第4.5話 夜明 Side A
もともと小柄で可愛らしい彼女は、小学校までは人気者だった。
絵本の中から飛び出してきたかのような容姿や、彼女の人当たりの良さに加え、ハーフという珍しさからの好奇心もあったのだろう。
しかし、中学に入ると、その容姿のせいで疎まれるようになった。
きっかけはクラスの女子が、彼女に想いを寄せる男子にフラれたことだった。
そういう時だけ、思春期の女子は無駄な結束力を見せる。
なぜか放課後に
ちょうど日陰になっているため、日傘をさす必要はない。
「この子あんたのせいでフラれたんだけど」
失恋に泣く女子を連れた、その子の友人らしき女子が沈黙を裂く。
「どうしてくれんの?」
二人目の女子がすかさず言う。
「そんなこと言われても…」
そんなことを私に言われてもどうしようもないじゃない。
「可愛い子は、好かれて当然ってこと?」
「そういうとこが気にくわないのよね」
フラれた女子は一言もしゃべらず、ただ後ろで泣いている。
(私が嫌いなら直接言えば良いのに)
そう言おうと思った時、目の前の二人が急に髪を掴む。
「痛いよ!」
「こんな髪切ってやる!」
「ねぇ、離して!」
一人に後ろから押さえられていて、小柄な彼女では抵抗すらできない。
「あんたがいなかったら、この子はフラれ無かったのよ!」
「そうよ!」
「私のせいじゃない!」
「黙れ!」
そんなやり取りをしている中でも、フラれた女子本人は何も言おうとしない。
(なんだ、私を嫌ってるのはあなた達じゃない…)
理由が欲しかっただけなのだ。
男子から人気の彼女を迫害するための理由。
(理不尽だな…)
(皆と違うってだけで好かれたり、嫌われたり…)
(だから、私は絶対にこんな人たちみたいにならないようにしよう)
抵抗を諦めたアリスの髪に、醜い嫉妬の刃が迫る。
もう少しで彼女の美しい白髪が断たれる、その間際、
「君たち!何をしているんだ!」
見回りの教師が偶然その場を発見する。
「ヤバい!」
「逃げろ!」
二人の女子は泣いている女子と、崩れ落ちたアリスを残して逃げていく。
駆けつけた教師は彼女達を追うかどうか迷っていたが、結局追わずに私たちの所に残って、泣いている女子をなだめていた。
そんなことが有った次の日から、私のいじめは始まった。
初日のような直接的な物はそれ以降無かったが、集団での無視は結構
何人か仲の良い子は話しかけようとしてくれたが、その度に他のクラスメイトが邪魔をするので、次第に無視に加わっていった。
別に失望はない、誰だっていじめられたくはないもん。
その地獄のよう日々は卒業まで続いた。
終わらない悪夢のような日々。
でも今回の悪夢は、軽い電子音と共に終わる。
目を開けると見慣れない天井。
(そうか、昨日から寮に入ってるんだった…)
大丈夫だと思っても、やっぱり不安だったんだろう。
そう思いながら、ベッドを出る。
そして、まだ可愛らしい寝息をたてているルームメイトの元に寄り、
「そろそろ起きないと遅刻するよ!」
そんな言葉と共に、1日が始まる。
(どんな高校生活になっても、一人じゃないから大丈夫だね)
枕元のスケッチブックを掲げるルームメイトを見て、優しく微笑む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます