成長と、新人と、相変わらずな、ってなわけで その2
俺に向かって暴言を吐きまくっていたポイズンラミアの女の子。
それにぶち切れて解体してしまいそうになっていたエカテリナ。
とりあえず、まずはエカテリナをどうにかこうにかなだめすかして止めることに成功した俺なんだけど……
「旦那様あそこまでして止められましたから、今回だけは大目に見てあげるけど……次にまた旦那様に生意気な口を……」
「はいはいはい! もうしないのじゃ! 絶対しないのじゃ! ラミアの神様に誓って絶対にしないのじゃ! じゃ、じゃからその絶望のオーラモーションは勘弁してほしいのじゃあああああ」
なんか……背中から不気味なオーラを発しているエカテリナなんだけど……そうか、あれって絶望のオーラモーションっていうやつなのか……あれを浴びているラミアの女の子の体力が結構がっつり削られているなぁ。
まぁ、とりあえずそれは置いとくとして……成り行きとはいえ、またモンスターが仲間になったわけなんだ。
ちなみに、このポイズンラミアもポロッカ同様SSS級の害獣だった。
んで、この農村にやってきたのもポロッカ同様、
「周囲の餌がなくなってひもじかったのじゃあ。勘弁してほしいのじゃあ」
って、涙ながらに訴えているところを見ると、おそらくエカテリナが村の周囲の害獣を今も狩りまくっているせいで、食べ物が無くなり、俺の村の畑を狙ってきたのは、まぁ明白なわけで……村の周囲の害獣は、例え全滅させても数日すると数が復活する仕様になっているらしいんだけど、エカテリナは毎日ログインすると最初に村の周囲の害獣を狩りまくることを常としているらしくて、害獣たちの数が復活する隙すら与えていないみたいなんだよな。
それに加えて、最近ではポロッカとグリンも村人の警護で、出くわした害獣を狩ってくれているので、狩り残しはほぼない状態だと思われる……うん、そりゃあ死活問題にもなるか……
「……でも、そんな状態なのに、なんでポイズンラミアの君は、エカテリナやポロッカ、グリンに退治されることなく罠にかかっていたんだい?」
「はん、そんなことも知らないのかの? これだから素人は……」
「……その口の利き方……今すぐデリート処理して……」
「ひ、ひぃぃぃごごごごめんなさいなのじゃ、ちょっと調子にのってしまってごめんなさいなのじゃあああ」
「え、エカテリナ……ポイズンラミアの彼女も反省しているみたいだから、首に剣を突きつけるのはやめてあげなって……」
俺の言葉を受けて、すっごく不満そうな表情で剣を降ろしていくエカテリナ。
ようやく、安堵した表情を浮かべたポイズンラミアの女の子は、大きく息を吐き出していた。
「……と、とにかく、助けてくれてありがとうなのじゃ……さすがは妾の主殿なのじゃ」
深々と頭を下げると、ポイズンラミアの女の子は、時折エカテリナの顔色をうかがいながら説明してくれた。
「妾や、そこにおるブラッドベアのようなS級以上のモンスターはの、プレイヤーと低確率で遭遇するように設定されておるのじゃ。まぁ、こんな田舎の場所ではよくて1体しか配置されてはおらんのじゃがの』
ん? ……ってことは、この一帯には1体しかSSS級のモンスターが存在していないみたいだけど……先日のポロッカといい、今回のポイズンラミアの女の子といい……なんか、この村の周囲でSSS級のモンスターが出過ぎな気がしないでもないんだけど……よくよく考えたら、エカテリナが、SSS級のモンスター達が食べ物に窮するレベルで広範囲にわたって害獣を狩りまくっているせいで、空腹になったSSS級のモンスター達が食べ物が豊富なこの村にやって来ている、と考えればつじつまはあうわけだ……
エカテリナのように、毎日S級以上のモンスターがたくさん出現するマップで狩りをしまくっているプレイヤーにしてみれば、狩り場として選ぶには適していないマップなんだろうけど……そこは、俺の奥さんとして、俺が村長を務めているこの村の平和を守るために、って、すっごく気合いを入れまくっているからこその行動なんだよな。
◇◇
経緯が経緯だっただけに、
『食べ物は食べさせてやるから、森に帰ってもいいんだよ?』
そう言ったところ、
『ま、まぁそうしたいのは山々なのじゃが……主殿にお仕えしておれば食いっぱぐれることはなさそうじゃし、何より、こんなに強い奥方の庇護も受けられるとあれば、ご一緒させて頂く方を選んだ方がお得なのじゃ』
そう言って、早速俺に食べ物を食べさせてほしいってねだってきた次第だった。
そんなわけで、俺の畑で収穫した野菜とポロッカとグリンが狩ったB級やC級の魔獣の肉を使ってシチューを作って食べさせてやったところ、
