旦那様はヘタレてる

結婚して1ヶ月がたった。

にも関わらず、家に帰ったのは1度だけ。その1度でさえも、彼女から逃げた。私はなんて最低な男なんだ…。

 

もうシェリーに嫌われたかもしれない…。

ああ、シェリー!会いたいけど会えない!

面と向かって嫌いとか言われたら、生きていけない!!


「おい!そろそろ家に帰れ!ずっと職場で寝泊まりしてるだろ!嫁さんはどうしたんだよ!」


 同僚のリュークが痛いところをぶち抜いてきた。


「だって…。ここまで長い間ほったらかして、いったいどの面下げて会えばいいんだよ…そもそも結婚当日に仕事で〜とか言った私の事なんて、きっともうう…。」

 

あ、話していたら、目から汗が。


「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙うっとおしい!逃げるんだったら、なんで結婚したんだよ!?つーか、毎日お前の頭の中のシェリーさんを聞かせられる俺達の身にもなれ!帰らないんだったら、俺が変わりにお前ん家に行く!そして、お前の変わりにシェリーさんとイチャイチャする!」


「嫌だ!誰がさせるか、バカ!」


「なら帰れ!さっさと帰れ!今すぐ帰れ!」


 そして、職場を追い出された…。


 私の名前は、グレイ・フラント。

南の公爵家だ。田畑と山川に囲まれた豊かな田舎。平和で大きな事件もない。最近あった事件は、


「猪に畑を荒らされるので、何とかして欲しいです。あと、かぼちゃが豊作なので、送ります。」

 

 というものだった。一応、隣国に接しているので、騎士団が置かれているのだが、人に剣を振るう時はきっと来ないだろう。

(かぼちゃは台所のおっちゃんが美味しく頂いたらしい。)


 現実逃避はやめよう。今は奥さんの事だ。

 シェリー。北の公爵家の令嬢。私の小さく愛らしいお嫁さん。結婚式の日、私はうきうきしていた。あの日から1年。やっと!

 と、思っていたのだが。いざ目の前にし、固まってしまった。石像でのようだった。

私は緊張すると、ものすごく不機嫌そうな顔になる。これが原因で、女の人に遠巻きにされていた。仮にも公爵家なのに。シェリーにはきっと、怖がられているだろう。そう思ったらいてもたってもいられず、逃げ出してしまった。帰ってきて、頭を抱えた。私はなんて事を!朝が早いなんて大嘘をつき、苦手なのに早起きして、仕事へと向かったのだ。

 

そして、今に至る。今更どんな顔して会ったらいいのか、誰か教えてくれ。

ああ、会って離婚とか言われたら泣く…。

と、ごちゃごちゃ考えていたら、屋敷についてしまった。

 

執事のリッテが驚いた顔で迎えた。

そして、もう一人。


「お帰りなさいませ、旦那様。」

 

シェリーその人が、立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る