第22話 あ、宗重さんて誰かとお酒飲むんですね
宗重の説明を聞いて、戦徒達は行進中ながら空いた口が塞がらなかった。
「マジで?」
戦徒の問いに、宗重は無表情に頷いた。
「ああ、忍び達と酒を吞んでいる時に聞いた」
「宗重さん意外なところで意外な事してた!?」
「黒沢、こいつらにも教えてやってくれ」
「よかろう」
宗重の横には、いつのまにか細みの男が立っていた。
最初からそこにいたのに気付かなかったのか、今移動してきたのか、戦徒達には判別がつかない。
「私はお前らの第三小隊の忍び、黒沢黒男だ。涼宮涼香の仲間と言えば解り易い」
黒沢は鉄のような男だった。
無表情なのは宗重と似ているが、宗重と違い無感動が加わっている。
宗重は冷静で穏やかな雰囲気があるのに対して、黒沢は一切の感情を感じさせない、ただひたすらに冷たく、機械的な男だ。
「宗重が言ったように、セン帝国が数字通りの強さを発揮できない理由は三つ。夜郎自大、地方政権の高い独立性、進んでいない近代化だ」
黒沢は右手の指を三本立てて説明する。
「セン帝国は強い選民思想のせいで常に油断し慢心した状態。ろくな作戦も立てずただ兵を突っ込ませ、負けても偶然だと楽観視して改善しようとしない。もしくは指揮官や兵が無能だっただけだ、と違う部隊をまた無策に突っ込ませる。そしてセン帝国は一枚岩ではなく、地方政権がいくつも存在し、それぞれが独自の軍隊を持っている。東和は敵の情報がすぐさま全国に伝わり、幕府が全国から兵をかき集めて敵の撃退に当たる。だが、セン帝国は攻められた土地の領主がろくな報告もせず勝手に戦う。仮に報告を受けても、皇帝を含め貴族、領主達は対岸の火事も同然に傍観して負けてもその領主の無能さをあざ笑うだけだ。皇帝が出兵の勅命を出すのは、それこそ帝都が危なくなってからだろう。そして、確かに兵の数は多いが未だに銃を持たず弓矢の戦いだ」
「ここまで来ると、なにを聞いても驚けないな」
戦徒の言葉に、愛花達も同意して頷いた。
「よし、次の町が見えたぞ!」
指揮官の指示で、戦徒達は一端足を止めた。
「騎馬隊二万はそれぞれ東西に回り込み攻めろ。我々は」
指揮官達の口元に恐ろしい笑みが浮かぶ。
「いつも通りだ」
先頭に布陣した銃兵部隊が銃を構える。戦徒達を含めた全員が戦闘態勢に入る。
全員の眼が戦士のソレに変わり、得物を抜き、気を高ぶらせる。
あの町でも多くのホビット達が奴隷として酷使されているのだろう。
彼らはなにも悪くない。
この南小国群フィンガー王国で農業生活に従事し、日々の糧を得ていただけだ。
なのに、エルフはそれを許さない。
エルフではないというだけで、ホビットというだけ、エルフは彼らの全てを奪った。
誰かがやらねばならない。
誰かがやらねば、全世界の人々がエルフの奴隷となり絶望に閉ざされてしまう。
町の外に、奴隷に落とされたゴブリン達が死兵として配置されていくのが見える。
今まで解放した町のゴブリン兵達には協力を呼びかけたが、多くのゴブリンは逃げてしまった。
生まれてからずっとエルフの先兵となり、殺し合う生き方しか知らない彼らに、東和軍の呼びかけは余りに遠かった。
だが一部のゴブリンは町の復興作業に従事してくれた。
ゴブリンに虐げられた記憶の新しいホビット達と折り合いが悪い為、町の外の道の整備作業に従事するゴブリンが多いが、いつかはホビットとゴブリンが一緒に暮らせる日が来ると信じたい。
全ての国と民族が平等な段差の無い世界の為に、彼ら武士は武器を手に走った。
―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―
本作、ホビット戦争をこの22話まで読んでくれてありがとうございます。
300PV達成できたのは、まさに物理的に皆さんのおかげです。
それと以前、告知したキャッチコピーの変更についてですが
投稿時は、『ホビット武士団!大陸に挑む!』でしたが今は、『このホビットさん滅茶苦茶エルフ殺しますやん!』に変えました。
このキャッチコピーに興味を持って本作を読み始めてくれた読者が、この22話まで読んでくれていたら嬉しいです。
あと、登場人物がうじゃうじゃ多くて申し訳ないです。
これでも、できるだけ誰が誰だかわかるよう、地の分で身分を設枚しているつもりなのですが、それでもわからない、という人がいたらすいません。
誰がだれだかわからない。
それでストーリーがわからないからもういいや、
なんてことにならないよう、配慮したいです。
話は変わりますが、私はこの作品とは別に
『★闇営業とは呼ばせない 冒険者ギルドに厳しい双黒傭兵』
というファンタジー作品をカクヨムに投稿しています。
最近はあまり見なくなった、腕っぷし最強のクールでカッコイイナイスガイの傭兵が、毎回世界中のあらゆる場所でさまざまなクエストを受け、事件を解決していく作品です。
一話完結型で連続性がないので、じれったい気分もなくストレスフリーに読めると思います。
もしも興味をもっていただけましたら検索してください。
それでは、次は23話で会いましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます