八千代さんは画像のなかの「写ってはいけないもの」を食べる。かつて八千代さんのあるじだった先輩は消えてしまった。
奇妙でありながら強い設定は、読み進むほどに肌になじんだ。全体に暗い色調なのだが、ときおり鮮烈にひらめくなにかを感じた。それがなんとなく命の気配に似ている、と思う。
先輩はもういない。僕は生きている。八千代さんはそこにいる。透明な何かがまるごと彼らの暮らしを包んでいる。無機質なようで人間的で、どこかエロチックな何か。
損わずに語ることは難しいけれど、まずは一読してみてほしい。面白かったです。