第2.5話 ルームメイト Side A
(今日から、入寮か…)
美しい白髪の小柄な少女が、ある女子校の寮の前に立っている。
時刻は夕暮れ、茜色の空が、門の前に咲く桜すらも赤く染めている。
(ルームメイトってどんな子なんだろう…)
この学校の寮は二人で一部屋。
結構広いとこみたいだけど、ルームメイトと気が会わないとさすがに辛い。
(それに…)
少女の脳裏によぎるのは、過ぎ去っていった辛い過去。
でも、ずっと過去ばかりは向いていられない。
白髪の少女は彼女に割り振られた部屋の前に立ち、ドアを静かにノックする。
中からの声はない。
(まだ居ないのかな?)
日傘を閉じて、ゆっくりとドアを開ける。
中から光が漏れてきて少し目を細める。
その中では一人の少女が黙々と荷物を整理していた。
艶のある美しい黒髪を肩まで伸ばし、前髪を右にまとめて流した綺麗な少女。
これぞ日本人というような整った顔だ。
(綺麗な子…)
ジーンズに白のシャツ、その上からベージュのカーディガンを羽織ったその少女は、私と違って平均より少し背が高そうな女の子が床に座っている。
そんな彼女が顔を上げてこちらを見ると、その目は不安そうに揺れていた。
(あなたも不安なのね…)
優しそうな子で良かった。
「こんにちは」
できるだけ驚かせないように、静かに声をかける。
黒髪の少女は近くに置いてあった白いスケッチブックとペンを手に取ると、スラスラと何かを書いていく。
『こんにちは』
(もしかして…)
「あなた、しゃべれないの?」
とっさに言ってしまったが、すごく失礼な言い方じゃないだろうか。
あったばかりの人にこんなことを聞かれて、気分を害したかもしれない。
少女の方を見ると、彼女は戸惑いながら小さく頷く。
「そっか…」
(もしかしたら、この子となら…)
「ねぇ、良かったら少しお話しない?」
「私、あなたとは仲良くなれる気がする」
謝ることも忘れて、そう言う。
それでも黒髪の少女は気にした様子もなく、優しく頷く。
窓の外で世界を赤く染める夕日が、部屋の中まで暖かいオレンジを届ける。
暖かな色に染まった室内で、少女二人は語り出す。
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