第46話
東部森林から魔物が続々と抜けてきている。
もう数は二百を越えた。
『なっ、何でこんなに連れて来るんだよ!』
『俺達を殺す気か! 馬鹿じゃねぇのか!?』
と、続々と膨らんでいく群れに所々から焦りの声が上がる。その恐怖は瞬く間に伝染し、泣き出してしまうものまで出ている。
「お、おい。あれマジで多すぎない? 斥候がミスったのか!?」
「ま、拙いわよね? どどど、どうしたらいいのかしら?」
レナードたちはもう固まってしまって返事がない。リズも震えている。そして動ける俺は魔力がねぇ。
こっちの後衛は他の奴らも誰一人としてうごかねぇ。分けた隊の対となる『希望の光』の方は後衛が魔法を放っているから向こうは良いとして、こっちは後衛のサポートがゼロだ。
多分仲間うちで固まってるだろうから、前回のトラウマ持ちが全員こっちにいるんだろうな……
このまま前衛が当たれば多分かなりの犠牲者が出る。しかしまだぶつかる前の今動ければまだ取り返しが効くラインだ。
つっても今更後衛煽ってもファイアーボールを何発も撃てるほどの距離はもうない。これは危険だけど行くしかないな。下手するとルンベルトさんが死んじまう。
「ソフィ、ソーヤ、仕事だ。
これからも俺の騎士で居るつもりなら気合で動いて付いて来い」
「っく……待ってください」
「い、今……行きます。やれますから!」
小鹿の様に震え歩く事すら覚束ないが、それでも動く根性があればこなせる仕事だ。
「おっし、俺たちは今から少しの間だけ命賭けるぞ。ファイアーストームの詠唱して撃てる状態を保ちながら付いて来い。
撃てって言った時に撃つだけの簡単なお仕事だ。そこら辺は心配いらないからな」
飛距離は無いが強い火力で燃え広がるファイアーストームを二人が魔力切れまで撃てればある程度は取り返せるはずだ。幸い二人は魔法適正が高い。火の適正が高いリズほどじゃないが、それでも成長した今ならば結構な火力を出してくれるはずだ。
詠唱を行い付いてくる二人、今はある程度震えは収まったのか普通に詠唱できて居て一安心だ。普通に唱えられるなら事前準備はいらんかったな。
それを見て走る速度を上げて前線に出る。ルンベルトさんと同じライン。最前線だ。
「ルンベルトさん、ここから魔法撃っちゃっていいですか?」
「カイト!? 待て後衛が動いて居らぬ、ここに居てはいかん!!
いや……カイトは魔法の資質が高いのであったな。策があるなら構わん。好きにかましてやれ!」
「了解ぃ! ってリズも来たのかよ。ファイアーストームな?」
彼女は「わかってるわよ。火魔法使うときに置いて行くなんて馬鹿なの?」なんて震えながらも悪態をつく。
「さて、前衛が当たる前に撃ちたいからもう時間がねぇ。
リズが撃った後に二人も撃て。俺も一発かますからさ」
そう言っている間にもリズが『ファイアーストーム』を放ち二人もそれに続く。
流石はリズだ。いつもより少し速いタイミングで撃って敵の足を止める方を優先している。
ソーヤとソフィの撃つタイミングで巨大なトカゲ達がもろに焼かれて唸り声が響く。
その迫力に気圧されるが、俺が不安がると二人が動けなくなっちまう。
俺は陽気に「よーし、このまま交互に撃ち続けろ」と彼女たちの魔法が終わらないうちから指示を出してポジション取りに走る。
炎に巻かれ両側に割れるように移動する魔物の群れ。多くの魔物が向かった北側へと走り、前衛より少しだけ前に出て魔法を放つ。
「我、女神アプロディーナの加護を賜りし者なり、我が魔力を糧に炎の嵐を巻き起こし、敵を焼き滅ぼさん『ファイアーストーム』」
ガクンと足が縺れる。魔力を使いすぎたことを自覚する。
あれだけヘイスト掛けりゃ仕方ないが、今ここで倒れたら終わりだ。
地に手を付きながらも四足歩行で必死に前衛の輪へもぐりこむと、前衛の後ろに回って座り込み、状況を確認する。
その時、リズたちのもう一発が打ち込まれて割りといい数の魔物が光となって消えた。
あー、おっかねぇ。
まるで蜂の群れに中身の切れそうな殺虫スプレーでもかけている気分だな。
てかなんで王国騎士が必死扱いてんのに近衛騎士は止まったままなんだ?
