童夢

 有名な「AKIRA」の作者による短編漫画です。新刊が販売されていないので、中古品がかなり値上がりしています。


 昭和の香り漂う巨大団地で起きる連続変死事件は、痴呆症の老人、チョウさんの超能力が引き起こしたものでした。退行した精神の欲求のままに凶行を続けるチョウさんの前に、新しく引っ越してきたエッちゃんという少女が現れます。彼女もまた超能力者でした。

 

 古いこともあってか、私にとってかなり衝撃的な作品でした。

 団地という巨大な構造物を空から俯瞰したり、破壊したり。

 現代ならドローンやCGを利用して同じ視点の絵を描くことは可能ですが、そんなものが無い時代に、人の手であのような複雑な絵が描かれたことに驚きました。

 漫画やアニメ特有の登場人物の美化がされておらず、日本人が鼻が丸く背の低い人々として忠実に描かれているのも、今はあまり見ないせいでかえって新鮮でした。

 

 ロン毛の刑事に代表される大人の世界と、エッちゃんや痴呆老人のチョウさんのような子供の世界が、同じ団地に交わることなく重なり合い、物語が進んでいきます。主人公はみなあくまで子供で、何も知らない大人は子供同士の戦いに振り回される、という印象です。


 超能力で壁が丸く凹むシーンは、かなり有名なようです。これに影響を受けたかどうかはわかりませんが、本作の後に描かれたドラゴンボールに、同じ表現がよくありますね。

 マンモス団地が舞台なので、モブの台詞や背景の書き込み、全体的な雰囲気に生活感と懐かしさが溢れています。

 本筋とは関係無いですが、「35歳の公務員じゃ団地に入れただけ幸せ」という台詞にはびっくりさせられました。

 

 

 

 

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