こんな駄女神は嫌……なんだけど…… その3

 リサナ神様がちょくちょく村の中をウロウロするもんだから、その度にザミナス達が平伏しちゃって作業が遅延しまくったものの、どうにか2時間ほどでリザード族の交易所は出来上がった。


 ……リサナ神様が邪魔してなかったら1時間くらいで出来たかもしれないなぁ……


 そんな事を考えながらリザード族の交易所を見上げている俺。

 その建物は二階建てになっていて、


 一階が倉庫。

 二階が宿泊施設。


 そんな作りになっていた。


「フリフリ殿、ここに私達が運んで来た交易品を保管させてもらおうと思っているの。ここに担当の者を住み込ませるから、交易したい時はいつでも声をかけてちょうだい」


 俺の横に歩みよってきたザミナスさんが大きく頷きならが、俺に話しかけてきた。

 ワニの頭の被り物を被っているせいで表情まではわからないんだけど、声の様子からして交易所が出来上がったことで喜んでいるみたいだ。


「そうですね、では早速今日持ってこられた品物を買い取らせて頂けますか」

「あぁ、心得た」


 ザミナスさんはそう言うと、俺に書類を手渡した。

 その書類の中には、ザミナスさん達がリザード族の村から運んで来た交易品の一覧が書き込まれていた。


 例の、水の中でも窒息判定がでなくなる『リザード族の防具』……そう、女性キャラが装着すると露出度の高い水着姿になってしまうっていうアレはもちろんのこと、それ以外にも、リザード族の銛(もり)や、リザード族の投網といった、川や湖で魚を捕るための道具的なアイテムが、リストの中に多数並んでいた。


 リストの横にアイテムのランクが記載されていたんだけど……


「……すごいな……全部最高ランクのS級だ……」

「あぁ、我らリザード族の村で作成したアイテムはどれも最高級の品だからな」


 俺の言葉を聞いたザミナスさんは、胸を張りながら嬉しそうな声をあげた。

 ……おそらくだけど、ワニの頭の被り物の下の素顔は、ドヤ顔を浮かべているんじゃないかな。


 ちなみに……リストには取引価格も明記されていたんだけど……多分、リザード族の皆さん的にはとても良心的な値段設定にしてくれているとは思うんだけど……そこはやっぱりS級アイテムだけあって、1つ1つが結構な値段設定になっていた、


 ……まいったな……この間回復ポーションを販売したお金があるとはいえ、全然足りないぞ

 

 仕方なく、リストの中から所持金で購入出来る品物だけを購入させてもらおう……と、思った、その時だった。


『エカテリナさんから贈り物があります』


 軽快なサウンドと共に、俺の眼前にウインドウ立ちあがった。


「な、なんだ?」


 びっくりしながらも、点滅しているプレゼントボックスを開いてみると……


『エカテリナさんからのプレゼント ゲーム内通貨……』


 って、ちょっと待って……いち、じゅう、ひゃく、せん……って、桁をひとつずつ確認していてもなかなか確認出来ないくらいの大金が送られてきたんだけど!?