このまま攻め込まれたら死ぬぞ?
やべぇな何でもいいから発破かけなきゃ。
「おいっ! 王女を死なせるきかぁぁ! エリザベス王女殿下をお守りしろぉ!
このまま魔力が切れるまで撃って頂く為にもなんとしてもお守りするのだぁ!」
固まっていた前衛だったが、王女という言葉に近衛は反応して即座に彼女の前に殺到した。
おいおい、何やってんだよそれじゃ魔法撃てないだろ!?
「馬鹿もーん! 魔法を阻害せずにお守りするのだぁ!」
と、少しコントみたくなってしまったが、指示を出せばすぐに彼女を中心に扇状に広がり陣形を取った。流石正規の兵士、動き出せば陣形は綺麗なもんだ。
ソフィとソーヤも中央付近の守りの中へと入れているのでこれでいい。
「ルンベルトさん、今からでも後衛に魔法打たせます? 必要なら説得に行きますけど?」
「いや、混乱している者の魔法ほど怖いものは無い。
理性を保っている王女殿下たちの魔法で十分だ。凄まじい威力であるしな。
ぬしクラスの魔物も今の所見当たらぬ。
出てくるまではこれで持つ。本当に助かったぞ。はは、カイトは凄いな」
ああ、確かに。数が多すぎて俺もビビッたけど、一番怖いのは魔法やスキルを受けても怯まず抜けてくるレベルの強敵だよな。
攻撃を当てればノックバックしてくれるくらいのレベル差ならやり様はある。
「ちょっとあなたぁ、私もう魔力が厳しいんだけど、どうするのぉ?」
「だったら後ろ下がれよ! 近衛や王国騎士を舐めるなって言ってたのお前だろ!」
そう叫んでやれば近衛騎士の奴らが「ここは我等にお任せをおぉ!」と声を張る。
リズは「みなさーん、頑張ってください! 戦姫としてあなたがたの必勝を祈願しております! どうか、みな無事に勝利を迎えましょう!」と、剣をグラスに見立てて乾杯でもするかのように差し出しニッコリ笑った。
俺はさり気なく後ろから「戦姫様の祝福だぁ! 絶対に勝つぞぉ!」と声を上げる。
「うぉぉぉぉ! アイネアースに勝利をぉぉぉ!」
「「「おぉぉぉぉ!!」」」
ハッスルし始めた近衛兵を見て安心して俺たち四人は後ろに下がらせてもらった。
「な? お前の声だけで力になっただろ?」とリズの頭を撫でて前に言った言葉が嘘じゃなかっただろと問う。
「そ、そうね? 私ちゃんとやれてた?」
「アホ。あの気合の入り具合でわかれ。最高のお姫様してたっての」
まだわからんか、とぴしっとデコピンを喰らわせてみれば、おでこを押さえて「へへへ」と顔を緩ませる。まったくドM王女め。
もう魔物の後続は来ていない。二百くらい来たが、斥候の決死の調整で上手くアンドリューさん達の方と二手に分かれてくれて、百程度で済んだからな。
流石、大規模の作戦で選ばれた斥候だわ。群れに入るくらいの勢いで調整入れてたからな。
三人の魔法で四十以上はやっただろうし、流石にもう任せられるだろ。
「はーい、皆注目~」
動けなかったアディやコルト達に手をパンパンと叩いて視線を集める。
「一番の年少である二人が東部森林の魔物数十を蹂躙してきました。
大活躍です。拍手~!」
「えっ? いやっ」とそわそわしてるソーヤ。ソフィは精魂使い果たしたのか後ろからしがみ付いてくるくるばかり。
だが、今俺が本当にやりたいのは労いでは無いので別にいい。
皆気まずそうにしてパラパラと微妙な拍手がなる。
「お前達、何か言う事無いの?」
「わ、わりぃ、びびっちまった……」
「おう。次は動けよ。もう俺は魔力完全に切れたからな。正直動くのもだるい……」
「そ、それなのに前行ってたの!? 危ないじゃん!」
エメリーの言葉に「はぁ」と溜息を吐いた。
前衛が落ちたら俺たちも蹂躙されて終わるってのに、ここで危ないって言っても仕方ないだろうに。
「いや、俺の一発が無いだけでも前衛が死ぬ可能性が爆上がりしてたからな?
