外見至上主義
韓国で描かれ、そのタイトルの通り外見至上主義を扱った漫画です。
翻訳にあたって、舞台が日本に変更されているので、登場人物の名前は全て日本名となっています。軍人が出てきたり日本ではありえない描写があったりするのは、ご愛嬌です。
主人公の長谷川蛍介は、不細工な顔と太った体型を理由にイジメに遭っていました。
ある日とうとう限界を迎え、家を出て遠方の実業高校に転入することになります。
引っ越しを済ませ、目覚めると、蛍介はなぜかイケメンの体に入れ替わっていました。戸惑う蛍介ですが、眠りをきっかけに両者は入れ替わり、疲労や眠気はそのたびにリセットされることに気付きます。
その日から蛍介は、昼はイケメンの体で学校に通い、夜は元の体で生活費を稼ぐという二重生活を送るようになります。
新しい体で過ごす学校生活は、これまでの蛍介の日常とは正反対の、とても華やかなものに変貌します。外見の良し悪しで全てが決まる世界の残酷さを蛍介は改めて実感し、同時に、本来の姿なら関わることのなかった人々と出会って変化していくのでした。
全体的にコメディタッチで軽く読める話ですが、韓国の行き過ぎた外見至上主義や、時には人生の明暗すら分けてしまうコンプレックスの問題をえぐり出す、とても面白い作品でした。
ストーカーやアニマルホルダーといった別の社会問題も扱っているので、話が脱線しがちのようにも見えますが、どのエピソードも最後には外見至上主義の問題に戻っています。
登場人物は美形とそうでない人物にはっきり分かれ、両者の間にある超えられない壁や、生きていく上で常に他者から容姿を評価され区別されることの弊害を、コミカルなストーリーを通じて浮かび上がらせています。
美しいものを崇めるのは、人間の本能です。誰だって、醜い顔より美しい顔で生きたいに決まっています。
だからといって、醜い容姿の人を嘲笑い、差別することが許されるわけではありません。
しかし現実では、友達から、異性から、時には見知らぬ他人から、頼んでもいないのに外見を評価され、可愛いだブスだデブだキモいだと、遠慮のない言葉を浴びせられます。
自分はそんなことしない、という人でも、あの人怖そうだとか、あの人は明るくていい人そうだと、他人を見た目で判断したことがあるでしょう。
外見は内面の一番外側にあるんだ、とも言われますが、その一端がその人の全てを表すかのように考えることの恐ろしさを、この漫画は説いています。
醜い人に向けられる他者の視線をよく知る蛍介は、イケメンの体で生活するようになっても、日陰で生きる人に共感し、手を差し伸べようとします。その行為こそ、己が外見至上主義に染まっている証拠なのでは、という蛍介の葛藤や、外見を理由に理不尽な目に遭っても戦い続ける登場人物の明るさは、読む人に気付きとエールを与えてくれます。
一人、コンプレックスと自尊心をこじらせて破滅的な末路を迎える登場人物がいます。
彼の精神が変貌して堕ちていく様子や、少年院での暴力的な描写は、海外の漫画だからこそ描けたのかな、と思いました。本作には、ときどきものすごく怖いホラーシーンや残酷描写があるので、そういうのが苦手な人は要注意です。
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