異形再生 付『絶滅動物図録』

 人魚のような生物の骨格が書かれた、黒地の表紙に変なタイトル。見るからに怪しい本です。

 本作は、伝説の動物の研究に生涯を捧げた十九世紀の研究者、スペンサー・ブラック博士の伝記(という体をとった小説)と、博士が遺した伝説の動物の解剖図を収録した、ノンフィクション形式の作品です。


 医者の息子だったブラック博士は、子供の頃から父親の墓暴きを手伝っていました。優秀な医師の父親は、いつも研究のための死体を必要としていたからです。

 自身も医学の道に進んだブラック博士は、やがて奇形の研究に熱中するようになります。足りない脚や、一本多い腕、頭が融合した双子。奇形に苦しむ人々を救いたいという思いに駆られながら研究を続け、博士はある一つの説を導き出します。

 人魚やミノタウロスといった伝説上の生物は、かつて人間の先祖として実在し、奇形の人々は、昔の人類にあった翼や尾ひれを持たないまま生まれてきた、いわゆる先祖返りを起こした人々なのだと。

 絶滅した伝説上の生物の研究を進めれば、いずれ奇形の人々のためになると考えたブラック博士は、犬や馬などの既存の動物を組み合わせて、伝説上の動物の再現を始めたのです。


 後半部分では、博士が創り出した生物の解剖図が載せられています。スフィンクス、セイレーン、ケンタウロスなど、その数十一種。骨、筋肉、時には内臓まで、細部まで事細かくスケッチされております。最後に載せられていたハルピュイアに至っては、胎児の成長段階を細かく記録したスケッチもありました。博士、これ作ったの? と言いたくなるような仕上がりです。伝記も併せて読めば、恐怖が膨らみ上がること間違いなしでしょう。

 

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