深紅の碑文
最初に紹介した「華竜の宮」の続編となる作品です。
世界を揺るがす地殻変動は「大異変」と呼ばれ、陸側はそれに備えて資源の貯蔵を始めました。しかし、海側にとってはそれは搾取も同じ。大異変が迫るにつれ、双方の争いはいくつもの人命を失いながら激化します。本作はそんな過酷な時代に希望を失わず、平和のために闘い続けた人々の半生が綴られる小説です。
主な登場人物は三人です。
外交官を辞め、救援団体の理事長となった前作の主人公青澄セイジ。
政治的思想を持ち、陸側の物資を奪い陸上民を殺す強盗団「ラブカ」のカリスマ的存在の海上民ザフィール。
大異変を必ず迎える若い世代でありながら、宇宙に惹かれ、人類の記録を地球の外に残そうとした星川ユイ。
面白いです。戦争だったり、私利私欲のための搾取だったり、人間の悪いところが余すことなく描かれていますが、それでも「人間っていいよね」と思わせてくれる作品です。
ドーム型海上都市を巡る人々の争いや、陸上民と海上民の対立がメインとなる「陸」、「海」パートとは対照的に、宇宙に希望を見出した「空」パートは爽やかさすら感じられます。
前作「華竜の宮」で、地殻変動で地上で暮らすことができなくなった場合に備え、海上民の体をを深海で生きられるように変えてしまおうという「L計画」なるものが発案されるのですが、「空」パートでは人工知性体と生物の素を乗せた宇宙船をとある惑星に飛ばすと同時に、プルームの冬が過ぎ、やがて陸へ戻るであろうルーシィに向けて、人間が歩んだ歴史の記録を残そうという計画が実行に移されます。食料も資源も何もかもが奪い合われる中、それでも無駄かもしれない夢を見るユイには心を打たれました。
オーシャンクロニクルシリーズは、現在も執筆中のようです。
ルーシィが生き残った遠い未来を舞台にした〈ルーシィ編〉、宇宙を目指した人工知性体の物語〈マイーシャ編〉、大異変後の政府を描いた〈NODE 編〉などの短編または中編が刊行される予定のようです。発売されたら絶対に読みます。
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