ぶっちゃけて言うぞ。お前らが使えない所為で共に戦う仲間が死ぬ所だったんだ。
前回のトラウマの所為で足が止まるほどの恐怖だっただろうしそこまで責められないが、ソフィとソーヤが動けたんだ。お前らもできる。
ダメでも構わんから何か手伝おうとくらいはして見せろ!」
「す、すいませんでしたっ……! 俺……今からでも行ってきます!」
そう言って剣を抜いて駆け出したコルト。
え? ちょ、ちょっと? 俺たち後衛。役割違う!
俺はコルトを止めようと「待て」と声を掛けながらダルさを押して剣を抜いて走る。
すると何故か他の皆も剣を抜いて付いて来た。
「何でだよ! 止めに行ってんだよ!」
「そ、そう言うなよ。今の押してる状況で戦えるって事を掴みてぇんだよ」
「あーもう! じゃあちょっとだけだぞ? あんまり前衛の邪魔するなよ?」
と、全員で前衛の中に混ざって行ったのだが、もう戦闘は大詰めで俺たちが戦う事は一度も無かった。
レナードが俺に怪我人を運んできて、回復の適正が高いアディとアリーヤさんにヒールを唱えまくって貰い、瀕死の重傷者に俺がヒールを唱えた所で意識が落ちた。
気が付けば俺はテントの中で寝かされていた。
起き上がり、周囲を見渡せばホセさん、アンドリューさん、アーロンさん、などの野良騎士のトップ連中だろう数人とルンベルトさんや恐らく近衛騎士のトップだろう人、その中心にリズの姿があった。
「お、俺なんでこんな場所で寝てんの? もっとさ、下っ端のところでいいんだけど……」
「おお、起きたかカイト。
今日の主役が何を言っておるのだ。目覚めを待っていたのだぞ?」
ルンベルトさんの言葉に「主役はこいつでしょ。一番討伐数上げたんじゃない?」とリズを差したのだが、近衛騎士の偉い人っぽい爺様がこちらに向き直った。
あ、近衛の前で王女こいつ呼ばわりは拙いか……
と思っていたのだが、彼はこちらに膝をついて頭を垂れた。
「今日の恩は一生忘れませぬ。貴殿の機転が無ければ近衛騎士は半壊滅くらいはしていたでしょう。取り返しが付かぬところでした」
「それはうちの騎士と王女殿下の働きですよ?
いや、うちの騎士の分は俺が受けるべきか。お役に立てた様で何よりです」
彼は少し驚いた視線を向けるとフッと表情を緩ませた。
「なるほど。さすがは姫様の想い人ですな」
「ちょっとハロルド、変な事を言うのは止めなさい! あなたも変に謙遜しないで!
早く伯爵くらいになって私の隣に立たなきゃダメなんだから!」
いつもの様に意味がわからん事を言うリズを放置して、今日の事について尋ねる。
「しょっぱなの開戦にしては数が多過ぎましたが、何かあったんですか?」
「ああ、異常種が居ったそうだ。その場から動かず、ひたすら魔物を呼ぶ声を上げられたと斥候に出たものたちが嘆いておった」
道理で。数をキッチリ半分に分けるくらいに調整入れる気合の入った斥候だったから、元々の作戦なのかもとも思ったが、そういう事情があったのか。
「あー、なるほど。異常種でその性質を持ってたんじゃ彼らの責任じゃないですね」
なんて返して話しを先に進めようとしたのだが、何故かハロルドさんがそれを否定した。
「いいや、我ら近衛の失態だ。異常種が居た所までは仕方が無いが、それをそのまま引いて来るなどありえん行為だからな……」
それに声を返したのは『おっさんの集い』ギルドマスターのアーロンさん。
「いやー、それはどうですかね?
