Beholder 幸福に浸る眠り

 本作は「Beholder」の追加コンテンツです。

 主人公はメインストーリーのOPで警官に暴行を受けて連れて行かれたアパートの前管理人、ヘクター・メディナです。ゲームのプレイ方法は同じですが、一部の住民の過去を知ることができ、メインストーリーにはない住民の秘密を明らかにすることも可能です。

 ヘクターは65歳のおじいちゃん。猫のオーダー(翻訳が雑すぎて『令状』と表記されています)と暮らし、遠い外国にはたまに手紙をくれる優しい息子がいます。

 

 ある日厚生労働省から、「シニア世代のための素晴らしい引退案」なるものが発表されました。ヒトラーの演説をデフォルメしたような白黒テレビの画面からは、興奮した様子のアナウンサーの声が響きます。

「なぜ国に貢献していない人に年金を払う必要がある?」「君たちは充分に人生を楽しんだ、若い世代に譲ろうではないか!」

 引退案とは、85歳以上の市民に〈幸福に浸る眠り〉つまり苦痛の無い安楽死を義務付ける新たな法律のことでした。

 ヘクターは青ざめます。彼はまだ65歳でありながら、書類上のミスで85歳ということにされてしまっていたのです。

 安楽死の期限まで二週間。ここからはプレイヤーの出番です。

 メインストーリーと同じように住民たちの部屋にカメラを仕掛け行動を監視しプロファイルを作成するのは変わっていません。しかし住民たちの抱える問題や秘密はかなり深刻で、中にはヘクターにはとても救いようのないものもあります。

 愛国者の傷痍軍人、飲めばろくなことが怒らない薬を作るマッドサイエンティスト、不妊なのに子供がいる夫婦、クローゼットに骸骨を隠している作家など、強烈なアパートの面々に関わるタスクをこなすうちに、ヘクターに国外逃亡のチャンスが訪れます。

 

 エンディングは四種類ですが、ハッピーエンドと言えるのは一つだけです。住民たちのタスクも、メインストーリーに繋がるものはほとんど救いの無い結末を迎えるようになっています。猫のオーダーが唯一の癒しかも……。

「引退案」の内容は日本人には耳が痛いものですね。年寄りの方への不寛容など今に始まったことではありません。


 本作「Beholder」はすでに続編が発売されていますが、あいにくロシア製のため日本語版がまだありません。宣伝映像を見る限りはすごく面白そうです。雰囲気がもろ「1984年」でした。

 

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