 俺が目を丸くしていると……プレゼントにメッセージが添付されているのに気がついた。

 そこには、


『今日はリザード族と交易をする日でしょ? どうせお金の準備が出来ていないだろうから、私が提供してあげるんだからね!』


 ……って……相変わらずワンパターンなツンデレ口調のメッセージなんだけど……今日が交易の日だと覚えていて、気を使ってくれたんだろうな。

 今日は新しいイベントの初日で、モンスター討伐に忙しいはずなのに……こっちにまで気を使ってくれるなんてなぁ……


 そうだな……ここは、ありがたく行為に甘えさせてもらっておいて、交易品を使って村を発展させることで恩返しさせてもらうとしよう。


 そう思った俺は、


『ありがとう、本当に助かったよ。エカテリナもイベント頑張ってな! 俺、応援してるから!』


 そう、プライベートメールを送信しておいた。

 ついでにイベントの順位を確認してみたんだけど……目下のところ、エカテリナは100位ちょっとくらいのところにいた。

 まぁ、数十万人のプレーヤーがプレイしているゲームの中の100位なんだから十分すごいとは思うんだけど、やっぱり上には上がいるってことなのかな。

 ……いや、それよりも……村の周囲の害獣駆除とか頑張ってくれているだけに、それが原因なのかも……う~ん……それだと、なんか申し訳ないよなぁ……


◇◇


 色んな事を考えながら、エカテリナからの資金提供を受けた俺は、ザミナスさん達が運んで来た交易品を全て買い取らせてもらった。


「いいのですか? 無理しなくてもいいのですよ? 少しずつ買い取って、それを販売して、その利益でまた買い取ってくれても」

「いえいえ、妻のおかげで今回の資金はどうにかなりましたので」


 ザミナスさんに笑顔で答える俺。

 早速品物を、俺の家の倉庫に移してもらったんだけど……


「あれ? 倉庫の容量が増えてる?」


 そうなんだ……なぜか、倉庫の容量が以前の10倍近くに増えていたんだ。

 首をかしげながらウインドウを確認していると……


『リサナ神殿が併設されたため倉庫の容量が追加されました』


 って表記があった……っていうか、リサナ神殿が併設されて、良いこともあったんだな……


「さて、買い取った品物も全部倉庫に詰め込めたわけだし……早速街に売りに行ってみるか」


 交易所が予想より早く出来たおかげで、ログアウトまでにはまだ時間があるしな。

 そう思った俺は、早速売りに行く品物を選択しはじめた。


 以前、街で回復ポーションを販売したことがあるし、まぁ、なんとかなるだろう。


 そんな事を考えながらリストをチェックしていると、


「フリフリ殿、ちょっといいか?」


 品物を運び終えたばかりのザミナスさんが俺に話しかけてきた。


「はい、大丈夫ですよ」

「交易所も出来たし、持って来た品物も全部買い取ってもらったし、私達は一度リザード族の村に戻ろうと思っているんだけど……5人くらい、この村に移住させてもらうわけにはいかないかしら?」

「移住ですか?」

「えぇ、交易所が出来た以上、誰かが管理をしないといけないでしょう? それをフリフリ殿の村の人にお願いするのも申し訳ないし……それに、この村にリサナ神殿があることがわかったもんだから、今日、作業にやって来た者達が、この村に残りたいって言ってるのよ」

「あぁ、そういうことでしたら……」


 多分だけど……これもリザード族の交易関連のイベントの1つなんだろう。

 そう思った俺は、笑顔で頷いた。

 すると、


「うん、快諾してくれてありがとう! じゃあ、アタシと、あと4人がこれからお世話になるわね」


 嬉しそうな声を上げながら、ザミナスさんが俺の手を握ってきたんだけど……ちょっと待って、この村に残りたいって言っている数人の一人が、ザミナスさん自身ですか!?


 俺は、苦笑しながらザミナスさんの手を握り返すことしか出来なかった。


 パンパカパ~ン


「な、なんだ!?」


 その時、俺の周囲でファンファーレが鳴り響き、目の前に、


『メタポンタ村のLvが3になりました』


 って文字が浮かびあがった。


「え? 村のレベルがあがったの?」


 村のレベルが2になって以降なかなかあがらないなぁ、とは思っていたんだけど……このタイミングであがったってことはザミナスさん達5人がメタポンタ村に移住したおかげで条件をクリアしたってことなんだろうな。

 Lv2になった時は「人口が16人以上」っていうのが条件だったから、今回は「人口が20人以上」っていうのが条件だったのかもしれないな。

 ザミナスさん達の移住を受け入れたことで、メタポンタ村の人口が21人になったわけだし。


 Lv3になったおかげで、村の居住可能人数が一気に100人にまで増えていた。

 あと、村の周囲を開拓して村を広げることも出来るらしい。


 レベルアップ内容を確認していると、俺の周囲に村人達が集まってきた。


「フリフリ村長さん、村のレベルアップおめでとうございます!」

「フリフリ村長さん、さすがですね!」

「フリフリ村長さん、おめでとうございます!」


 みんなは、俺の周囲を取り囲むと口々にお祝いを述べながら笑顔で拍手をしはじめた。

 ポロッカとグリン、ラミコに加えて、先ほど村人になったばかりのザミナスさん達もその輪に加わっていた。


 なんていうか……こうして村が発展して、それをみんなにお祝いしてもらえるのって、やっぱり嬉しいもんだな。


 みんなに、お礼を言いながら、俺はそんな事を考えていた。

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