第3話 ネギの戦士
それは、私が夕方の坂道を上っているときでした。学校帰りにお母さんから買い物を頼まれて制服のままスーパーへ寄った私は、鍋の材料を袋一杯に詰めて歩いていました。荷物は重いし坂道はきついし、制服のままスーパーへ行くなんて恥ずかしいしで、私はうんざりしていました。
ふと坂の上を見ると、いつもの乱暴小僧が女の子を追い掛け回しているのが見えました。女の子のおやつを狙っているのです。
「大変! 助けないと!」
私はさっと物陰へ隠れました。これから起こることを人に見られたら、私は恥ずかしくてもうこの町で生きて行けません。
私は荷物を下ろすと、買い物袋の中からネギを颯爽と取り出し、華麗にブンブン振り回しながら、呪文を唱えました。
「ネギーズ・ガールズ・パワーアップ!」
呪文を唱えると、鈍色だった私のブレザーの制服が鮮やかな緑に染まり、胸元のネクタイは大きなリボンへと変化しました。
そうです。私はなぜか、制服を来てネギを振り回し呪文を唱えると、ネギの戦士に変身してしまうのです。ちなみに、髪も緑に染まります。
私は乱暴小僧の前に立ちはだかりました。
「待ちなさい、乱暴小僧! おいたは駄目よ!」
「何だよお前! 邪魔だな!」
乱暴小僧は私を見ると、拳を握ってこちらへ歩いてきました。
「言葉で分からないならお仕置きよ!」
私はスティック化したネギをまた華麗に振り回し、魔法を唱えました。
「アシリーン・アタック!」
ネギスティックから辛い汁が噴き出し、乱暴小僧の口へ飛び込んでいきました。攻撃を受けた乱暴小僧は、目を真っ赤にして飛び上がり、夕日に向かって走り去っていきました。
「み、緑のお姉さん、ありがとう」
突然のネギ戦士の登場に驚いたらしい女の子は、おどおどしながらお礼を言ってくれました。
「困ったことがあったら、いつでも私を呼んでね!」
私はそう言い残し、急いでさっきの物陰に戻りました。
「あああああっ!」
私は思わず声を上げました。
「がぁ! がぁ!」
カラスがこちらを振り向き、慌てて逃げて行きます。
私の荷物はまんまとカラスに荒らされてしまったのでした。
おしまい!
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