動物農場

 本作はロシア革命をなぞらえたものと言われております。あくまでおとぎ話という体裁ではありますが、風刺と皮肉たっぷりのストーリーです。


 酔っ払いで怠け者の農場主ジョーンズ一味を追い払い、動物たちはイギリスで唯一の動物によって運営される農場を作ります。その名はメイナー農場改め、動物農場。

 動物の中でも最も賢いブタたちの指導によって農場は発展していきます。戒律を作り、反乱の歌を歌い、作物を収穫し、新生活は順調に進んでいくように思えました。


 しかし、ブタの中でもさらに賢いナポレオンとスノーボールという二頭のブタは、農場の方針をめぐり対立し続けます。スノーボールがナポレオンの策略によって追放されたことをきっかけに、ブタによる独裁政治が幕を開けるのでした。


 反乱直後にブタによって掲げられた戒律が、ブタの手によって改竄され、破られていく様子や、不満を口にしたところで、弁の立つブタにより「よくわからないけどたぶんブタは正しい」と懐柔されていく他の動物の様子は皮肉が効いています。

 初めてナポレオンによる動物の粛清が行われた夜、動物たちは農場を見渡し、「こんなはずではなかった」と嘆くのですが、後悔先に立たず。

 反乱から年月が経ち、ジョーンズ時代を知る動物がわずかになったころ、動物たちは二本足で歩き服を来たブタたちの姿を目にします。誰も住まないと決められていたはずのジョーンズ宅で、人間を招き宴会にふけるブタを、腹を空かせた動物たちが見つめる場面で物語は幕を下ろします。


 ナポレオンは農場で何か悪いことが起こると、かつて自分が追い払ったスノーボールの企みによるものと決めつけ、仲間内にいるはずのスノーボールのスパイを探し処刑するようになります。このあたりは同著者の「一九八四年」におけるビッグブラザーとゴールドスタインの関係によく似ています。

 人間が農場を取り戻そうとしたとき、勇敢に戦ったはずのスノーボールの功績すら、独裁が進むうちに無かったことにされていきます。

 禁止したはずの酒を飲み、動物を殺し、人間と関わるブタに疑問を持った動物は、もはや意味を持たなくなった戒律が書かれた場所に向かいます。

 しかしそこには、「すべての動物は平等である。だが一部の動物は他よりもっと平等である」という一文があるのみでした。


 なんともやるせないストーリーです。

 ナポレオンのモデルになったのはスターリンであることが、訳者のあとがきに述べられています。執筆された当時、多くの出版社に刊行を断られたことも、著者ジョージ・オーウェル本人によって語られています。それだけ、当時の世の中に与える影響も大きかったのでしょう。

 

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