理解者の悩み

 雨は降り続いていた。

 階段を上がった彼に何か違和感がある。

「あなたの叔父さんはこの町で有名な霊を知り尽くした人でしょう?」

 わたしは、その言葉にコクりと返事を返すことしかできないでいた。

 彼は神社の階段に足をかける。

「わたしは、あなたに何を教えたらいいのかしら?」

 キシキシと階段が軋む。

「そうですねとりあえず、まずあなたがここにいた理由を話してもらいたいところです。せっかく会いに来たというのに、あなたのご実家にはいなかったので探すのが大変でしたよ」

「それは熱烈な誘いだね?まあ探し物をしにここへはやってきた。それにしてもわたしのような失敗作に会いに来てくれると言うことは何か悩みでもあるのかい?今までわたしに会いに来てくれた人間と言えば、」

あれ、誰だっけ?確か?

「幼い少年くらいなものだよ」

「そうですよねここはと言われる神社ですし、知らない子供はいませんね?他の土地の子とかが遊びに来ることはあるかもしれませんが。でも僕はここが落ち着くんです」

「ここがね。たしかに最近おまじないが流行っているから。こんなに綺麗に手入れされてるのに」

 そんな彼は横に靴も脱がずに居座っている。怒る気にはなれなかった。なぜだろうか。ここは神聖な場所なのに。

「わたしと気があうのは君みたいな少年とあの子くらいだよ」

「あの子とは?」

「名前かなんだっけか、少年と呼びすぎて覚えてないな」

なんだかいつもに増してぼおってしている脳は役割を果たそうとしない。

「まあ、それは置いといて師匠に聞きたいことがあるんです」

「師匠って、まあ何でも聞いてくれ」

 彼は目の前の賽銭箱をなぞりながら真顔で口を開いた。

「僕はとある人と約束をしました。しかしその人は亡くなった方です」

「むやみに人に言って大丈夫なことかしら?その人を見ることは?」

「見えますよその人を。その人に頼まれたことをしなければならなくてあなたを探したんですよ。その人が解けなかった謎まで頼まれてしまいました」

 お人好しなのかはたまた、大人をからかうかのように笑いながら彼は、

「あなたに助言をもらおうと思っていました」

と言った。

「師匠は正直やめてほしいね」

彼はそんなことおかまいなしに続けた。

「師匠はどう思いますか?ある人の霊体は、わかるのですが死体がどこにあるのかわからないんです」

「死体は霊体を見つければだいたいわかるだろう?その人に聞けばってもう仏さんかな?」

 なぜそこまでして、見えているのにわからないんだろうか?

 わたしは少し驚いている。この初めて会ったと言っていい少年といっても青年に近い人と違和感がなく会話が成り立っている。とても興味をもってしまった。

「こんな三十路女を最初にお姉さんなんて君はお世辞が上手ではないね」

 そんな人間と話していると皮肉が出る。彼は気にしたそぶりもみせないが。

「その人は僕に秘密を教えてくれました。この町には何かがいるらしいと。人間の皮を被った化け物がいると。その人はある絡んだ事件を追って死んだと僕だけが思っています」

「ほう、ではなぜわたしに?」

「その人は死んだときに大凶を引き損ねたそうです」

「・・・・・・それはおかしな話だ」

 わたしはポツリと呟いた。



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