私は斥候もやりますが、魔物を呼ぶ奴ってのはどれだけ呼んだかなんて予測が付かないんですよ。要するに釣ってる間の後続がどれだけいるかもわからんのです。それに出くわしたらその場で死ねなんてやってたら、騎士が居なくなっちまいますぜ?」
と、アーロンさんがいつもの調子でおどけて発した言葉に、他の皆が同意する。
彼らの釣りは数こそ多かったが、その後の調整は完璧だった。
比べられる話じゃないが、アリスちゃん育成で釣りは散々やったからな。強敵であれをやるのは至難の技だということくらいはわかる。
数が多いのは普通は居ないはずの異常種に敵を呼ばれたのだから仕方がない。
あれだけ命賭けて責められたら可哀そうだ。
「それよりも問題はそっちの後衛では?
折角サオトメ殿の機転と王女殿下の奮闘で大事を避けられたのです。次の討伐で克服できねば無駄になってしまいます」
そうそう、そっちの話ししようとアンドリューさんの声に頷いて返す。
だが、その言葉を向けられたルンベルトさんの表情は思わしくない。
「それを懸念してベテランの斥候による釣りだったのだがな……
異常種が最後まで出てこんかったという事は、次も呼ばれると思った方がよいじゃろう。
次は、ハロルド近衛騎士長がこちらを担当した方が良いのかもしれん。わしの声では一度で動いてくれんかったからのぅ……」
本来はぬしを避けて少数を小出しで呼び込み、戦える事を示しながら進めて士気を上げる方向だったらしい。
『希望の光』の戦力をしっかり把握していなかった為、総指揮官としてルンベルトさんとハロルドさんが分かれたのだが、戦力を分散するとなると一番人数が多い近衛騎士を分ける事になり、今回の事態を招いたそうだ。
なるほどね。自分の指揮官が他に行って居ないし後衛は魔法を飛ばさない。
そんな中、一番凶悪だと言われる東部森林の魔物の大群が押し寄せてくればそりゃビビって動きも止まるわな。
「あら皆さん、難しい顔をされていますが、今回死者ゼロで終われたのです。
東部森林の討伐に置いて、死者ゼロは快挙と言って然るべきものですよ?
難しく考えすぎては居りませんか?」
マジかよ! 誰も死なずに終われたんだ?
それはめでたいけど、リズなんか喋り方変だぞ? 聴いてて痒いんだけど。
「そうじゃな。それもこれも主の見出した古代魔法のおかげじゃ。
あの魔法のおかげで右翼は余裕も余裕、すっかりトラウマが解消されたわい」
「ええ、あれは本当に素晴らしい。
主力だけで固めれば前衛だけで抑えられる気すらしましたよ」
ホセさんと、恐らく『希望の光』の主力であろう男が、ヘイストの魔法の効果を絶賛する。
へぇ、右翼はそこまで余裕だったんだ? 流石俺の騎士に見合わないほど強い男!
「じゃあ、隊を一まとめにすればいいんじゃない?
前衛を越えてくる可能性があるなら、二軍を前衛のすぐ後ろで扇状に陣取らせて後衛を守ればどうかな?
右翼の連中が魔法撃ってる所見れば左翼の奴らだって安心して撃てるだろ。
今日やれる所を見てるわけだしさ」
俺は置いてあった紙に、さらさらと陣形を書き出して問いかける。
ルンベルトさんが俺が置いたペンを取り、細かく配置を決めて行く。
「なるほど。確かに今日の不具合の修正と見れば悪くない陣だ。だがしかし、隊を分けたのはぬしクラスが出た場合の対策でな。その場合どのように孤立させるか……」
あー、ボスを雑魚と引き離して孤立させて抑える寸法だったのか。
確かに完全にボス一匹だけ上手く釣れるはずもないし、雑魚処理も考えると主力だけじゃ前衛が足りないか……
そうして各々頭を悩ませた時、アンドリューさんが再び声を発する。
「であればその役目、私がやりましょう。
一体であれば、問題無く遣り合えると思います」
少し冴えない三十後半の優男。その彼の真っ直ぐな瞳がキラリと光る。
それを見たリズがちょっと頬を染めていた。
気持ちはわかる。こんな時にこう言えちゃうとかマジカッコいいよな。
けど、隊を纏めると敵の密集率も上がるから、上手く釣れなくなる可能性も高いし、受け持てる自信があっても一人はダメだろ。
「流石アイネアース最強の男。けど、一人は流石に負担が大きいでしょ。
補佐を数人つけた方がいいんじゃないですか?」
やれるにしても安全マージンは取った方がいい。最強の戦力なのだから尚更だ。
そう提案すれば『希望の光』の主力であろう一人が強く頷き「私らがサポートに入ります」と声を上げる。
そうして、話が付いたなと思われた時、リズが徐に視線を寄越した。
「あなたは何処に入るつもりなの?」と、先ほど決めた陣の書かれた紙をこつこつと叩く。
「いやいや、俺はまだまだ雑魚だからここだ!」と、後方の一番安全そうな後衛のど真ん中の場所を指した。
それにホセさんが「当然じゃな」と深く頷く。
だが、リズはそれに不満気な顔をしている。
「いやお前、俺は魔力がほぼ尽きるほど支援しなきゃいけないんだぞ?
