バッティングセンター
さーてと。
今日はどうしようかな。
当初の目的だった身体の状態を理解することに関しては大体終わった。
自分の判断にズレを感じていたボールの捕球については、度重なる壁当てで跳ね返ったゴロのボールを処理することで、違和感は少なくなってきた。
守備範囲ギリギリの打球やイレギュラーした打球などの咄嗟の判断についてはどうなるかわからないが、これはもうなるようにしかならないだろう
となると、最後に残されたのは……。
やっぱりバッティングも見とかないとまずいなぁ。
自分で練習メニューを組み立てれられるのは、後2日しかない。
さすがに一度もバットを振ることなく野球部に入るのもやばいか。
よし。そうと決まればバッティングセンターに行くか。
母さんの野球道具セットにバッティング用の革の手袋もあったし、それも持ってかないと。
伊織は自転車でバッティングセンターに向かう。
自転車で20分ほどのところにある駿河バッティングセンターは、140キロの準硬式のピッチングマシンもありそれなりの練習にはなる。
今ではもっと速い球を投げるピッチングマシンはいくらでもあるが、準硬式の球が置いてあるバッティングセンターは貴重だ。
基本的に平日はあまり人がいないので、この時間なら貸し切り状態なのもポイントが高い。
子どもの頃から通っていた勝手知ったるところなので、中に入ると早速受付前の自動販売機でバッティングセンターのメダルを購入する。
ここのバッティングセンターは1セット25球が200円。
しかし事前に1000円分のメダルを購入すると6回分のメダルをもらえてお得なのだ。
これは「前の世界」と変わってないか。
バットはどうするかな。
ここのバッティングセンターは準硬式のゲージもあるから、硬式用のバットもあるんだよね。
一応軽いバットからスイングしておこうかな。
それとも硬式用の思いバットにするか。
うーん!迷う!
よし、どちらにしても硬式をプレーすることになるし硬式用のバットにしよう。
やばい。テンション上がってきた!
まずは肩慣らし程度に120キロのケージに入ってメダルを投入する。
メダルを投入すると機械音が聞こえてくる。
そしてピッチングマシンから投げられてきたボールを伊織は見逃す。
もちろんボールは120キロのストレートだ。
なるほど。
ボールの見え方に関しては全く変わらないか。
タイミングだけとって2球目も見逃すか。
……。
よし大丈夫だな。
なら3球目からはバントだ。
ちなみにバントというのは奥が深い。
高校野球やプロ野球でも簡単に行われているように見えるが、実はなかなか難しいのだ。
一つコツを教えるなら、バントは膝(ひざ)だ。
高めに構えて、膝(ひざ)を曲げることで上下を調節するとうまくいく。
手を動かしてボールを追いかけるようにバントをすると、ヘッドが下がってポップフライになりやすいから注意だ。
よしよし。
1セット全部使っちゃたけど、バントに関しては全く「前の世界」と変わらないな。
これなら全く問題ない。
次のセットは振るぞ!
あーたまらない!
と、その前に素振りしとこう。
伊織は一度バットを構えてスイングをする。
ひゅっという風切り音が聞こえる。
ああ、やっぱりバットが重いな。
振った時に体が流れるし。
少し短く持って対応しよう。
伊織はメダルを投入すると、バットを少し短く持って打席に立つ。
初球のボールは振り遅れて空振り。
2球目振り遅れ気味のファール。
3球目芯で捉えてライナー性の当たりがセンター方向に。
そこから先は殆どの球を芯で捉えて、レフト方向、ライト方向に打ち分けた。
最後の球をフルスイングしてセンター方向に弾き返すと伊織は一息ついた。
んー、やっぱりスイングスピードが物足りないか。
「前の世界」と同じタイミングで振ろうとすると振り遅れてしまう。
ミートするのは問題ないけど、動き出しがどうしても早くなる……。
全国クラスの投手が相手だとちょっときついかもしれない。
これは今後の課題だな。
次は140キロのケージで試そう。
伊織はメダルを投入すると先ほどと同じように初球は見送る。
そしてその後は10球目までバントをして問題ないことを確認する。
サード前。
ファースト前。
プッシュでセカンド前。
しっかり落とす場所のイメージをしてバントをする。
バントを終えた伊織は1球目を振り遅れてファールをした後は、次の球からあっさりアジャストして芯で捉えた。
センター方向に鋭い打球が弾き返される。
もちろん球種がわかっているのだから、タイミングを合わせて芯で捉えるなら問題はない。
1セットが終わると、後ろで待っている人がいないことを確認して再度メダルを投入する。
ピッチングマシンではそこまでボールにばらつきが出ないため、アウトコースとインコースを打ち分けるため打席の位置を調整する。
先程までは真ん中のボールを打ち分けていたが、今回はコースに合わせてレフト前、センター前、ライト前にキレイに打ち分けていく。
うん。
多少球速が上がっても問題ないか。
右打席の確認はこれで終わろう。
後は左も同じように確認したら今日は終わりにしよう。
スイッチヒッターの伊織は先程と同じ流れをするために、再度120キロのケージに向かっていった。
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