成長と、新人と、相変わらずな、ってなわけで その3
森へ野菜や薬草の苗を探しに来た俺。
同行したのは、ポロッカとグリン、それに仲間になったばかりのラミコの3人。
俺とポロッカが調査スキルを習得していることもあって見つけやすかったってのもあるんだけど、
「パパのためにたくさん収穫するベア!」
「……ま、負けない!」
「ちょっと! 妾だって主殿の役にたちたいんだから!」
って、3人がすっごく競い合ったもんだから、あっという間にみんなで背負ってきたカゴの中が一杯になってしまった。
みんな僕の役に立とうとしてくれたみたいなんだけど、やっぱり主従関係って奴なのかな、これって……それにしては、帰りの道中、みんながやけに密着してきていたような気がしないでもないんだけど……
「しかしあれだな……村のみんなも採取に来ているのに、これだけの数を採取出来るってことは、一定時間が経過したら再生しているってことなんだろうな」
こういったあたりは、さすがはゲームの世界だなぁ。
でもまぁ、短いIN時間で内政プレーを楽しんでいる俺にとっては、すごくありがたい。
村に戻った俺達は、まずは採取してきた苗を俺の家の隣の畑へ植えていった。
昨日植えた野菜はすでに収穫可能状態になっていたので、ファムがすべて刈り取って倉庫に入れてくれていたので、すぐに苗を植える作業に取りかかることが出来た。
ファムにお礼を言いたかったんだけど……どうやら、まだ戻ってきていないみたいだ。
「……メールを送ろうにも、NPC相手に送るにはどうしたら……」
……ん? まてよ……そういえば、「NS/Furumura」で届いていたメールって、ファムの中の人のメアドだったよな。
その事を思い出した俺は、早速メールウインドウを表示させた。
NS/Furumuraから届いたメールを開き、返信ボタンを押し、内容を書き換えて、早速返信を……
『この宛名へのメール送信は運営関係者以外出来ません』
「は?」
送られてきたメールを利用してメールを送信しようとしたら、なんかこんなウインドウが表示された。
おかしいな……この間間違いメールかと思って『送信先間違ってません?』ってメールを返信した時にはこんなウインドウ出なかったはずなんだけど……そういえば、ログアウトしているファムからも、一切メールが届いていないし……ついさっきまで何度かメールを送って来ていたんだから、何か送ってきていてもおかしくない気がするんだけど……まさか、プレイヤーに正体をばらしたことが問題になったとか……うん、まぁ、そのあたりの事はゲーム会社の都合なわけなんで、あまり深く考えないことにしよう。
そんなわけで、俺はポロッカとグリン、それにラミコの3人と一緒に野菜や薬草の苗を植えていった。
収穫した数が数だったもんだから、俺の畑いっぱいに植えても結構余ったので、
「みんな、よかったら使ってください」
村人のみんなに苗をわけてあげたんだけど、
「いえいえ、自分達の畑に植える分くらい自分で採取してきますから」
「フリフリ村長さんから頂くなんて恐れ多いです」
みんな、すっごく恐縮してなかなか受け取ってくれなかった。
でも、
「俺もまた取りに行きますし、もらってもらった方が嬉しいんだけどな」
って、重ねてお願いすると、
「そうですか……そこまで言ってくださるのでしたら」
「遠慮なく頂きます」
ようやく、笑顔で苗を受け取ってくれた。
みんなの笑顔は、ゲームで設定されているNPCのモーションだってわかってはいるんだけど、みんなが笑顔になってくれると、俺もすごく嬉しかった。
「さて……今日は苗を植え終わったところでログアウトかな、と思っていたんだけど……ポロッカ達のおかげで作業がずいぶん早く終わったから、時間が結構残っているな」
ウインドウの端に表示されているリアルタイムの時計を確認した俺は、腕組をして考えを巡らせた。
エカテリナは、狩り場で高レベルのモンスターを狩りまくっている最中みたいだし……
イースさんは、確か今日も残業だったはずだからIN時間はかなり遅い気がするし……
ファムさんは……いまだにINしてこないってことは何かあったのかもしれないし……
「……村のみんなが収穫した野菜や薬草が結構溜まっているから、それを調理したり生成してポーションにしてみるか」
「あの、フリフリ村長さん、ちょっとよろしいでしょうか」
俺に話しかけてきたのは、テテだった。
街で買い取った仲間キャラの1人で、村人達のリーダー的存在になっている女の子だ。
「どうかしたのかい、テテ」