これは前衛を輝かせる為に絶対に必要な事だ。ならもう何もできないじゃん!」
どれだけ無理させるつもりだよ、とリズに文句を言えば「馬鹿! 違うわよ!」と逆に怒られた。解せん。ドMの癖に……
「あんた、本当にここに居られる? 私知ってるからね? 今日ファイアーストーム一回撃っただけで倒れそうになったでしょ? そんな状態で普通前に出る!?」
「阿呆! あれが無きゃ誰か死んでたかもしれんだろうが!
ギリギリ撃てる感じがあったからの行動だっての!」
「それであんたが死んだら意味無いでしょうが!」
ムムムとにらみ合っていれば、ホセさんが「御熱いのぉ」と訳のわからない事を呟く。こっちはガチで言い合ってるんだけど?
「私もそこに付いて監視するからね!」
「ん? ああ、お前王女だし丁度いいんじゃね?
俺も見てて崩れるって思わなきゃ動かないし」
そうそう。今日のあれはありえな過ぎたんだよ。
後衛が魔法を撃たないから東部森林初の近衛騎士の足が止まるのも気持ちはわからんでもないが……
きっとルーチンが決まってて魔法支援に合わせて動くのがお決まりみたいなのがあってかなり困惑したんだろうな。
だって皆が皆、何度も後ろを見てたもん。
「しかしカイトよ……
お主軍師の才があるのではないか? 普通はあの時点では動けんぞ?
わしがもう一度指示を出そうと思う頃にはもう隣に居ったしな」
ルンベルトさんはボスが居なかったので、右翼に隊を寄せて支援を頼むつもりだったらしい。だが、陣を横にずらすというのは結構しんどいらしく、被害を覚悟の作戦だったらしいが。
「いや、後ろに居れば丸わかりでしたよ。撃つべき時に皆が恐怖で固まってたんで。
こいつも小さく丸くなってまあ可愛いもんでしたよ。今は粋がってますけど」
「粋がってないわよ! あんたが小馬鹿にするからでしょ!?」
とリズを煽って遊びつつ変な称号を貰わんように雑談を進めていった。
軍師とか絶対無理だから。変な指示して即行自分の部隊潰すわ。数人の騎士の面倒で厳しいと思ってるのに。
そうして明日の話し合いも終わり、俺はホセさんと『絆の螺旋』に宛がわれたテントへと赴き、皆で食事を取った。
皆表情は思わしくない。当然俺はレナードの所為でどっきどきだ。
「あー、ソフィとソーヤの頑張りでお褒めの言葉を貰った。今日は二人ともよく頑張ったな。あと、無理させて悪かった」
ソフィも落ち着いたのか嬉しそうに微笑み、ソーヤは少しキョドリながらも後ろ頭を搔いているが、表情は明るい。
「他の皆も後半からは良くやってくれた。リズも死傷者ゼロで快挙だって言ってたぞ。だからそんな顔すんな」
ドキドキしながらアディの頭を撫でて顔色を伺う。
うん、皆良くやったよ。後半は最前線でキッチリ衛生兵の役目をこなせたしな。
だがレナード、貴様はダメだ。絶対に仕返ししてやるからな。
俺は女性陣の顔色を伺い続けながらもレナードに復讐を誓った。
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