『美味いのじゃ! これはマジで美味いのじゃ!』
って、すごい勢いでシチューを食べまくっていったんだ。
ただ、
「ちょっと! 旦那様の手料理を独り占めしようなんて、そうはいかないんだからね!」
って、ツンデレ発言をしながら、エカテリナまで皿を俺に突き出してきたもんだから、慌てて追加を作成する羽目になってしまった。
まぁでも、アイコンをピピッと操作して作った料理とはいえ、嬉しそうに食べてもらえると、やっぱり嬉しいもんだなぁ、うん。
……しかし、ポロッカの妹分として俺の仲間になってくれるのなら、名前をつけてあげないとなぁ
「ん~……こういうの、結構苦手なんだよなぁ……」
昔、リアルで飼っていた犬も、
最初が太郎
次が次郎
その次が三郎
と、なんのひねりもない名前をつけたくらいだし……
「う~ん……さすがにラミアの女の子でラミコってわけにはいかないだろうし……」
俺が思わずそう呟いた、その時だった。
「ほう、よい名ではないか、妾はすごく気に入ったぞ、『ラミコ』」
「うぇ? い、いいのか、これで?」
「うむ、問題ない。では、妾は今後ラミコとして主殿にお仕えさせていただくのじゃ」
なんか……俺の方が申し訳なくなってしまいそうな名前に決定してしまったわけなんだけど……一応本人が気に入ってくれているので問題ない……と、言えなくもないものの、俺はかなりもやっとした気持ちになっていたわけで……
と、まぁ、そんなことがあった後……
「じゃあ、アタシは狩りに行ってくるわね」
と言ってエカテリナは山へモンスター討伐へ……
「じゃあ俺は、森へ自生している野菜や薬草を採取に行ってくるか」
「パパ、ポロッカも一緒に行くベア!」
「私もお供する!」
「なら、妾も、脆弱な主殿にご一緒してやっても……」
「……言葉遣い」
「ひぃぃぃぃ!? エカテリナ様、申し訳ないのじゃ!許してほしいのじゃ! 主殿、ぜひともご一緒させてくださいなのじゃああああ」
……と、絶望のオーラモーションを実行しているエカテリナを前にして、ビビりまくって言葉を言い直したラミコも一緒に森へ採取に行くことになった。
エカテリナは俺に向き直ると、
「じゃあ行って来るわね旦那様……べ、別に行ってらっしゃいのハグをしてほしいなんて思ってないんだからね」
腕組みをして、頬を赤らめながらそっぽを向いていたんだけど……つまり、ハグしてほしいってことなんだろう。
「わかったよエカテリナ。気を付けて行ってくるんだよ」
そう言いながら、エカテリナを抱きしめた俺。
俺の身長が低いせいで、エカテリナの腰のあたりを抱き寄せた格好になってしまっていた。
んで、俺の頭の上には、エカテリナの豊満な胸がのっかっていて……なんとも言えない感触が……
「す……すっごくやる気出た! まかせてね旦那様、めいっぱい素材をゲットしてくるから!」
そう言うと、エカテリナは顔を真っ赤にしながら駆けだしていった。
エカテリナは高速移動のスキルを持っているもんだから、あっという間にその姿が見えなくなってしまったんだけど……
「フリフリさ~ん!」
エカテリナと入れ替わるようにして俺の元へ駆け寄ってきたのは、ファムさんだった。
あぁ、そういえば……メールの内容を確認するために一度ログアウトしてたんだっけ。
……しかしまぁ、NPCのファムさんが実は運営の中の人がテストプレーで使用しているキャラだってわかっているから、そのあたりを理解することが出来ているわけだけど……やっぱりちょっと違和感があるよなぁ。
そんな事を考えている俺の前に駆け寄ってきたファムさんは、
「め、メールがですね……間違って下書きしていた方を送っていたみたいでして……こ、今度はちゃんと送っておきました!」
そう言いながらドヤ顔をしたんだけど……
「え? ……俺のメールアイコン……光ってないんだけど……メールボックスの中も確認したけど、新着メールはないみたいだなぁ」
視界の中に広がっているメールボックスの中を確認しながら首をひねる俺。
そんな俺の前で、びっくりした表情を浮かべながら飛び上がっているファムさん。
「ふぇえ!? ボクってば、また何か間違っちゃった!? ちょっともう一回確認してきます~」
なんか……ファムさんの口調というより、駅で出会った女性の口調を丸出しにしながら言葉を発したファムさんは、再びログアウトしてしまって……なんていうか、ホント落ち着きがない人だなぁ……
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