第4話 夜明

「そろそろ起きないと遅刻するよ!」

誰かの声がする。

「ねぇ、かぐや!」

小さな手が、優しく私の体を揺らす。

そういえば昨日から寮に入ったんだった。

ゆっくりと目を開ける。

私のベッドの横で、可愛らしいルームメイトがこちらをのぞきこんでいた。

「おはよう、かぐや」

『おはよう』

微睡まどろんだ意識のまま、枕元の星や月などが描かれた夜空の模様が表紙のスケッチブックを掴んで掲げる。


かぐやのスケッチブックは2冊あり、1冊は白い表紙のスケッチブックで、もう1冊がこの夜空の模様が描かれたスケッチブックだ。

白い方は、人と話すときに書きながら使うもの。

夜空の方には、あいさつなどのよく使う言葉が書いてある。


「そっちのスケッチブックも可愛いね」

アリスが目を輝かせて言う。

『ありがとう』

かぐやはその間にもぞもぞと布団から抜け出す。

「あっ!それより早くしないと!」

「あと一時間で入学式始まっちゃうよ!」

アリスの言葉に驚いて時計を見ると、時計の針はちょうど午前8時を指していた。

入学式の開始時間は午前9時30分だ。

(…早く準備しないと!)

そう思ってルームメイトを見ると、綺麗な白髪にはところどころ寝癖が跳ねており、彼女の小柄な体はパジャマに包まれたままだった。


……………

「…私も今起きたとこなんだー」

寝坊しちゃった、と苦笑いをする。

(昨日夜更かしし過ぎちゃったからなー)

そんなアリスの頭を撫でながら、今度は白いスケッチブックを取って、

『起こしてくれてありがとう』

『急いで準備しよ』

「うん!」


二人並んで新しい制服に袖を通す。

この学校の制服は、紺を基調としたワンピース型のセーラー服で、リボンの色で学年が区別できるようになっている。

今年の新入生のリボンは黄色だそうだ。

ちなみに、二年生は青、三年生は赤らしい。


鏡の前でリボンを整え寝癖を直す。

時刻は8時45分。

寮からなら5分もかからずに登校できるので、少しは余裕を持てそうだ。

(クラスの発表もあるしそろそろ出ないと…)

アリスの方を振り向くと、彼女もちょうど準備が終わったところのようで、

「行こっか、かぐや!」

二人で玄関の扉を開く。


燦々と降り注ぐ春の朝日が、教室へと向かう二人の少女を暖かく包みこむ。



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