第3話

「兵道は拙速を尊ぶこともある。」


皇帝言行録レオ二世

「陛下。我らガルニエス氏族、エルビエサ氏族は陛下に忠誠を誓います。」


「レマリア皇帝の一方的かつ寛大な譲歩だ。帰参許す。」


飽くまでも譲歩。その姿勢は崩さない。この程度で根を上げこちらに着いた奴らは必ず劣勢で裏切る。が、余りに遅いやつや共に滅びる様なものも使えない。つまりは俺の眼前で頭を垂れ膝をつく2人の族長と氏族は捨て駒でしかない。


「下がれ。」


2人が聞き分けよく下がると重臣たちを集め俺は言い放つ。


「諸君、第二フェイズの始まりだ。」


彼らの基準では下級のマジャル人つまりは獣人騎兵の指揮下に入れる。それを北部から進撃し敵の兵糧を奪う。

分かりやすくいえばゲリラ戦だ。マジャル人も馬鹿のブルガロン騎兵共も練度はそれなり以上、神出鬼没に動かすにはこんないい手駒は無い。

戦闘員の数は両氏族併せて2700程。

無論、遊牧騎馬民族であり農耕をするのは農奴任せ。敵の人口は300万程で、そのうちのブルガロン人が占める割合は約40万程。全てが動かせる訳でも無く、こっちに避ける戦力はブルガロン騎兵約10万程に、農奴徴兵の歩兵約10万程。

が、かなりの食糧を焼き払っている。更には農奴たちを着の身着のまま追い払っている。

ブルガロン王家のテトラキア氏族は食糧を充分に渡したわけでは無い。

ここで反乱を支援し煽る。


「神の地上の代行者であるレマリア皇帝たる余レオ二世は犬共から救世主教徒保護の為に進軍する。神は我らと共に!」


剣を振り下ろし、それに、整然と並ぶ軍団兵は雄叫びをあげる。


「「「神は我等と共に!皇帝陛下万歳!」」」


双頭の鷲の旗を押したて進軍する。

南部に迫るブルガロン騎兵を長槍とハルバードの兵が受け止める。ロングボウ兵の曲射により、農奴兵を中心に多大な被害を与える。


「レマリア重装騎兵軍団兵よ!犬共に誇りを示せ!」


芦毛の名馬に跨り、俺を先頭に1万の騎兵が右翼から突き進む。その衝撃力は農奴兵を蹂躙、離脱しようとしたブルガロン騎兵を左翼から進撃してきたもう1つの重装騎兵軍団が退路を塞ぎ、農奴兵を処理した歩兵軍団と俺が直率する、重装騎兵軍団が挟み込む。

突如、歩兵軍団兵が左右に別れ空いた射線にロングボウ軍団兵が馬を狙い、狙撃する。

落馬したブルガロン騎兵は味方に踏み潰され、数を減らし降伏。

順調に、遮る物の無い平野を進むが如く進撃、2週間後、ブルガロン王国首都スコピエンヌにレマリア帝国時代から伝統の双頭の鷲の旗が翻った。


東レマリア=ブルガロン戦争

参加兵力

東レマリア帝国

2個歩兵軍団(2万)

1個弓兵軍団(1万)

2個重装騎兵軍団(2万)

1個軽騎兵軍団(1万2千7百)

ブルガロン王国軍

ブルガロン騎兵(22万)

農奴兵(15万)

損害

ブルガロン王国軍

テトラキア氏族を中心に7万

農奴兵13万

東レマリア帝国軍

重装騎兵800

歩兵1千

結果・影響

東レマリア帝国の勝利、全土併合。マジャル属州の獲得、マケドニア属州の復帰。

東レマリア帝国の国威掲揚、影響力の増大。

(東レマリア帝国領土は地球の現在のトルコ、ギリシャ、シリア、サウジアラビアの1部、ヨルダン、エジプトからバルカン半島全土とハンガリーを獲得。)

240年振りに東レマリア帝国への帰還。

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