタシは異存ないよ」
「僕も、問題ありません」
そんなテテを見つめながら、同時に頷く俺とザミナス。
俺達が了承したのを確認したテテは、俺達の前でコインを親指で弾いていった。
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