「はい、フリフリ村長さんにお願いがございまして……可能でしたら、私達に調理道具と、薬草をポーションに調合するための道具を調達しては頂けないでしょうか? そうすれば、私達が弁当やポーションを作成することが出来るようになりますので」
「へぇ、そうなんだ。それは確かにありがたいな」
今のままだと俺しか調理したり生成することが出来ないし、効率よく生成するためにもいい手かもしれない。
「わかった。じゃあ、早速街へ行って買ってくるよ」
「わぁ! ありがとうございます! これでフリフリ村長さんのためにもっと働けます!」
テテは、笑顔を浮かべながら何度も頭を下げていた。
うん、やっぱ喜んでもらえるのって嬉しいな。
◇◇
そんなわけで、街へ向かうことにした俺。
「とはいえ……街まで往復するとなると結構時間がかかるな」
そんな事を考えていると、
「主殿、こんな時に妾を頼らぬか!」
「ラミコをかい?」
「そうなのじゃ! 妾は牽引と高速移動のスキルを持っておるからの。街くらい、荷車を引っ張ってでもひとっ走りなのじゃ」
ドヤ顔で胸を張っているラミコ。
……ただ、エカテリナやら、ファムやらポロッカの大きな胸を見慣れている俺的には、かなり……
「な、なんじゃ、その『つつましい何か』を見るような目つきは!」
俺の視線を感じ取ったのか、ラミコは両腕で胸を隠すようにしながら顔を真っ赤にしていた。
うん……まぁ、間違っていないので、あえて突っ込まないことにしよう、うん。
そんなやり取りの後に、俺はラミコが引っ張る荷車に乗って街へ行くことにした。
ポロッカとグリンには、村人達が森へ行く際の護衛をお願いしておいた。
ポロッカとグリンは戦闘を得意にしているので、こういった任務の方が効率よく行える。
逆にラミコは、牽引と高速移動のスキルを持っているため、街へ行く任務に適している。
なんか、偶然とはいえ上手い具合に役割分担が出来たな。
「んじゃ、ちょっと行ってくる」
見送りに来てくれた村人達に笑顔で手を振る俺。
「主殿、じゃあ目一杯ぶっ飛ばすから、しっかり捕まっておるのじゃ!」
「あぁ、よろしく頼む」
俺の言葉に頷くと、ラミコはすさまじい速度で移動を開始した。
蛇の下半身がウネウネ動き、高速で前に前にと進んでいく。
「うわ、確かにこりゃすごい。ラミコはすごいな」
その速さに、思わず目を丸くする俺。
「まだまだなのじゃ、さぁ、もっと飛ばすのじゃ!」
俺に褒められたのが嬉しかったのか、ラミコは笑顔で更に加速していった。
俺は途中、何度も振り落とされそうになりながらも、必死に頑張って落ちるのを防いでいた。
◇◇
ラミコのおかげで、本当にあっという間に街に到着した。
「いや、ラミコ、本当に助かったよ」
「ふふん、まぁ、これくらいお安い御用なのじゃ」
俺の言葉にドヤ顔を浮かべながら胸を張っているラミコ。
ただ……全力疾走し続けたせいか、肩を上下させながら呼吸を整えているようだ。
俺は、NPCの屋台で回復ポーションを購入すると、
「さ、これを飲んで少し休んでくれ」
それをラミコに手渡した。
すると、ラミコは目を丸くした。
「ななな何をするのじゃ主殿。妾はNPCじゃぞ? 放っておけば回復するというのに、わざわざ回復ポーションを買ってくださるなぞ……」
「何言ってるんだよ。お前は確かにNPCかもしれないけど、それ以前に俺の大切な仲間じゃないか」
俺は笑顔をラミコに向けた。
「……主殿……」
すると、ラミコは俺が手渡したポーションを胸の前で握りしめながら、じっと俺を見つめてきたんだけど……
トゥンク
っていう効果音と同時に……なんかラミコの頭の上にハートが一瞬浮かんだような気がしたんだけど……
「まぁ、そういうわけだから、遠慮なく飲んでくれ」
俺は、近くにあったベンチに、ラミコと並んで座った。
俺の横で、回復ポーションを大事そうに、ゆっくり飲んでいるラミコ。
「ラミコ、大丈夫か? なんか顔が赤いような……」
「ななななんでもないのじゃ、少し休めばおさまるのじゃ」
「そうか? でも、くれぐれも無理はしないでくれよ」
「そ、そうは言われてもじゃな……今の妾は、主殿の為なら限界まで頑張れそうなのじゃが……ゴニョゴニョ」
「え? 今、なんて言った?」
「ななな何でも無いのじゃ、なんでも……」
途中、ぼそぼそ言っていた言葉が聞き取れなかったけど……まぁ、ラミコ本人が少し休めば大丈夫って言っているんだし、このままもう少し休むとするか。
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