旦那様はやっぱりヘタレてる

シェリー!?え、ここ僕の妄想の世界?

だって、玄関を開けたら、


「おかえりなさい、旦那様!ご飯にします?お風呂にします?それとも…」


なんて、僕の妄想通りに言われるなんて!

(*そこまで言ってない)


本物のシェリーだ!小さい!可愛い!!

僕の嫁可愛いよ!!


まって、おかえりなさいって言ったよね!?

なんて言おう!?やっぱりここは、


「ただいまマイハニー!君は天使のように可愛いね!」


と言うべきか!?いや、気持ち悪いか!?

えーと、えーと!!!

迷った挙句、僕は一番最悪な答えを口に出した。


「ああ。」


オーマイガーーー!!なぜだ僕!?

なぜもっと、かっこよく返せないんだ!


リッテが何か言っているが、ショックで音が右から左へ抜けていく。


こんな無愛想で、そっけない返事…

いかん!これでは本当に嫌われてしまう!


焦る僕に、天使の声が聞こえた。



「ちょうど今、夕食を食べようとしていたところです。良ければ、一緒に食べませんか?」



へ?食事?シェリーと!?

この後は、溜まった公爵としての仕事を片付けようかと…


「そうか。なら、一緒に食べよう。」


即決した。

天使の前では紙屑と化すのだ。


唖然とする二人に気付かずに、軽い足取りで僕は着替えに向かった。




「ポトフは私が作りましたので、お口に合うか…」


カトラリーを落としそうになった。

手作り…だと!?


まて、ここは本当に現実なのか?

本当に僕の妄想の世界なのでは!?


夢にまで見た、愛する妻の手料理が…現実に…!?


ゆっくりと、口にスプーンを運ぶ。

そしてまた、私の時は止まった。


美味い!!シェリー、料理凄く上手じゃないか!!惚れ直したぞ!僕の嫁世界一!!


とか何とか頭の中で叫んでいたら、

食事が終わっていた。


「美味かった…」


しまっ…!もっと何か言わなくては…

そんな考えは、シェリーの表情ですぐに消えた。


嬉しそうか、照れたような、柔らかで暖かい笑みを浮かべるシェリー。


ゆっくりと自分の顔が上気するのがわかる。


「ありがとうございます…お粗末さまでした…」


その声を聞き、むず痒い、でも決して不快じゃない気持ちになり、逃げるように僕は食堂を後にした。


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