ボラード病
ボラードとは、港に船を繋留するためにある太い杭のようなものです。
とある大災害から奇跡的な復興を果たしたB県海塚町で、避難生活から故郷へ戻った人々は穏やかに暮らしていました。
終始語り手を務めるのは、あまり活発ではない小学生の女の子です。
母親はどこか様子がおかしいけれど、クラスメイトはよく死んでしまうけれど、楽しい小学校生活を送っています。
自分たち監視する隣人、突然いなくなった担任、奇妙な行動を繰り返すペットのウサギ。同調圧力や周囲の子供達に馴染めない主人公が語る日常は、読む者に微かな違和感を覚えさせます。
終盤で主人公と母親の身に起こった出来事と、その後の主人公の独白には衝撃を与えられました。途中で一箇所だけ挟まれる(判読不能)という文字にも、暗い想像を掻き立てられます。
最初から最後まで薄気味悪い雰囲気の漂う本書は、おそらくある事故をモデルに書かれています。
日本の終わりすら予感させられたあの事故には、あまりの報道の少なさや事態の重大さから、本書のようなことが実際に起こっていてもおかしくないと思わせられます。
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